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3章
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しおりを挟むそれは、馬車まで残り数メートルほどまでやってきた時だった。
「侵略者どもが!!」
突如目の前の民衆の人垣が揺れたかと思うと、そこから柵の隙間を抜けて男が3人、私たちの側面を突くように飛び出してきた。
「っ!!」
私が気が付いて身を固くするまでの間に、兵が動き出して、私とユーリ様をかばうようにジェイドが立ちはだかった。
そうしてよく見てみれば、私の半歩前で息を詰めているユーリ様もすでに腰に携えた剣に手をかけていた。
私より背の高い人たちが立ちはだかったおかげで、男たちがどんな武器を持ってどのように近づいてきていたのかはよく見えなかった。
ただ、捕らえろ!という兵たちの指示する声と共にカランと金属が石畳に落ちる音が複数回聞こえて、男たちが兵によって取り押さえられて制圧されたのだという事は理解できた。
「侵略者」と彼らが叫んでいたところをみると、先の戦争での残党だろうか、、、。
とにかく何事もなく制圧されたのであればよかったとほっと息を吐きながらも、やはり手足は震えた。
「王妃陛下」
その時不意に、私の背後へ回っていた近衛兵がひっそりと私に声をかけてくる。
見れば、2人の近衛が私を守るように囲っていて、何度か見たことがある顔の者達だった。
「ご婦人が見るにはあまりにも凄惨かと、、、わたくし共が一足先に馬車の方へご案内いたします」
気を遣うようにそう言った一人の近衛は、「こちらです」と馬車までの道を指す。
確かに、このような場所に私がいても役に立てるわけでもないし、王妃が血が流れるような場に進んで残るのは望ましくないだろう。
そう納得して私は彼に頷くと、ユーリ様の後ろを離れて、彼についた。もう一人は私の背後を護衛してくれるらしい。
「っ!アルマ!!」
私がちょうどユーリ様達に背を向けた時、突然切迫したような厳しい声に背後から呼び止められて、私は反射的にそちらを振り返る。
ギラリと、目の前に青白く光る鋭利な刃物が見えた。
それはすでに私に向かって振り下ろされようとしているところで
それを持つ男は、私の背後の護衛に当っていたはずの近衛兵で
あぁ、私とんでもない失態を犯してしまったのだと、一瞬のうちに理解した。
彼らの狙いは、、、はなから王妃だったのだ、、、。
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