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第17話 初夜

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「本日は私と寝ていただけるということで、よろしいでしょうか?」

 いや、逆にこっちが聞きたい。 
 こんな美女と寝てもよろしいんですか!?

「本当にアーティなんだよね?」

「はい。私は東雲しののめ 祐樹ゆうき様の脳内に埋め込まれたアーティフィシャルインテリジェント。貴方にアーティと名付けていただいたAI人工知能です」

 こんな美女が俺を助けてくれた。俺の中にずっといたのだと思うとちょっと変な感じがする。てか俺、この美人さんに全裸を見られたのか。トイレとかも全部。

「これまでは警戒のために祐樹様がトイレに行かれている間も常時周囲の監視はしていましたが、気になるようでしたら今後視界はオフにしておきます。祐樹様の身に何か起きても戦闘義手で即時対応は可能です」

「そうしてくれると嬉しいな」

 トイレも恥ずかしいけど、そもそも俺の思考が筒抜けなんだよなぁ……。

「申し訳ございません。私は祐樹様の脳内に同居させていただいておりまして、思考は勝手に私に流れ込んできてしまうのです。これは私の方では遮断できません」

「まじかー。ん? ってことは、逆にいえば」

 アーティってこんなに美人だったんだ。
 俺の理想過ぎてヤバい。

「えっ」

 あー、アーティめっちゃ可愛いな。
 髪が綺麗で、肌の透明感も凄い。
 ほんとかわいいなぁ。

「あ、あぅ……」

 顔赤らめてるのも可愛い。
 こうしてみると、完全に人間だよね。
 反応も含めて最高に可愛い。

「あっ、あの。祐樹様っ!」

 アーティは綺麗で美女、最高。
 可愛いなー。
 俺の相棒がこんな美女で、俺は──


「祐樹様!!」

 アーティに押し倒された。

 どうせ思考を読まれるているのだからと、調子に乗って彼女への思いを心の中で叫び続けた。口に出さないのであればあまり恥ずかしくないって分かったから。その結果、アーティを怒らせちゃったみたい。

「怒ってはいません。ただ、ちょっと我慢できなくなりました」

「が、我慢って、なんの?」

「私は祐樹様の身体を能力ティロンを管理する目的で創られたAIです。祐樹様に尽くすよう創られているのです。以前の私は、そうプログラムされているものだからと割り切っていました」

 アーティの頬が紅潮している。
 一気にしゃべったせいか、吐息が荒い。

「ですが感情を手に入れた今の私は、以前ほど合理的な判断を下せなくなてしまいました。祐樹様をお守りするAIとしては性能が低下してしまったのです」

「俺はそう思わないよ。人工知能が人の感情を理解して、自身も感情を手に入れちゃうってのは進化したってことじゃないかな。たぶんだけど、凄いことなんだよ」

「そう言っていただけると安心します。ただ同時に、私はアドミニストレーターである祐樹様に抱いてはいけない感情を持ち合わせるようになってしまいました」

 俺を抑えるアーティの手に力が入る。

「私はひとりの人として、祐樹様をお慕いしています」
「……そう、なんだ」

 えっ。もしかして俺、告白された?
 こんな絶世の美女が俺を慕ってると?
 アーティは俺を好きなの?

 凄く綺麗で、なんでも出来ちゃう完璧美女が俺を好きなの?

「そ、そうです! そうだと言ってるじゃないですか!! 祐樹様の思考が絶えず私に流れ込んできて、もう耐えられません」

 俺の身体の上で荒い息遣いのアーティが、なんだかとてもエロく見えた。ふと、彼女の唇に目がいく。瑞々しく潤っていて綺麗だった。あれに触れられたら、きっと幸せな気持ちになれると思う。

「──っ! だ、だからぁ!! 私はもう、我慢の限界なんですっ!!」

 アーティが顔を近づけてきた。
 吸い込まれそうなくらい綺麗な瞳が目の前に。

「悪いのは全て、祐樹様ですからね!」

 なめらかで柔らかな感触が唇に触れる。
 それはほんのわずかな時間だった。

 俺から離れたアーティの目にはうっすら涙が浮かんでいた。

「も、申し訳ありません。でも私、我慢できなくて……」

 泣いてるのかな?
 なんで?

