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エピローグ ※セシリア視点
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甘ったるい空気がこそばゆかった。
「ちゅっ」と音がした。
頭にキスを落とされたのだとわかって、セシリアはますます赤面して固まった。
「セシリア」
耳に流し込むように囁かれた。
その声の破壊力にセシリアは思わず息を呑んだ。
心臓が爆発しそうだった。
腕から抜け出そうと思った矢先だった。
「みぃーちゃった、みぃーちゃった♪」
快活な高音が二人の空気に割って入った。
部屋の入り口から、ヴァイオレットが顔を出した。
愉しげに目を細めながら、彼女は上品に指先だけで口を覆った。
「ジュリ~、母さん婚前交渉は許しませんよ~」
にやにやと笑うヴァイオレットに、ジュリアスが、面倒くさそうに眉をひそめた。
「はいはい。わかりましたよ、母上」
妙に強調して言った「母上」にセシリアは首を傾げた。
「あの、どういうことですか?母上って」
ジュリアスとヴァイオレットが、同時に顔を見合わせた。
「私とマティアス様ね。婚約が正式に決まったのよ」
彼女の答えにセシリアの思考が停止した。
「……え?………旦那様と…ヴィオお嬢様が…ですか?」
「そうよ。今日正式に決まったの。だから私、これからこの屋敷に住むことになったわ」
ヴァイオレットは、両手でVサインをした。
「嬉しいでしょ?私があなたのお義母さまよ」
セシリアの顔が、みるみる青くなった。
「あ…あの…じゃあ、坊っちゃんは…?」
ヴァイオレットは不思議そうな顔をした。
「坊っちゃん?ジュリは関係ないわよ?」
「え…」
「まさか、ジュリが婚約すると思ってたの?やっだー」
ヴァイオレットがジュリアスの腕を殴り、彼は痛そうに顔を歪めた。
セシリアは、言葉を失った。
扉を叩いて、泣いて、「婚約しないでください」と懇願して——
そして、キ、キ、キスまで——
「あ、ああああああ!!!」
セシリアが、両手を突っぱねてジュリアスの腕の中から逃れようと暴れた。
「いやぁあああああ」
それでもしっかりと抱きしめられたまま抜け出せなかった。
仕方がないので、セシリアは両手で顔を覆ってジュリアスの胸に顔をうずめた。
ヴァイオレットが、盛大に吹き出した。
「ぶっふー!あんたその顔、絶対シシーに見せるんじゃないわよ、引かれるわよ」
「うるせーよ」
セシリアの頭の上で二人は、やいやいと言い争っていた。
ジュリアスが喋る度に胸から振動が伝わってきて、セシリアは余計に照れてしまった。
恥ずかしくて、もう顔をあげられなかった。
「まぁ、結果としては良かったんじゃない?」
ヴァイオレットがセシリアの頭を撫でた。
ほんわりとしたのもつかの間、
「だって、坊っちゃんがいないと生きていけないんだものね~」
ぶすりと、今一番イジられたくないところを刺され、セシリアは思わず喉の奥で悲鳴を上げた。
「もっとずっと前に教えて欲しかった!」
喚くセシリアをヴァイオレットも、ジュリアスも、残念な目で見た。
「だって、お前、話なんて聞かないから」
「そうね、シシーは話なんて聞かないものね」
セシリアの悲痛な声は、その後もしばらく廊下に響いたのだった。
【おわり】
******************
最後まで読んでくださって、ありがとうございました!
仕事してなかったり、廊下でわちゃわちゃしてたり、突っ込みどころのある話でしたが、楽しんでいただけたでしょうか。
もし「いいな」と思っていただけたら、いいねを押してもらえると嬉しいです。
豆腐メンタルなので感想欄は閉じていますが、
いただいたいいねを励みに、これからも楽しく書いていきたいと思います。
「ちゅっ」と音がした。
頭にキスを落とされたのだとわかって、セシリアはますます赤面して固まった。
「セシリア」
耳に流し込むように囁かれた。
その声の破壊力にセシリアは思わず息を呑んだ。
心臓が爆発しそうだった。
腕から抜け出そうと思った矢先だった。
「みぃーちゃった、みぃーちゃった♪」
快活な高音が二人の空気に割って入った。
部屋の入り口から、ヴァイオレットが顔を出した。
愉しげに目を細めながら、彼女は上品に指先だけで口を覆った。
「ジュリ~、母さん婚前交渉は許しませんよ~」
にやにやと笑うヴァイオレットに、ジュリアスが、面倒くさそうに眉をひそめた。
「はいはい。わかりましたよ、母上」
妙に強調して言った「母上」にセシリアは首を傾げた。
「あの、どういうことですか?母上って」
ジュリアスとヴァイオレットが、同時に顔を見合わせた。
「私とマティアス様ね。婚約が正式に決まったのよ」
彼女の答えにセシリアの思考が停止した。
「……え?………旦那様と…ヴィオお嬢様が…ですか?」
「そうよ。今日正式に決まったの。だから私、これからこの屋敷に住むことになったわ」
ヴァイオレットは、両手でVサインをした。
「嬉しいでしょ?私があなたのお義母さまよ」
セシリアの顔が、みるみる青くなった。
「あ…あの…じゃあ、坊っちゃんは…?」
ヴァイオレットは不思議そうな顔をした。
「坊っちゃん?ジュリは関係ないわよ?」
「え…」
「まさか、ジュリが婚約すると思ってたの?やっだー」
ヴァイオレットがジュリアスの腕を殴り、彼は痛そうに顔を歪めた。
セシリアは、言葉を失った。
扉を叩いて、泣いて、「婚約しないでください」と懇願して——
そして、キ、キ、キスまで——
「あ、ああああああ!!!」
セシリアが、両手を突っぱねてジュリアスの腕の中から逃れようと暴れた。
「いやぁあああああ」
それでもしっかりと抱きしめられたまま抜け出せなかった。
仕方がないので、セシリアは両手で顔を覆ってジュリアスの胸に顔をうずめた。
ヴァイオレットが、盛大に吹き出した。
「ぶっふー!あんたその顔、絶対シシーに見せるんじゃないわよ、引かれるわよ」
「うるせーよ」
セシリアの頭の上で二人は、やいやいと言い争っていた。
ジュリアスが喋る度に胸から振動が伝わってきて、セシリアは余計に照れてしまった。
恥ずかしくて、もう顔をあげられなかった。
「まぁ、結果としては良かったんじゃない?」
ヴァイオレットがセシリアの頭を撫でた。
ほんわりとしたのもつかの間、
「だって、坊っちゃんがいないと生きていけないんだものね~」
ぶすりと、今一番イジられたくないところを刺され、セシリアは思わず喉の奥で悲鳴を上げた。
「もっとずっと前に教えて欲しかった!」
喚くセシリアをヴァイオレットも、ジュリアスも、残念な目で見た。
「だって、お前、話なんて聞かないから」
「そうね、シシーは話なんて聞かないものね」
セシリアの悲痛な声は、その後もしばらく廊下に響いたのだった。
【おわり】
******************
最後まで読んでくださって、ありがとうございました!
仕事してなかったり、廊下でわちゃわちゃしてたり、突っ込みどころのある話でしたが、楽しんでいただけたでしょうか。
もし「いいな」と思っていただけたら、いいねを押してもらえると嬉しいです。
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