ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜

八ッ坂千鶴

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集えスローライフ 第1部

第1話 2月初旬

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 この日ビースト・オンライン内のアリスの故郷プルーンに緊急招集された。ラミアさんとファリナさんももちろんいる。相変わらずだけど色違いの猫アバターでどっちがどっちなのかわからなかった。
 ちなみにヤマトはゲーム内での2人しか知らない。最初会わせた時なんか失神するレベルだったので、GVさんと相談したうえでリアルでのラミア姉妹とは会わせないことになった。今回の話題は俺の弟のことについて。正確には俺の紋章についての内容だ。

「まず、カケルくん。あれから紋章の調子はどう?」
「普段とあまり変わらないですね。よっぽどじゃない限り使用することもないし。夢の中ではよく澪を会話しています。澪もGVさんが作った最新タイプの人形が気に入ったみたいで、少し人に近づけたと喜んでましたよ」
「そう? それは嬉しい知らせだね。実は今回はゲーム内で澪も一緒にプレイできるようにしようと思っていろいろ考えてきたから」
「え!? 澪とゲームですか!?」
「うん。その方が君も喜ぶかな? って」

 澪とついにゲームでも会える。GVさんは俺に左手甲を見せるようにジェスチャーしてくる。俺は言われたように差し出した。そこから、GVさんは澪のアバターを何にしたいか質問してきた。俺はどうせなら一緒のアバターがいいだろうと思い兎アバターでお願いした。
 GVさんは亜空間から二足歩行の兎の形をした人形を取り出す。それに触れるように言われたので触れてみると、紋章が光輝きその文字が浮き上がった。そして、人形に憑依した。人形が動き出す。これを見るのはもう5回目なので、あまり驚かなくなっていた。

「あれ? もしかしてぼく……」
「そうだ。お兄ちゃんが選んでやったんだぞー」
「やったー。お兄ちゃんと同じアバターだよ! ほら見て見て……って……知らない人がたくさんいる……」
「あはは。まあ今まではずっとGV。結人さんの部屋のみだったからな」
「うん。初めまして、飛鳥澪です。うーん。ここではプレイヤー名の方がいいかな?」

 これまで以上に嬉しそうな顔を見せる澪。彼のプレイヤー名は俺もしっかり覚えている。彼のプレイヤー名は……。

「じゃ、じゃあ。改めましてレイカーです。みんなレイって呼んでください!」
「レイカーくんね。了解。僕はカケルくんが言った通り……」
「GVさん。ですよね!」
「う、うん……。なんか今まで以上に威勢がいいね……」

 GVさんがレイのテンションに追いついていけなくなっている。そんなにレイはゲーム内で動きまわることを楽しみにしていたのか。俺もちょっとびっくりした。その後もレイはギルドメンバーと名前を交換して、はしゃぎまわる。
 やっぱりまだ子供なんだなぁ。と思ってしまった。俺は年を重ねるけど、今の澪は年を重ねない。永遠の中学生だ。だから、彼が成長することも奇跡に近くなる。

「えーと、お兄ちゃん! メニューの開き方教えて!」
「オーケー。三角を作って真ん中に縦棒だ」
「こう? あ、ほんとだ! ありがとう!」

 レイはとても楽しそうだ。この時間は約1時間から2時間続いた。今日はレイのことも考えて討伐やクエストはやらない方向になった。ゲーム内の澪はその場に残るらしい。もちろん。リアルの紋章は消失してないので今まで通り夢の中で会話できるし現実世界の人形にも憑依させることができる。
 それぞれでログアウトすると、俺は自室のベッドで目を覚ました。やっぱり、澪が目の前にいるのといないのとじゃ胸の高鳴りが全然違う。澪と離れると耐えがたいくらいの喪失感に襲われてしまうようになっていた。
 早く自分の家で生活させたい。そうすれば澪ももっと喜ぶのに。ハエトリグサ戦の時に感じた共鳴している感覚が残り香として身体の中で漂っている。俺はその時が一番活躍できた日だと思っている。
 澪もその時は力になれて嬉しかったと言っていた。今でも夢の中でそのような後日談をしている。やっぱり、澪も寂しいんだ。涙も食事もできるようになった素体で、きっと泣いているのだろう。
 普段から力になれない俺がなんだか無力感が半端なくて、どうすればもっと力になれるかを毎日問いかける日々。
 俺はスマホの時計を見る。そこには22時と書かれていた。このまま寝たらまた澪に会えるかな? そう思いながら勉強机の椅子に座る。寝る前にやってること。それは結人さんへの近況報告。東京と群馬じゃいくら空間魔法で移動できるといっても頻繁には行けない。
 だから、いつもメールで近況報告をする。今日はもうゲーム内でだいたいのことを話したので特に書くことはなかったが、『ありがとう』と『おやすみ』だけを伝えてパソコンをシャットダウンさせた。

「さて、寝ますかね……」

 そう自分に言い聞かせてベッドに横たわる。ボイスセンサーで消灯させると、照明は常夜灯に変わった。わざわざここまで最新型を組み込まなくてもいいのに、俺のお父さんの趣味が目立ちすぎている。
 ゆっくり目を瞑る。だんだんと意識が遠のいていく。気が付けばいつも澪と待ち合わせ場所にしている、一本の大木の下に降り立っていた。
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