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第10章 後宮
第388話 罪の囁き
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「今日はどこか、心ここにあらずのご様子でしたね?」
いつも通りの秘められた情事の後、気怠さに寝台に沈んでいると、東左に背後から抱き竦められた。
「そう、見える?」
彼の目敏さに苦笑する。
東左は芙艶のちょっとした変化にもよく気づく。
そんなところが心地良くて、付き合いはすでに片手の指では足りない年数を経過していた。
くるりと反転させられて、東左に組み敷かれ口づけが落ちてきた。
「わたしが貴方様の変化を逃すはずがございません。何かご心配なことがあるのでしょう?」
お見通しですよ?と不敵に笑う彼を見上げて芙艶も釣られて笑った。
全く、この男に隠し事はできない。
このところ後宮の中、とくに皇子達の周りで不穏な事が起こっていて、それをどう調べて行こうかと気を揉んでいるのだと素直に話した。
この頃、すでに芙艶は東左に絶対の信頼を寄せていたので、話す事にはなんの抵抗も無くなっていた。
話を聞いた東左はしばらく言葉を失い、何やら考え込み始めた。
こうして芙艶の話に真剣に向き合ってくれるのも彼の優しい一面だと思っていた。
しばらくして、視線を上げた東左が「この件、少しわたしの側で調べられるやもしれません。しばしお時間をいただけませんか?」と言い出した。
「すこし伝手があります」
そう言う彼は、何かを確信しているようだった。
その時、正直どう手を打とうか考えあぐねていた芙艶にとって、その申し出は渡に船だった。しかも誰よりも信頼している東左の言葉だ。
「お願いするわ。でも、色仕掛けで他の女官から情報を引き出そうとするのはだめよ?」
別の方面の心配をする以外に、不安な事なんてなかったのだ。
2週間ほど経過して、驚く事に東左は十分すぎる成果を掴んできた。
皇子達の周囲で起こっている不穏な事の元凶が劉妃であった事を突き止めたのだ。
「現在は泳がせている状況ですが、いかがなさいますか?」
そう聞かれて、芙艶はすぐにその実態を明らかにして皇帝に告発しようと考えた。
劉妃は廃妃の後、死罪か流罪を賜るだろう。幼い皇子はどうなるのか?ふとそれに思い至る。
まだ物心もついていない皇子である。寛容な処罰を芙艶が求めれば、皇位継承権剥奪くらいですむかもしれない。
母のいなくなった皇子を養育するのも、皇后の仕事であろう。思いがけず、皇子の母になれるやもしれない。
そんな考えに至ってしまった芙艶は、一つの可能性を思いついてしまった。
自分で産まずとも、皇子の母となる事はできるではないか。
そう、皇子の母が死んでしまえばいいのだと。
長年の喉の渇きが一気に潤ったような気がした。
しかし同時に、浅ましい自分の考えを恐ろしくも感じた。
そんな芙艶の心情を具に読み取ったのだろう。東左がゆったりと背を撫でた。
「おそれながら、惺殿下はあの劉貴妃に養育されるより、貴方様のもとで育った方が可能性を広げられると私は思いますよ。まぁ惺皇子に限らず爛殿下もですがね」
驚いて見上げれば、東左は肩を竦めた。
「泉貴妃はお優しい方ですがお世継ぎのお母上としては弱過ぎる。もっときちんと殿下を導ける方が後見であられた方がよろしいかと」
言っていることは随分な事であるが、その調子は軽い。忠告や教唆でもなくただの世間話のような言葉に、芙艶も軽く笑う。
「私にそうなれと?恐ろしい事を誘うのね?」
「まさか、貴方は今でも十分よき国母であらせられる。少しくらい足りないものがあるくらいがちょうどいい」
足りないもの。
何気ない東左の一言が、芙艶の胸の奥に引っかかった。
やはり自分は今のままでは完璧でない。
不意に東左が口付けてきて、彼の体温の高いザラついた手が脇腹を撫でた。
再度芙艶を求める彼のいつもの癖だ。その甘い誘いに、芙艶も熱く甘い吐息を漏らして応じる。
「愛しい人、もし貴方が望む事があるならば私はそれを叶える事に命を惜しむことはいたしません」
