あの日、北京の街角で4 大連デイズ

ゆまは なお

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 レストランはきれいなビルの中の店で、おそらく駐在員である祐樹に気を使ってくれたんだろう。注文は松本に任せた。松本は苦手な食材や味付けを確認して手早くオーダーする。

「大理は生活しやすいですか?」

「悪くないですね。治安いいし物価安いし、北京ほど寒くないし、断水も停電も意外と少ないし、温水シャワーも大体出ますよ」

 その程度でいいならたいていの地域で生活できるな、と祐樹は松本のたくましさを好ましく思う。確かにこういう人材でないと田舎の勤務は難しいだろう。

「松本も留学生寮で不便な生活に慣れてるから、どこでも平気だろ」
「まあね。でもホント生活はそんなに不便じゃないし、大理の人たち優しいよ」

「だけど昆明じゃなくて、大理に支部を置くのはめずらしいんじゃないですか?」
 日本企業の支社ならまず昆明だ。

「そうですね。最初、ぞぞむも昆明に支部を置くか大理にするか迷ったんですよ。で、上野《シャンイエ》と3人で工房回って話し合って、やっぱり昆明じゃなくて大理にしようってなったんだよね」

「それはどうして?」
「大理を起点にしたほうが工房が回りやすかったのと、大理で店を開かないかって声が掛かったんだよな」


「ん? 店もあるんだ? 櫻花珈琲?」
「いや、カフェじゃなくてみやげ物屋。うちの職人が作った商品を置いてる。今、松本が着てるワンピもそうだけど。アンテナショップって言えば聞こえがいい?」

「そんなかっこいい店じゃないけどねー。普通のみやげ物屋だけど、うちのオリジナルを多く置いてます」
 松本が明るく笑い飛ばす。

「大理はバックパッカーとか長期滞在の外国人がたくさん来るんです。それで洋食レストランやカフェなんかもそこそこあるから、普通にコーヒーやカフェオレが飲めるの。だからうちがわざわざカフェを出す必要はないだろってぞぞむが言って」

「で、みやげ物だけに絞ったんだ。飲食店だとどうしても厨房とかスタッフや仕入れが必要になるし、松本だけでは無理だろうって」

 注文した料理が届き、三人でビールで乾杯した。昼から飲むビールは最高だ。雲南料理と言っても見た目には炒めものが多い中華料理だったが味つけは東北とは違っていた。確かに辛い。というか、ビールがすすむな。

「だけど店をしながら工房も回るの大変でしょう」

「工房に回収に行くのは月に1回って決めてるから、そんなに大変じゃないですよ。契約してるとこが今8カ所くらいあるんですけど、近いとこは一緒に回るから、月に4日くらい工房に行く日で、あとは店にいますね。売れ行きよくて商品が足りない時はもう一度取りに行くときもありますけど」

「正直どうよ? 店は大変?」

 孝弘が松本のグラスにビールを注ぎ足して、ビールの追加を頼んだ。松本はけっこう飲めるようだ。旺盛な食欲で食べながらの会話が続く。

「それが意外と順調。もっと安い店もあるし少数民族の定期市もあるし、そもそもみやげ物屋が多いからそんなに売れないだろうなって思ってたけど、バックパッカーの口コミが大きいの。日本人経営で安心できる店ってイメージがついたらしくて」

 ちょうど日本が夏休みにあたる7月にオープンしたのがよかったのだと言う。最初の客だった女性の日本人バックパッカーがいい評判を広めてくれたらしい。

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