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しおりを挟む祐樹が驚いた顔をして、それからにっこりする。年明けに大連に来ると話していたのを思い出したようだ。
「おせーよ」
孝弘が文句を言うと、レオンは手で拝んだ。
「ごめん、タクシーが遠回りしたっぽいんだよね」
「ちゃんと道見てなかったんだろ」
「大連はまだ二回目だってば、指示出せるほど覚えてないよ」
レオンに会うのは十月の北京で会って以来、三ヶ月ぶりだ。
「久しぶり、祐樹さん」
「うん、久しぶり。大連寒いでしょう、大丈夫?」
1月半ばの今ごろから2月が一番寒い時期だ。
「ダウン着て来た。でも北京よりちょっと寒いくらいかな」
北京にも寄ってから来たので、ちょっとなじんだと言う。
「ここ見ていく?」
「大丈夫。今朝、もう色々見せてもらって書類も確認したよ」
「問題なさそう?」
「うん。あと二日で閉店するから、そしたら次の日から改装に入るよ。工事業者との打合わせも昼間にしたし」
「そんなにかからないだろ?」
「もともと飲食店だからね、五日くらいかな。食事しながら話そうよ」
そう言って、すぐ近くのビルのレストランに移動した。
わざわざ大連駅前の個室タイプのレストランに来たのは、レオンと打合せする姿を見られたくなかったからだ。開発区内の店ではあちこちで知人に会う。
食事しているのを見られてもレオンは留学時代からの友人だから問題ないが、仕事の話をしているのを聞かれるのは孝弘の立場上よろしくない。
海鮮鍋を頼んで、三人で大雪ビールで乾杯した。。
「冬はやっぱり鍋だよねー」
「大連は海鮮多くていいよな」
孝弘が追加オーダーをする間にレオンと祐樹は和やかに話をしている。
「レオンは北京から来たの?」
「その前に上海寄って、二店舗新しくできたから5日くらい様子見て、一昨日、北京入りして、きょう大連に着いたとこ」
「忙しいんだね。レオンも仕事増えたんじゃない?」
「まあね、向こう1年はこんな感じであちこち飛び回るだろうなー」
「上海店が順調なんだって?」
「うん、有難いことにね。おしゃれな店にしたのがよかったんだと思う」
「そっか。ぞぞむはどこにいるの?」
「今週は蘇州《スージョウ》に行ってる。両面刺繍の職人を増やすからその準備で」
「へえ、そっちも順調なんだね」
「かなりね。でもそうなるのは予想してたし、仕事が増えてくの楽しいよ。ぞぞむは忙しいのが嬉しい男だから全然平気だし」
「どうせ大連は寒いから行かないって言ったんだろ」
オーダーを終えた孝弘が菜単(メニュー)を閉じる。レオンがにやっと笑って頷いた。ぞぞむは寒がりなのだ。
「うん、でも蘇州だってけっこう寒いよね」
「耐えられる寒さのほうが暖気《ヌワンチィ》(暖房)ないからなー」
暖房なしでは過ごせない大連では全館暖房で建物内部はどこも暖かい。外に出る時の防寒さえしっかりすればいい。
「ところで、成都の話はどうなったって?」
「ああそれ。流通の都合上、内陸部はやっぱ難しい。採算取れないからやめるって」
「そうか。まあ無理しなくても時期を見て、また次のチャンスでも」
「ぞぞむもそう言ってた。まずは利益出さないとって」
「おおすげえ。ぞぞむがそんな現実的な発言するなんて」
孝弘が笑い出し、レオンもうんうんとうなずく。
「さすがに最近、色々考えてるみたいだよ。ある程度、民芸品熱が落ち着いたのかも」
「ああ。あれだけ工場作って、ちょっとは満足したんじゃね?」
ぞぞむが手がけて作った櫻花公司の直営工場は、規模は小さいながらも雲南省や新彊などを含めて七カ所になる。そのほかにも提携工場があるし個人契約している職人もいる。
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