ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜

八ッ坂千鶴

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兎と狼 第2部

第99話 有栖と美玲の秘密

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 ◇◇◇翌日◇◇◇


「おはよう。大樹」
「おはよう。翔斗。あの後ハエトリグサは倒せたのか?」
「もちろん。俺がドカンとラストアタック決めてやったよ。ただそのあとしっかりログアウトはしたけど、それまでの記憶がないんだよな」
「そうか。でもよかった。今日は坂東先輩もしっかり登校してるみたいだぜ?」
「それは本当か!?」
「おうよ」

 ハエトリグサ戦が無事終わり、1日と半日振りに学校に登校した俺と大樹。今日の俺は左手に結人さんが作った特殊な手袋をはめていた。
 大樹が言うにはしかりと坂東先輩が来ているとの事。それからいつものように授業を受けて、時間が過ぎていき、昼食の時間になる。
 もちろんまず先に向かうのは一ノ瀬先輩のクラスだ。久しぶりに会うかもしれない。そんなワクワク感に緊張すら感じない。

「一ノ瀬先輩! 一緒に食堂来てください! 坂東先輩が呼んでるので。ちょっと試したいことがあるんです」
「翔斗くん? ちょっと今は無理……かな?」
「それでも! それでもです!」

 俺の言葉に混乱している一ノ瀬先輩。それもそのはず、俺がこの行動をとってるのは坂東先輩が考えたことだからだ。
 坂東先輩はもう食堂にいるとメールが来ている。なかなか出てこない一ノ瀬先輩。俺はクラスルームの中に入って先輩の腕を掴んだ。

「早く早く!」
「ちょ。ちょっと!?」

 3年生のクラスから食堂までは階段があるが、俺は紋章を発動させて歪みを作りショートカット。すぐに食堂についた。

「貴方たち。予定より10分遅刻よ」
「すみません。坂東先輩。なかなか一ノ瀬先輩が出てきてくれなくて……」
「罰は無しよ。昨日飛鳥さんがバッチリ決めてくれたから」
「ありがとうございます」

 この状況で置いてきぼりになってるのは有栖だけ。このまま続けるとさらに追いついていけないからやめておくと、アイサインで共有した。

「それで、私に何?」
「いいから、飛鳥さんの目を見て、じっと見つめておくのよ」
「い、いや、それはちょっと恥ずかし……」
「いいからしなさい!」
「わ、わかった……」

 一ノ瀬先輩が俺の目を見つめる。その時に俺は紋章を発動させた。昨日から紋章を発動させる時に澪のことを考えなくても自然使用ができるようになった。
 俺は一ノ瀬先輩の記憶を辿る。すると、彼女が小学生くらいの頃まで遡った。視点は一ノ瀬先輩の目線だ。

『○○お姉ちゃん。ゲームしよ』
『どうせ貴方が勝つんでしょ? もう嫌よ。遊びたくないわ』
『それでも! 今度こそは私がわざと負けてあげるから!』

 なんだろう。話し相手の口調が誰かに似ている。そうか。もしかしたら!

『みーーれーーいーーー! 遊んでよーー』
『嫌よ。絶対に嫌!!』

 きっとこれは一ノ瀬先輩が忘れていた過去。彼女は嘘をついていた。VR酔いなんかじゃない。苗字が違うなら一ノ瀬先輩と坂東先輩は従姉妹。俺は紋章を停止させた。

「まず初めに、一ノ瀬先輩に聞きたい事があります。一ノ瀬先輩。従姉妹がいますよね?」
「う、うん……。だけど、顔も名前も思い出せなくて……」
「ありがとうございます。これで全部が繋がりました」
「え?」

 俺は一度頭の中を整理する。俺が一ノ瀬先輩の過去を見てわかったこと。それが本当に繋がった。まだ彼女は何が起きたのかわかってないみたいだ。なんせ、左手の光は誰にも見えてないのだから。
 食堂はもうすでにざわめいていた。こうなるのはもうすでに予測済み。坂東先輩もうんうんと頷いている。どうやら彼女も想定していたことと同じことが起こったことに納得しているようだ。

「坂東先輩が言ってたこと。本当だったんですね……」
「美玲さんが言ってたことが本当?」
「はい。一ノ瀬先輩と坂東先輩は従姉妹なんですよ。親が兄弟か姉妹。どちらかだと思います」
「私と……美玲さんが……従姉妹……」
「はい」

 彼女はまだ受け止め切れてないようだ。ずっと忘れていたことを思い出したからだろう。俺もまさかこの2人が従姉妹だとは思わなかった。これの発端の会話というのはつまりこういうことだ。

 ******

『飛鳥さん。ちょっといいかしら?』
『坂東先輩なんですか?』
『どうやら、有栖さんが私との思い出を忘れてるみたいなのよ。それでお願いがあるのだけれど。貴方の紋章であたしの記憶と齟齬がないか確認してもらえるかしら?』
『い、いいですけど……』
『それじゃ。決まりね』

 ******

 そして現在に至る。ちょうど一ノ瀬先輩が状況を飲み込んだところだった。これでこのことも万事解決。だと思ったのだが……。だんだん一ノ瀬先輩の表情に怒りの感情が混ざり始めた。
 直後。先輩は力強く食堂のテーブルを両手で叩く。

「美玲……」
「なにかしら?」
「美玲はなんで……。私の大事な……小学校1年生から大事にしていた最初のゲーム機を壊したの!!」
「それはあたしも覚えてないわ。貴方があまりにも強すぎたのよ。だけど、今は貴方を超えることができると思ってるわ」
「え?」
「今は怒ってないわよ。それと、貴方、梱包されたソフトケース見なかった? あれを送ったのもあたしよ。ビースト・オンライン。一緒に遊んでくれるかしら?」
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