激しい快感の中、耳元に囁かれた東左の言葉が芙艶の胸の奥にジワリと染み込んだ。
いつも通りの秘められた情事の後、気怠さに寝台に沈んでいると、東左に背後から抱き竦められた。
「そう、見える?」
彼の目敏さに苦笑する。
東左は芙艶のちょっとした変化にもよく気づく。
そんなところが心地良くて、付き合いはすでに片手の指では足りない年数を経過していた。
くるりと反転させられて、東左に組み敷かれ口づけが落ちてきた。
「わたしが貴方様の変化を逃すはずがございません。何かご心配なことがあるのでしょう?」
お見通しですよ?と不敵に笑う彼を見上げて芙艶も釣られて笑った。
全く、この男に隠し事はできない。
このところ後宮の中、とくに皇子達の周りで不穏な事が起こっていて、それをどう調べて行こうかと気を揉んでいるのだと素直に話した。
この頃、すでに芙艶は東左に絶対の信頼を寄せていたので、話す事にはなんの抵抗も無くなっていた。
話を聞いた東左はしばらく言葉を失い、何やら考え込み始めた。
こうして芙艶の話に真剣に向き合ってくれるのも彼の優しい一面だと思っていた。
しばらくして、視線を上げた東左が「この件、少しわたしの側で調べられるやもしれません。しばしお時間をいただけませんか?」と言い出した。
「すこし伝手があります」
そう言う彼は、何かを確信しているようだった。
その時、正直どう手を打とうか考えあぐねていた芙艶にとって、その申し出は渡に船だった。しかも誰よりも信頼している東左の言葉だ。
「お願いするわ。でも、色仕掛けで他の女官から情報を引き出そうとするのはだめよ?」
別の方面の心配をする以外に、不安な事なんてなかったのだ。
2週間ほど経過して、驚く事に東左は十分すぎる成果を掴んできた。
皇子達の周囲で起こっている不穏な事の元凶が劉妃であった事を突き止めたのだ。
「現在は泳がせている状況ですが、いかがなさいますか?」
そう聞かれて、芙艶はすぐにその実態を明らかにして皇帝に告発しようと考えた。
劉妃は廃妃の後、死罪か流罪を賜るだろう。幼い皇子はどうなるのか?ふとそれに思い至る。
まだ物心もついていない皇子である。寛容な処罰を芙艶が求めれば、皇位継承権剥奪くらいですむかもしれない。
母のいなくなった皇子を養育するのも、皇后の仕事であろう。思いがけず、皇子の母になれるやもしれない。
そんな考えに至ってしまった芙艶は、一つの可能性を思いついてしまった。
自分で産まずとも、皇子の母となる事はできるではないか。
そう、皇子の母が死んでしまえばいいのだと。
長年の喉の渇きが一気に潤ったような気がした。
しかし同時に、浅ましい自分の考えを恐ろしくも感じた。
そんな芙艶の心情を具に読み取ったのだろう。東左がゆったりと背を撫でた。
「おそれながら、惺殿下はあの劉貴妃に養育されるより、貴方様のもとで育った方が可能性を広げられると私は思いますよ。まぁ惺皇子に限らず爛殿下もですがね」
驚いて見上げれば、東左は肩を竦めた。
「泉貴妃はお優しい方ですがお世継ぎのお母上としては弱過ぎる。もっときちんと殿下を導ける方が後見であられた方がよろしいかと」
言っていることは随分な事であるが、その調子は軽い。忠告や教唆でもなくただの世間話のような言葉に、芙艶も軽く笑う。
「私にそうなれと?恐ろしい事を誘うのね?」
「まさか、貴方は今でも十分よき国母であらせられる。少しくらい足りないものがあるくらいがちょうどいい」
足りないもの。
何気ない東左の一言が、芙艶の胸の奥に引っかかった。
やはり自分は今のままでは完璧でない。
不意に東左が口付けてきて、彼の体温の高いザラついた手が脇腹を撫でた。
再度芙艶を求める彼のいつもの癖だ。その甘い誘いに、芙艶も熱く甘い吐息を漏らして応じる。
「愛しい人、もし貴方が望む事があるならば私はそれを叶える事に命を惜しむことはいたしません」
激しい快感の中、耳元に囁かれた東左の言葉が芙艶の胸の奥にジワリと染み込んだ。
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