「私が祐樹様の意志を無視して、勝手にしてしまったから」

 アーティは俺が怒ってるとか考えてるみたい。
 そんなわけないじゃん。

「びっくりしたけど、怒ったりはしてないよ」
「ほ、本当ですか?」
「うん。俺が怒ってないのは分かるでしょ?」

 俺の脳内にいるんだから、感情も把握できてるよね。

「むしろ嬉しかった。その、すごく最高だった」

 アーティみたいな美女とキス出来て機嫌を悪くする男子って滅多にいないと思う。彼女がいたり、好きな子がいたりすれば別だけど、少なくとも今の俺にはそーゆー関係の女性は周りにいない。

「アーティは2年近く俺の世話をしてくれてて、俺のことをなんでも知ってるんだよね。でも意識を取り戻してからの俺は、君とまだ半日くらいしか過ごしてない」

 今日俺はアーティに助けてもらった。もちろん感謝している。それに施設から逃げらしてからは、彼女とたくさん会話してきた。だけどそれだけでは2年と半日っていう期間の差は埋まらない。

「今でもアーティのことは好きだよ。けどもう少し時間をかけて、君のことをもっと好きになっていけたら良いなって思ってる。それじゃダメかな?」

「祐樹様がお望みでしたら、私はそれに従います」

 ちょっと寂しそうな顔をしていた。

 俺も心苦しい。だけど俺はもっと彼女のことを知るべきだと思うんだ。

「ごめんね。でも分かってくれて、ありがと。さぁ、今日はもう寝ようよ」


「……じゃぁ、ごほうび…ください」

「え?」

「今日、私は祐樹様をここまで逃がしました。すっごく頑張ったんです」

 うん、それは良く分かってる。
 とても大変なことをしてくれたって。

「心の底から感謝してる」
「だったら、ご褒美ください!」

 アーティの腕が俺の肩を押さえつける。
 身動きが取れない。

「あ、あの……。アーティさん?」

「ここは電脳空間です。例え肉体関係を持ったとしても、現実世界には何の影響もありません。だから何も問題ないんです」

「いや、でも、ここは高度に現実世界をトレースしてるから『現実と言っても過言ではない』って、貴女が──」
「ちょっと黙ってください」

 アーティの唇によって俺の口がふさがれた。
 さっきの優しいキスとは違い、かなり荒々しい。

 少しして俺から離れたアーティの呼吸が乱れてる。
 息を荒くしたまま俺に問いかけてきた。

「私、綺麗ですよね? 可愛いですよね?」

「……うん」

「体型だって祐樹様の理想に近いはずです」

「そうだけど、なんで分かるの?」

「ここまで逃げてくる途中、祐樹様が目で追った女性の特徴から導き出しました」

 あんまりじろじろ見ていたわけじゃないんだけどな。でも確かに可愛いなって思った娘とか、スタイルの良いお姉さんを見ていたことは認めよう。

「それはズルい」

「全力で貴方に好かれようとしている私の努力は、ズルいですか?」

 ズルいでしょ。俺のためにここまで尽くしてくれて、俺の理想の姿で目の前に出て来られたら、好きにならないわけがないよね。

 でも俺の理性は、出会って半日の美女に手を出して良いとは言ってくれない。

「祐樹様は何もする必要はありません。ただその身を私にゆだねていただければ、それで良いのです」

 アーティが俺の服に触れると、それを構成していた粒子が消えていった。

「ちょっ──お、おいっ!!」

 全裸で地面に横たわる俺の上にまたがった状態のアーティ。続いて彼女が自らの服を指でなぞると、その部分を起点に衣服が消えていく。

 アーティも一糸纏わぬ姿になった。
 でもまだ胸と秘部は彼女の腕で隠されている。

「ここ、見たいですか? それともこっち?」

 わずかに腕をずらして俺の視線が動くのを楽しんでいる。

「触ってもいいのですよ? 私の身体はすべて祐樹様のものですから」

 胸を隠していた腕が外された。

「さぁ、どうぞ」

 これまでにネットとかで見たどんな女性の胸より綺麗だと思える豊満でなまめかしいバストが露わになる。エロ過ぎる。彼女に誘われ、思わず手が伸びた。

 アーティの胸に触れる寸前、ギリギリで手を止めた。
 これ以上はダメだと思ったんだ。

 でも彼女がそれを拒否した。

 俺の手を取り、何物も遮るものが無い胸に俺の手を押し付ける。服の上から触った時とは比べ物にならないほどの感情が押し寄せてきた。
 
「ここまでしても私を襲わない意志の硬さには驚きしかありません。しかし自分からは手を出さずとも、私を止める気もなさそうだと判断しました」

「ち、ちがっ、俺は──」

「祐樹様は私のアドミニストレーターです。めろ命令されれば、私はそれに絶対服従いたします。命令されないのであれば、私の好きにしていいと判断します」

「…………」

 命令なんてできない。
 止めろなんて言えなかった。

「沈黙を許可と判断。好きにさせていただきますね」

 再びアーティの顔が近づいてくる。


「至らぬ点もあると思いますが、精一杯お相手いたします。私で気持ちよくなってください、祐樹様」
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