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第10章 後宮
第378話 異母姉の意図
「なぜ惺殿下を後宮には置きたくないのだろうか?」
朝の惺殿下とのやり取りを昼に戻ってきた冬隼に話して聞かせると、冬隼は眉を寄せた。
「わからないわ。ただ自身の経験から後ろ盾のない皇子は殺される運命だとでも思っているだけなのかもしれないけど……ほら、自分の育った清劉の後宮がそうだったから」
膳を突きながら、昔のことをいくらか思い出した翠玉は、眉を寄せる。
異母姉がそんな危機感を覚えてもおかしくないくらい、あの頃の故郷の後宮は荒れていた。しかし、その渦中で手を出していた人物の1人は彼女の母であったのだが……だからこそ、怖いのかもしれない。
「とにかく翠玉に後見を、との一点張りらしい」
参ったように冬隼が息を吐く。
朝から宮廷に詰めて皇子の処遇についても話をして来たらしいのだが、異母姉は「皇子の身が危ない」「後宮では危険だ」と繰り返すばかりだという。
罪を問われて拘束されているとは言え、皇子の身を誰よりも案じる母親のただならぬ主張に、流石に皇帝や皇后も無理やりそれを突っぱねる事はできないようだ。
これで惺殿下の身に何か起こってしまうのは望まない。
仕方なしに。とにかく劉妃の調べが終わり、処遇が決定されるまで、惺殿下は翠玉の庇護下に置くことになったのだという。
「あの人が私を頼るなんて事ありえないとおもうのだけどね~」
翠玉の中ではそれがなによりも不可解なのだ。
あれだけ毛嫌いして、突っかかっていたにも関わらず……だ。
生涯相入れない相手だと思っていたのに。
「そこまで自分の立場が危ういと理解しているのだろうな。後宮がダメならば彼女には他に頼るところも無かっただろうし」
冬隼の言葉に翠玉も頷く。
そして朝から燻っていた疑念が、胸の内に湧き上がる。
もしかしたら、異母姉はこのために祖国から姉妹を輿入れさせたかったのではないだろうか。
しかし、そんなに前から?
「一度、姉に会えないかしら?」
どうにしても、異母姉の意図がわからないままでは、惺殿下を守ることもできない。
彼女の真意を知る必要があるだろう。
「手続きを……取ろうか?」
あまり浮かない顔の冬隼の問いに翠玉は苦笑する。
あまりこの件で、翠玉に関わって欲しくないのはよくわかる。下手をすれば翠玉の身も危険に晒すこととなるのだ。
しかし、幼い皇子を放って置くこともできない。
翠玉にとっても冬隼にとっても血の繋がった甥である。
「お願い」
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