あの日、北京の街角で4 大連デイズ

ゆまは なお

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「うん。この前、兄からメールが来てたんだ」
「え、実家で何かあった?」

「ううん何も。実家が古くて全面リフォームするから部屋にあるもん、どうする?って感じのメールだった」

 適当に箱に詰めて置いておくが、近々帰国予定があるなら知らせろと達樹が連絡して来たのだ。祐樹の中国赴任が長いから新年の元旦が正月ではないことくらいは覚えていて、春節に帰国するのかを訊ねる内容だった。


「へえ、建替えってこと? いつ頃?」
「仮住まい予定の物件が三月に空くから引越しして、それからだって」

 ここしばらくその図面を引くのにああだこうだと両親と長男夫婦は大変だったらしい。転倒するような家具を置かないように棚や収納やパントリーは全部作りつけにして、各部屋のクローゼットの配置などで相当頭を悩ませたと聞いた。

 そしてキッチンや風呂の設備や洗面台等がどうにか決まったと思ったら、一緒に住まない達樹にまで、この壁紙はどう、この照明はどう思う?と問い合わせが次々来るとぼやいていた。

「じゃあ、春節は片づけに帰るんだ」
「うん。最後に実家見とくのも悪くないかなと思って。次の家にはおれの部屋なんてないだろうし」

 近くに住んでいる長男夫婦と完全分離型の二世帯住宅での同居になるというから、祐樹の部屋はなくなるだろう。未婚とは言えもう成人した子供の部屋など用意するわけはない。

「そっか。生まれた時から住んでたんだよな?」

「そう。もともと祖父が建てた家だから古い木造家屋で。地震が来たら絶対潰れるって建替えする気になったみたい」

「その方がいいよな、千葉もいつ大きな地震が来るかわかんないし」
「うん。だから最後におれが育った家、見に来る?」

「え? なになに、これ実家にご招待? 泊めてくれんの?」
 ここまで祐樹の帰省の話だと思って聞いていた孝弘は、驚いて目を丸くした。

「うん。ただ引越し前でゴタゴタしてて、落ち着かないかもしれないけど」
「いや、全然いいけど。マジでいいの、俺が行っても?」

「うん。というか、実はメールくれた兄が会いたがってて」
「会いたい? 俺に?」

「うん」
「え。お兄さん、俺のこと、知ってんの?」


「その兄だけね。おれに恋人がいて、一緒に大連に赴任してることは知ってる」
「へぇ、そうだったんだ」

 孝弘に家族の話はけっこうしているが、すでにカミングアウトしていることは初めて話した。

「おれから話したと言うよりも、達樹が気づいたっていうか。バレたって言うか」
「どういうこと?」

「こっちに赴任する前に、香港行ったでしょ。それ誰と行って来たんだって問いつめられて」

 祐樹らしくない土産をたくさん持って実家を訪れた祐樹に、達樹はずばりと言い当てたのだ。香港、恋人と行ってきたんだろ、と。

 恋人に会わせろと迫る兄に、祐樹がもう中国に赴任して日本にいないと言ったらどういうことだと問いつめられて、その場の流れで孝弘との出会いからの経緯を全部話す羽目になった。

 その時のことをざっくりと説明したら、孝弘は楽しげな顔でふんふんとうなずきながら聞いていた。

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