あの日、北京の街角で4 大連デイズ

ゆまは なお

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「でも駐在員が見てもそんなに興味ないかな。そもそも大連って地名聞いて、分かる人多くないよね」
「上海や広州ほどメジャーじゃないからな。国内ではそれなりに有名だけど」

「名物料理とかあったっけ?」
「大連名物? 海鮮だろうけど…、あんま思いつかない」

 国内向けなら海鮮料理がお勧めできるが、日本人向けにはどんな内容が適当なんだろう? まあ実際に旅行に来るわけじゃないから観光案内的情報は求めてないだろう。

「あえて言うなら、犬鍋とか?」
「うーん……。載せづらいな…」

「その社内報にはどんな記事が載ってんの?」
「名物料理とか有名観光地とか驚いた習慣とかかな。売上とか仕事の話はほとんどなくて、住んでる街を紹介する軽い読み物って感じ」

「ふーん。中秋節前とか春節前だったら、飾りつけとか撮れたのにな」
「そうだね。今ってそういうイベントない時期だよね」

 どうせなら春節とかイベント前に依頼してくれればよかったのにと思うが、広報には広報の都合があるのか。

 それとも先月はヨーロッパだったから次はアジアいっとく?的な適当な選択なのか。本社の広報スタッフが中国のカレンダーなんて見るわけないだろうし。

 ざっと写真を撮って回った後、中山路を通って新しくできたばかりの勝利広場というショッピングセンター方面へ向かった。

 地下3階まである巨大なショッピングセンターで、中国系はもちろん外資系ファーストフードも入っていて今、大連っ子にもっとも人気のあるスポットだ。

 その向こうには、旧日本人街の連鎖街があるからついでに足を延ばすことにした。大連駅前に戻ることになるが、散歩がてら見て回るのにちょうどいい距離だった。

「でも社内報とかちゃんと読んでるんだ」
「そこまできちんと見てないけど、人事異動とか売上一覧も載ってるから一応チェックする」

「ああ、同期がどこにいるかとか?」
「うん。あと、書いた記事がメールマガジンで配信されるみたい」

「メルマガ? 一般向け?」
「そう。これも本社の広報が出してるみたいけど、そっちは読んだことないな」

 インターネットの普及に従ってメールマガジンの数はうなぎのぼりに増えている。各企業も広報の一環として発行するのが流行らしい。

「そういや、櫻花公司のメルマガも出すとかなんとか言ってたな。あれ、もう出してるんだっけ?」

 夏の終わりごろ、ぞぞむからそういう話を聞いた気がする。でもこちらに赴任して忙しくしているうちにすっかり忘れていた。

「孝弘たちが何か書くの?」

「いや、書いてない。ネット関係はぞぞむの弟の将太が日本で全部引き受けてくれてて。翔太が日本の客向けに中国の小ネタを書くとか聞いたな。まあ、ネタ元はぞぞむや俺の中国びっくり話だろうけど」

「ぞぞむに弟がいるんだ」
「ああ。高校中退して引きこもりの弟だって。俺もまだ会ったことないけど」

「ふうん。引きこもりなの? なんか意外」
 あのバイタリティあふれるぞぞむを見ていると、そう思うのも無理はない。

「だよな。全然似てないんだって。でも電話でしゃべる限りはふつーの男の子。っつっても、もう……22歳かな」

「22歳ね。今も引きこもりなの?」
「よく知らない。でもうちのHP全部作って、商品写真撮って説明付けて、発送から在庫管理から全部やってくれてるから、もう普通に社会人みたいなもんだろ。ちゃんと会社から給料も出してるし」

 今のところ、ネットでの売り上げはそんな大きな金額ではない。だがぞぞむは今後は個人のネット購入が増えると断言していて、孝弘もそうなっていくと思っている。

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