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第9章 使、命
第358話 2人の関係
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「ところで、華南は隆蒼とどうなったの?」
翌日になると、あちらに残してきた比較的軽度な傷病者の一部が、こちらに移送されてくることになった。
当然そこに隆蒼も含まれていて、それを聞いた翠玉が、興味深々な様子で華南を追求した。
そういえば、翠玉には洞の中別れる時に、隆蒼に口付けたのを見られていたことを華南は思い出す。
「そんな、お話しできるような話では、ないんです」
曖昧に笑って肩をすくめる。
「でも口付けしてたわよね。隆蒼とその事で話していないの?」
しかし翠玉は諦めてくれる様子はない。
まぁそうだろう。だって今の彼女は暇を持て余しているのだ。
その上。
「あっ、ちょっと待って、っ……うん、大丈夫」
突然胸元をさすって寝台の横に置かれた杯に手を伸ばして、水を飲む。
悪阻が始まったらしい。
どうやら馬車に少しだけ酔った事が引き金になったらしく、昨晩から急に始まった様だ。
経験者の華南にしてみれば、今までなかったことの方が不思議だが、きっと戦場に立って常に気を張りつめていたからではないだろうか。
だからこそ。
何かで気を紛らわせていないと、気分が悪いのばかりが気になってしまってしんどいのだろう。
「好きだと言われましたので……私もそれを受け入れました。」
どうせその内バレる事だ。素直に話してしまうことにした。
「えぇ! そうなの!? 本当に!?」
ピクンと肩を揺らした彼女は、驚いていたが、とても嬉しそうだ。
つられて笑って、寝台横の椅子に腰掛ける。
どうせ昼餉までにはまだ時間もある。
少し話し込んでも大丈夫だろう。
「洞で最後、別れる前にあの男ようやく好きって言ったんです」
「え、隆蒼今までずっと一緒にいて、一度も言わなかったの?」
意外そうに言われて苦笑する。
短期間一緒にいる彼女ですらわかるほど、隆蒼の気持ちはダダ漏れだった。
「一度もありません。多分断られたら側にいられないとでも思ってたんでしょうね。意気地が無いんです」
わざと辛辣な言葉で言う。
実際、彼の気持ちにはすぐ気づいていた。もう十年くらい前だ。
「まぁでも、きっと若い頃に気持ちを伝えられていたら、振ってましたね。彼全然好みじゃ無かったんで」
「そうなの?」
驚いたような翠玉に「実はそうなんです」と笑う。
「私の好みはどちらかというと、黙って俺についてこい! って感じのどちらかと言うと、強引なタイプですかねだったんです。尽くされるより、そういう人ばかり追いかけて尽くす事が好きだったので、まぁ捨てられる事も多々あって。その度に奴を呼び出して憂さ晴らしに飲み歩いてたり……まぁ奴にしてみれば残酷な女ですよね」
毎度、嫌そうな複雑そうな顔をしながらそれでも最後まで付き合ってくれる隆蒼を思い出す。
「確かに、それは、残酷ね」
翠玉は少し考えて、渋い顔をしている。
「当時の自分にもその自覚はあったんです。でもなぜか、彼とそういう関係になる気は起きなくて、それなのに彼が自分の側からいなくなるのは嫌だと、矛盾した気持ちがあったんですよね。今思い出しても、あれには説明が付かないんですけど……」
そう言って肩を竦める。
「いつか、彼が私に愛想を尽かしていなくなるのが落ちなんだろうなぁって思ってたんですけど、私が結婚しても、あいつは手近な所に来たんですよね。私の旦那の部下になってでもですよ。流石にあれには驚きましたし、馬鹿じゃないのかって罵りました。そこまで私に執着しなくてもって……でもあいつは自分の勝手だからって取り合わないんです」
翠玉は、呆れたような、複雑な笑みを浮かべて黙って聞いていた。
「結婚して軍を辞めたので、当然会う事もありませんでした。その内諦めて王都に帰るだろうと思っていたんですけど……結婚して3年目、丁度2度目の流産をして、その頃から夫とすれ違うようになったんです。外に女を作ったみたいなんです。まぁ妻が子どもを産めないのだから妾を考えてもおかしくないですよね。
