後宮の棘

香月みまり

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番外編ー清劉戦ー

1日目 祖国 (孤児皇后52話別視点)

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賑やかな喧騒に、囃子の音。

輿の中にいても分かるほど賑わっている様子に翠玉は複雑な心境でため息を吐く。

「随分な盛り上がりね」


「あぁ流石だな」

向かいに座る冬隼も、渋い顔で頷く。

「ここまで来るまでに通ってきた農村なんかは随分とくたびれていたけど、まだ鞍譚あんたんは潤っているのね」

「少しずつ苦しくなって来ているのだろう。だがまだ都市部に届くほどではないという事だろうな。本来なら、もっと前の段階で手を打つべきなのだがな」

すでにその機を逸していることは、政治に実際関わっていない冬隼と翠玉の目から見ても一目瞭然だった。

「仕方ないわ、本来皇帝になるべきでない男が帝位にいるのだもの」

眉を寄せた翠玉は、御簾ごしに輿の周りに集まって歓声を上げる群衆を見る。
湖紅の特使が、嫁いだ自国の元皇女である事を知るものは、この中にどれほどいるのだろうか?

とにかく他国からやってきた客人を歓迎するような歓声は、興奮に満ちて、まるで見たくないものからわざと目を逸らしてはしゃいでいるようで、一層異質に思える。


そうして、暗澹たる気分の中で、何気なく視線を向けた先に、白く浮かぶキツネの面を認めて、翠玉は唐突に吹き出す事となった。


「!?どうした?」

あまりの妻の感情の変化に、冬隼がわずかに腰を浮かせる。

そんな夫を手で制して押し留めた翠玉は、クツクツと喉を鳴らしながら外を指す。

「兄様、、、と至湧ね、派手な変装だわ」

狐と変面師のコンビが、群衆の中に立っていたのだ。狐の面は恐らく以前兄が初めて姿を明かしにやってきた時につけていたものだろう。おかげですぐに分かった。

普段道端で見ればとてつもなく異様な二人組だが、このお祭り騒ぎの中では、不思議なほど上手く溶け込んでいた。

見たものを話してやれば、冬隼も苦笑する。

「とにかく無事に都入りできたようで良かった」

「ふふっ、そのようね。」

まだ治らない笑を噛み殺しながら、翠玉も同意する。

「間もなく、大門となります」

輿の外から、声がかけられて、途端に翠玉の顔から笑みが消えた。

「まずはひと仕事ね。気が重いわぁ」
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