89 / 161
第10章 後宮
第378話 異母姉の意図
「なぜ惺殿下を後宮には置きたくないのだろうか?」
朝の惺殿下とのやり取りを昼に戻ってきた冬隼に話して聞かせると、冬隼は眉を寄せた。
「わからないわ。ただ自身の経験から後ろ盾のない皇子は殺される運命だとでも思っているだけなのかもしれないけど……ほら、自分の育った清劉の後宮がそうだったから」
膳を突きながら、昔のことをいくらか思い出した翠玉は、眉を寄せる。
異母姉がそんな危機感を覚えてもおかしくないくらい、あの頃の故郷の後宮は荒れていた。しかし、その渦中で手を出していた人物の1人は彼女の母であったのだが……だからこそ、怖いのかもしれない。
「とにかく翠玉に後見を、との一点張りらしい」
参ったように冬隼が息を吐く。
朝から宮廷に詰めて皇子の処遇についても話をして来たらしいのだが、異母姉は「皇子の身が危ない」「後宮では危険だ」と繰り返すばかりだという。
罪を問われて拘束されているとは言え、皇子の身を誰よりも案じる母親のただならぬ主張に、流石に皇帝や皇后も無理やりそれを突っぱねる事はできないようだ。
これで惺殿下の身に何か起こってしまうのは望まない。
仕方なしに。とにかく劉妃の調べが終わり、処遇が決定されるまで、惺殿下は翠玉の庇護下に置くことになったのだという。
「あの人が私を頼るなんて事ありえないとおもうのだけどね~」
翠玉の中ではそれがなによりも不可解なのだ。
あれだけ毛嫌いして、突っかかっていたにも関わらず……だ。
生涯相入れない相手だと思っていたのに。
「そこまで自分の立場が危ういと理解しているのだろうな。後宮がダメならば彼女には他に頼るところも無かっただろうし」
冬隼の言葉に翠玉も頷く。
そして朝から燻っていた疑念が、胸の内に湧き上がる。
もしかしたら、異母姉はこのために祖国から姉妹を輿入れさせたかったのではないだろうか。
しかし、そんなに前から?
「一度、姉に会えないかしら?」
どうにしても、異母姉の意図がわからないままでは、惺殿下を守ることもできない。
彼女の真意を知る必要があるだろう。
「手続きを……取ろうか?」
あまり浮かない顔の冬隼の問いに翠玉は苦笑する。
あまりこの件で、翠玉に関わって欲しくないのはよくわかる。下手をすれば翠玉の身も危険に晒すこととなるのだ。
しかし、幼い皇子を放って置くこともできない。
翠玉にとっても冬隼にとっても血の繋がった甥である。
「お願い」
あなたにおすすめの小説
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
「君を愛することはない」と言われて三年、そろそろ白い結婚をやめようと思います
千乃
恋愛
伯爵家の娘・セシリアには、幼い頃からの許婚がいた。
公爵家当主にして王国宰相、ユーリス・シルヴェイン――初恋の相手でもある彼と、セシリアはついに結婚する。
しかし結婚初夜、彼は静かに告げた。
「君を愛することはない」と――。
ユーリスはほとんど帰宅せず、聞こえてくるのは他の女性との浮いた話ばかり。
没落寸前だった伯爵家の借金を肩代わりしてもらった身では、反論する術もない。
セシリアに求められるのは、ただ"完璧な公爵夫人"でいることだけだった。
しかし"ある夜"をきっかけに、ふたりの関係はより歪になる。
彼が稀に邸へ戻る夜――ユーリスは決まって、セシリアの隣で眠るのだ。
理由も、意味も、分からない。でも、怖くて聞けない。
そんな折、社交界である噂が囁かれ始めた。
他国の王女との縁談、そして「本命の女性がいる」という声。
結婚して三年。愛されなくとも、傍にいられればそれで良かった。
けれど、もう――潮時なのかもしれない。セシリアは静かに、離婚を決意する。
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
夫の幼馴染が「あなたと結婚できなかった」と泣いた日、私は公爵夫人をやめると決めました
柴田はつみ
恋愛
舞踏会で、エレノアは聞いてしまった。
「あなたと結婚できなかったことが、今でも苦しいの」
そう泣いたのは、夫アレクシスの幼馴染ローズだった。
優しい夫。けれど、その優しさはいつも彼女へ向けられる。
公爵夫人として隣にいるのは自分なのに、彼の心だけは別の場所にあるのだと思っていた。
だからエレノアは、静かに決める。
もう、あなたの妻でいることを望みません。
【完結】愛していると気づいたから、私はあなたを手放します
妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
愛しているのに、触れられない。
幼なじみの夫は、こう言った。
「もう、女性を愛することはできない」と。
それでも「君がいい」と言い続ける彼と、
子どもを望む現実の間で、私は追い詰められていく。
だから決めた。
彼のためにも、私は他の誰かを探す。
――そう思ったのに。
なぜあなたは、そんな顔で私を追いかけてくるの?
これは、間違った優しさで離れた二人が、
もう一度、互いを選び直すまでの物語。
※表紙はAI生成イラストを使用しています。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。