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第9章 使、命
第331話 武運を
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「あれは、、雲梯か?」
時を同じくして、碧相陣営の櫓でも紫瑞、緋堯連合軍の陣営から、尋常でない速さでその大きな影が関塞に向かっていくのを確認して、至湧は声を上げだ。
「えらい速さだな!奴ら関塞を狙ってたのか!」
隣に立つ主君もそれを視認すると同時に、縁を掴む手に力を入れたのが分かった。
彼の頭の中には、その奴らの狙う関塞の最上部の櫓に詰めているであろう妹の顔が浮かんでいるのは、考えなくても分かった。
あれが届けば、彼女の居場所は途端に最前線となるどころか、激戦の場所となる。
「騎馬が雲梯を引いてますね。奴らあのまま関塞に突っ込んで雲梯を架けるつもりですね」
側に控えていた部下が、目を凝らして呟く。
「やはり、動いてきたか。」
読み通りではあった。午前の内に姫には伝令を使い、何かしら起こる可能性を示唆しておいた。彼女からも、十分気をつけると返答があったから、きっと備えてはいただろうが、これほど唐突な動きにどれだけ早く反応出来たであろうか。
「援軍を出したいところであるのだがなぁ」
苦しげに呟くのは主君である。
それに至湧も同意の意を示して唇を噛む。
実は少し前、碧相軍側でも事態が動いたのだ。
現れたのは、紫瑞軍が長い歴史を誇り、最強と謳われる戦車部隊である。
馬に台車を引かせて、その台車に兵が2人乗り、1人が防御と馬の操縦を担当し、もう1人が攻撃を担当する。
恐ろしく機動力があり、そして攻撃性も高い。
この地で刃を交えてすでに数日。今までその気配すらなかったために、その存在を忘れかけていたほどだったのだ。
ここに来てそれが、突如姿を現し、碧相軍に襲いかかってきたのだ。
紫瑞軍と長く海上戦を繰り広げてきた碧相軍であるが、今回は陸戦ということもあり、対策は講じてきた。
こちらも戦車部隊を準備してきたのだ。
しかし問題が一つあった。
碧相軍史上、実戦で戦車部隊を使うのが初めての機会だった。
歴史の長い紫瑞軍の戦車部隊相手に、その侵攻を食い止めるのに精一杯というところである。
なるほど、この戦車部隊と雲梯を使いたかったがために、董伯央はこの乾いた大地と関塞のある地を選び、土壌が乾くのを待った。
こちらの弱点をしっかり掴んでくる辺り本当に狡猾だ。
「とにかく我らは目の前の、戦車部隊を黙らせる事が先決だ。おそらく、うちが関塞の防衛に援軍を出せば、奴らの思う壺だ。とりあえず右翼には、湖紅軍との連結部分の死守だけは抜かるなと伝えろ」
「はっ!」
主君が的確な指示を飛ばしていくのを見ながら至湧はもう一度唇を噛んだ。
ここが両軍にとっても正念場である。
おそらくそれは、彼女も感じている事だ
姫さま、どうかご武運を。
時を同じくして、碧相陣営の櫓でも紫瑞、緋堯連合軍の陣営から、尋常でない速さでその大きな影が関塞に向かっていくのを確認して、至湧は声を上げだ。
「えらい速さだな!奴ら関塞を狙ってたのか!」
隣に立つ主君もそれを視認すると同時に、縁を掴む手に力を入れたのが分かった。
彼の頭の中には、その奴らの狙う関塞の最上部の櫓に詰めているであろう妹の顔が浮かんでいるのは、考えなくても分かった。
あれが届けば、彼女の居場所は途端に最前線となるどころか、激戦の場所となる。
「騎馬が雲梯を引いてますね。奴らあのまま関塞に突っ込んで雲梯を架けるつもりですね」
側に控えていた部下が、目を凝らして呟く。
「やはり、動いてきたか。」
読み通りではあった。午前の内に姫には伝令を使い、何かしら起こる可能性を示唆しておいた。彼女からも、十分気をつけると返答があったから、きっと備えてはいただろうが、これほど唐突な動きにどれだけ早く反応出来たであろうか。
「援軍を出したいところであるのだがなぁ」
苦しげに呟くのは主君である。
それに至湧も同意の意を示して唇を噛む。
実は少し前、碧相軍側でも事態が動いたのだ。
現れたのは、紫瑞軍が長い歴史を誇り、最強と謳われる戦車部隊である。
馬に台車を引かせて、その台車に兵が2人乗り、1人が防御と馬の操縦を担当し、もう1人が攻撃を担当する。
恐ろしく機動力があり、そして攻撃性も高い。
この地で刃を交えてすでに数日。今までその気配すらなかったために、その存在を忘れかけていたほどだったのだ。
ここに来てそれが、突如姿を現し、碧相軍に襲いかかってきたのだ。
紫瑞軍と長く海上戦を繰り広げてきた碧相軍であるが、今回は陸戦ということもあり、対策は講じてきた。
こちらも戦車部隊を準備してきたのだ。
しかし問題が一つあった。
碧相軍史上、実戦で戦車部隊を使うのが初めての機会だった。
歴史の長い紫瑞軍の戦車部隊相手に、その侵攻を食い止めるのに精一杯というところである。
なるほど、この戦車部隊と雲梯を使いたかったがために、董伯央はこの乾いた大地と関塞のある地を選び、土壌が乾くのを待った。
こちらの弱点をしっかり掴んでくる辺り本当に狡猾だ。
「とにかく我らは目の前の、戦車部隊を黙らせる事が先決だ。おそらく、うちが関塞の防衛に援軍を出せば、奴らの思う壺だ。とりあえず右翼には、湖紅軍との連結部分の死守だけは抜かるなと伝えろ」
「はっ!」
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ここが両軍にとっても正念場である。
おそらくそれは、彼女も感じている事だ
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