何のために生きてるんだろうなぁって思いながら、妻として無理してニコニコしてて、ちょっとあの頃の私の精神状況はおかしかったんです。
そんな時、夫の用で彼の職場に行った時に、隆蒼に3年ぶりくらいに会ったんです。
久しぶりに会ったのに、あいつ私の顔を見てすぐに何があったんだ? 酷い顔してるぞ? って言ったんです。誰もその時の私を見てそんな事に気づいて言ってくれなかったんです」
「隆蒼だから分かったのね?」
翠玉の言葉に苦笑する。
「そうだと思います。本当にそれだけ、隆蒼に言われたのがきっかけだったんです。昔の私に戻りたいなぁって思ったんです。」
「それで離縁?」
「話は簡単でした。夫はもう私に飽きていたし、私ももう夫に尽くす気力もなかった。すぐに話は纏まりましたよ。軍を迷わず辞められるほど好きだったはずなのにあまりに呆気なくて驚きでした」
「元夫の邸を出て、さてどうしようかな~って思っていたら、目の前にあいつがいたんです。軍を辞めたからどこまでも付き合ってやるって! 本当に馬鹿な男ですよね。見返りもない女のためにそこまでするか? ってやっぱり罵ってました。それでも奴は「俺の勝手だって」呆れて物も言えなくて、とりあえず殿下に頼んで隆蒼だけでも禁軍で引き取れないかお願いするつもりで、王都に来たんです。それでこんな事に……」
「なるほど、丁度冬隼が私の護衛を探していたのね」
「私達にしてみればありがたい機会でした」
「最初、冬隼から隆蒼はずっと華南に報われない恋をしてるって聞いたけど……華南はいつから隆蒼の事好きだったの?」
「それが、未だにわからないんですよね、替えの利かない存在ではあったのは、昔からなんですけど……洞の中で、奴が死ぬかもしれないって思った時ですかね? 遺言みたいに好きだ、幸せにしてやりたかったって言われて、すごく腹が立ったんです。もっと早く言えよ! って……なんか待ってたみたいな事思ったんですよね。そんな事言うならちゃんと生き残って、私を幸せにしなさいよ! ってそれがあの口付けです」
「え……まさかあの緊迫した状況で?」
翠玉の言葉にうーんと、こめかみに指を当てて考える。
「人って窮地に陥ると、真意を悟るもんなんですかねぇ」
翌日になると、あちらに残してきた比較的軽度な傷病者の一部が、こちらに移送されてくることになった。
当然そこに隆蒼も含まれていて、それを聞いた翠玉が、興味深々な様子で華南を追求した。
そういえば、翠玉には洞の中別れる時に、隆蒼に口付けたのを見られていたことを華南は思い出す。
「そんな、お話しできるような話では、ないんです」
曖昧に笑って肩をすくめる。
「でも口付けしてたわよね。隆蒼とその事で話していないの?」
しかし翠玉は諦めてくれる様子はない。
まぁそうだろう。だって今の彼女は暇を持て余しているのだ。
その上。
「あっ、ちょっと待って、っ……うん、大丈夫」
突然胸元をさすって寝台の横に置かれた杯に手を伸ばして、水を飲む。
悪阻が始まったらしい。
どうやら馬車に少しだけ酔った事が引き金になったらしく、昨晩から急に始まった様だ。
経験者の華南にしてみれば、今までなかったことの方が不思議だが、きっと戦場に立って常に気を張りつめていたからではないだろうか。
だからこそ。
何かで気を紛らわせていないと、気分が悪いのばかりが気になってしまってしんどいのだろう。
「好きだと言われましたので……私もそれを受け入れました。」
どうせその内バレる事だ。素直に話してしまうことにした。
「えぇ! そうなの!? 本当に!?」
ピクンと肩を揺らした彼女は、驚いていたが、とても嬉しそうだ。
つられて笑って、寝台横の椅子に腰掛ける。
どうせ昼餉までにはまだ時間もある。
少し話し込んでも大丈夫だろう。
「洞で最後、別れる前にあの男ようやく好きって言ったんです」
「え、隆蒼今までずっと一緒にいて、一度も言わなかったの?」
意外そうに言われて苦笑する。
短期間一緒にいる彼女ですらわかるほど、隆蒼の気持ちはダダ漏れだった。
「一度もありません。多分断られたら側にいられないとでも思ってたんでしょうね。意気地が無いんです」
