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第10章 後宮
第370話 居場所
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王都に戻る事が出来たのは、紫瑞軍の撤退からひと月半後の事だった。
軍とは別に、華南と隆蒼含む護衛部隊に警護を受けながら、翠玉は本隊より少し早めに廿州を出た。
体に負担をかけないよう、何度か馬車を乗り換え、きちんとした宿を取って休み、結局王都に到着したのは本隊の帰都と同じ日であった。
自邸の前に付けた馬車から華南の助けでゆっくりと降りると、出迎えに出てきた陽香と桜季、そして双子がその場で礼を取った。
「ただいま。お迎えありがとう」
そう声をかけると、すぐに顔を上げたのは陽香で、ツカツカと近づいてくると翠玉の手を取り自身の額に押し当てる。
「本当に……本当にご心配いたしました。あぁ……無事お戻りいただいて、どれほどホッとしました事か!!」
泣き出しそうな声で肩を震わせる陽香の背中をさする。
「まずは、お帰りをお喜び申し上げます。そして重ねてご懐妊につきましても、おめでとうございます」
次に近づいてきたのは桜季で、彼女は相変わらず淡々としていながらもその顔はどこか柔らかい表情を浮かべていた。
「桜季、留守中の差配ご苦労様。変わりは無かったかしら?」
「特にこれと言ってはございません。戦場から届きました奥様のご無理をされた報意外は平和なものでございました」
相変わらず直球な嫌味が懐かしくすら感じられて肩を竦める。
「もうその件は散々各方面から叱られたから勘弁して頂戴?もうあんな無理はしないから」
「当然でございます!この後は私共の監視の中、産月まで大人しくしていただきます!」
キッパリと言い切られて翠玉は若干たじろぐ。
「ん~、そこはまた色々調整が必要だから、片付いたら考えていきましょうか?」
逃げ腰で言った言葉に桜季の細い眉がピクリと動いた。
あ、怒られる。身構えがけた時、コホンと咳払いがひとつその場を割った。
「奥方様も長旅でお疲れですわ。積もる話もおありでしょうが、まずは大切な御身でございますからお身体を休めてはいかがでしょう」
素晴らしいタイミングでの華南の助け舟だった。
翠玉に向けられていた桜季の視線が、華南に移される。
「貴方様が奥方様と、ゆくゆくはお生まれになる御子様の護衛となる旨は伺っております。くれぐれも奥様に無茶をさせませぬようお願いいたしますよ」
「えぇ、もちろんでございます」
桜季の厳しい視線すらもサラリと流した華南は、逆にそれを弾き返すようにニコリと笑った。
「お部屋の準備は整えてございますから、旦那様がお戻りになるまでお部屋でお休み下さいませ」
華南の笑みに桜季が小さく息を吐いて、自身の身体の向きを傾けると屋敷の入り口を示す。
ここまでずっと翠玉の手を握っていた陽香がそのままゆっくりと手を引いてくれた。
邸内は、ここを出た数ヶ月前と大きな変化は無かった。出発前と変わらない自室の様子を見て、不思議とホッとする自分がいてようやく戻ってきたのだと実感する事ができた。
それほどまでにこの場所がきちんと自分の居場所になっていると言うことに気付いて、自然と腹を撫でていた。
この家で冬隼の妻として過ごして、そして子を産んで育てる。
とても、幸せで温かな場所になる。
わずか1年ほど前は、どこか他人の家という意識で、自分はよそ者だと思っていた事が信じられなかった。
軍とは別に、華南と隆蒼含む護衛部隊に警護を受けながら、翠玉は本隊より少し早めに廿州を出た。
体に負担をかけないよう、何度か馬車を乗り換え、きちんとした宿を取って休み、結局王都に到着したのは本隊の帰都と同じ日であった。
自邸の前に付けた馬車から華南の助けでゆっくりと降りると、出迎えに出てきた陽香と桜季、そして双子がその場で礼を取った。
「ただいま。お迎えありがとう」
そう声をかけると、すぐに顔を上げたのは陽香で、ツカツカと近づいてくると翠玉の手を取り自身の額に押し当てる。
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「まずは、お帰りをお喜び申し上げます。そして重ねてご懐妊につきましても、おめでとうございます」
次に近づいてきたのは桜季で、彼女は相変わらず淡々としていながらもその顔はどこか柔らかい表情を浮かべていた。
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相変わらず直球な嫌味が懐かしくすら感じられて肩を竦める。
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「当然でございます!この後は私共の監視の中、産月まで大人しくしていただきます!」
キッパリと言い切られて翠玉は若干たじろぐ。
「ん~、そこはまた色々調整が必要だから、片付いたら考えていきましょうか?」
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あ、怒られる。身構えがけた時、コホンと咳払いがひとつその場を割った。
「奥方様も長旅でお疲れですわ。積もる話もおありでしょうが、まずは大切な御身でございますからお身体を休めてはいかがでしょう」
素晴らしいタイミングでの華南の助け舟だった。
翠玉に向けられていた桜季の視線が、華南に移される。
「貴方様が奥方様と、ゆくゆくはお生まれになる御子様の護衛となる旨は伺っております。くれぐれも奥様に無茶をさせませぬようお願いいたしますよ」
「えぇ、もちろんでございます」
桜季の厳しい視線すらもサラリと流した華南は、逆にそれを弾き返すようにニコリと笑った。
「お部屋の準備は整えてございますから、旦那様がお戻りになるまでお部屋でお休み下さいませ」
華南の笑みに桜季が小さく息を吐いて、自身の身体の向きを傾けると屋敷の入り口を示す。
ここまでずっと翠玉の手を握っていた陽香がそのままゆっくりと手を引いてくれた。
邸内は、ここを出た数ヶ月前と大きな変化は無かった。出発前と変わらない自室の様子を見て、不思議とホッとする自分がいてようやく戻ってきたのだと実感する事ができた。
それほどまでにこの場所がきちんと自分の居場所になっていると言うことに気付いて、自然と腹を撫でていた。
この家で冬隼の妻として過ごして、そして子を産んで育てる。
とても、幸せで温かな場所になる。
わずか1年ほど前は、どこか他人の家という意識で、自分はよそ者だと思っていた事が信じられなかった。
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