わざと辛辣な言葉で言う。
実際、彼の気持ちにはすぐ気づいていた。もう十年くらい前だ。
「まぁでも、きっと若い頃に気持ちを伝えられていたら、振ってましたね。彼全然好みじゃ無かったんで」
「そうなの?」
驚いたような翠玉に「実はそうなんです」と笑う。
「私の好みはどちらかというと、黙って俺についてこい! って感じのどちらかと言うと、強引なタイプですかねだったんです。尽くされるより、そういう人ばかり追いかけて尽くす事が好きだったので、まぁ捨てられる事も多々あって。その度に奴を呼び出して憂さ晴らしに飲み歩いてたり……まぁ奴にしてみれば残酷な女ですよね」
毎度、嫌そうな複雑そうな顔をしながらそれでも最後まで付き合ってくれる隆蒼を思い出す。
「確かに、それは、残酷ね」
翠玉は少し考えて、渋い顔をしている。
「当時の自分にもその自覚はあったんです。でもなぜか、彼とそういう関係になる気は起きなくて、それなのに彼が自分の側からいなくなるのは嫌だと、矛盾した気持ちがあったんですよね。今思い出しても、あれには説明が付かないんですけど……」
そう言って肩を竦める。
「いつか、彼が私に愛想を尽かしていなくなるのが落ちなんだろうなぁって思ってたんですけど、私が結婚しても、あいつは手近な所に来たんですよね。私の旦那の部下になってでもですよ。流石にあれには驚きましたし、馬鹿じゃないのかって罵りました。そこまで私に執着しなくてもって……でもあいつは自分の勝手だからって取り合わないんです」
翠玉は、呆れたような、複雑な笑みを浮かべて黙って聞いていた。
「結婚して軍を辞めたので、当然会う事もありませんでした。その内諦めて王都に帰るだろうと思っていたんですけど……結婚して3年目、丁度2度目の流産をして、その頃から夫とすれ違うようになったんです。外に女を作ったみたいなんです。まぁ妻が子どもを産めないのだから妾を考えてもおかしくないですよね。
何のために生きてるんだろうなぁって思いながら、妻として無理してニコニコしてて、ちょっとあの頃の私の精神状況はおかしかったんです。
そんな時、夫の用で彼の職場に行った時に、隆蒼に3年ぶりくらいに会ったんです。
久しぶりに会ったのに、あいつ私の顔を見てすぐに何があったんだ? 酷い顔してるぞ? って言ったんです。誰もその時の私を見てそんな事に気づいて言ってくれなかったんです」
「隆蒼だから分かったのね?」
翠玉の言葉に苦笑する。
「そうだと思います。本当にそれだけ、隆蒼に言われたのがきっかけだったんです。昔の私に戻りたいなぁって思ったんです。」
「それで離縁?」
「話は簡単でした。夫はもう私に飽きていたし、私ももう夫に尽くす気力もなかった。すぐに話は纏まりましたよ。軍を迷わず辞められるほど好きだったはずなのにあまりに呆気なくて驚きでした」
「元夫の邸を出て、さてどうしようかな~って思っていたら、目の前にあいつがいたんです。軍を辞めたからどこまでも付き合ってやるって! 本当に馬鹿な男ですよね。見返りもない女のためにそこまでするか? ってやっぱり罵ってました。それでも奴は「俺の勝手だって」呆れて物も言えなくて、とりあえず殿下に頼んで隆蒼だけでも禁軍で引き取れないかお願いするつもりで、王都に来たんです。それでこんな事に……」
「なるほど、丁度冬隼が私の護衛を探していたのね」
「私達にしてみればありがたい機会でした」
「最初、冬隼から隆蒼はずっと華南に報われない恋をしてるって聞いたけど……華南はいつから隆蒼の事好きだったの?」
「それが、未だにわからないんですよね、替えの利かない存在ではあったのは、昔からなんですけど……洞の中で、奴が死ぬかもしれないって思った時ですかね? 遺言みたいに好きだ、幸せにしてやりたかったって言われて、すごく腹が立ったんです。もっと早く言えよ! って……なんか待ってたみたいな事思ったんですよね。そんな事言うならちゃんと生き残って、私を幸せにしなさいよ! ってそれがあの口付けです」
「え……まさかあの緊迫した状況で?」
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