35 / 70
第一章 ヴァルム試験国家編
第二十一話 脳と牙の第四ゲーム(2)
しおりを挟む
リオが、遠慮がちに口を開いた。
視線が一斉にそちらへ向く。本人が一番驚いたように肩をすくめていた。
「俺、その……矢を撃つ場所、ちゃんと分かってた方がいいと思って」
昨日、「何のために引き金を引くか」を自分で選んだ少年だ。
シュアラは、少しだけ頬の内側を噛んでから頷いた。
「もちろんです。リオさんには、二つの役目をお願いするつもりです」
「二つ?」
「一つは、牙の先端として。もう一つは、『脳』の延長として」
自分で言ってから、その言い方が少し気恥ずかしいと気づく。
「高いところから、こちらと敵の動きを両方見てください。撃つか撃たないかだけでなく、『今どこが噛まれているか』を、私の代わりに見てほしい」
リオは、眉をしかめたまま、ゆっくりとうなずいた。
「……やってみます」
声は小さいが、弦を持つ指の震えは、昨日よりずっと少ない。
ゲルトが、椅子の背にもたれながらぼそりと漏らした。
「若の剣が牙で、文官の数字が脳みそで……」
その言葉に、隣の兵が乾いた笑いを混ぜる。
「じゃあ俺らは何だ。筋肉か?」
「筋肉がなきゃ牙も動かねえよ」
くだらないやりとりが二、三往復する。その薄い笑いが、かえって全員の緊張を少しだけほぐした。
笑いが落ち着いたところで、カイが机の上に拳を置いた。
「条件は分かった」
彼は一度だけ砦の石を叩き、そのまま指先で東の村への線をたどる。
「敵は三倍。こっちは六十。村は守る。砦も空けない。……それで、お前の望む結果は何だ」
望む結果。
言葉にされると、喉の奥で引っかかる。
昨夜までなら、「死者を半分に抑える」や「損耗率を許容範囲に収める」といった文言が、すぐに並んだはずだ。帝都の帳簿に慣れた舌なら、いくらでも「現実的な数字」を用意できる。
シュアラは、懐の中の封筒の感触を、布越しに指で探った。宛名のない死亡届。あれを自分のために使う可能性を、父は計算に入れていた。
(でも今、ここで数字を下げるのは……)
喉が乾く。舌先が上顎に貼りつく。
カイは何も急かさなかった。ただ、机の上に置いた拳の上で親指を動かしている。待っている。答えを、数字ではなく言葉で出すのを。
「……目標は」
シュアラは、ゆっくりと言葉を絞り出した。
「砦側の死者、ゼロです」
室内が、ほんの一瞬だけ静まり返った。
その静けさの中で、誰かの椅子がきしむ音と、窓の外で風が木を揺らす音が、やけに大きく聞こえる。
「ゼロ?」
ゲルトが、眉を跳ね上げる。
「おい文官。さすがにそれは――」
「無謀だ、とおっしゃりたいのは分かります」
シュアラは、彼の言葉を遮らないよう、タイミングを慎重に測って差し込んだ。
「ですが、この冬までの間に、私はこの砦と三つの村で、『死なせずに済んだはずの人間』の数を、嫌というほど見ました」
トマス。リナ。名前のついてしまった顔が、脳裏の帳簿に勝手に並ぶ。
「ここで『仕方がない』と最初に書いた瞬間、この先の戦いでそれを何度でも使ってしまうと思います。だから最初だけは、意図的に高く設定させてください」
ゲルトはしばらく目を細めていたが、やがて肩をすくめた。
「……いいさ。どうせ現場で足りねえ分は、俺らが泥かぶるだけだ」
ボルグが鼻で笑う。
「最初から『誰か死ぬ』前提で並ばされるよりは、ずっとマシだな」
リオは何も言わなかった。ただ、矢筒の紐から手を離し、拳を握った。
カイが、ようやく口を開く。
「目標、死者ゼロ」
その言葉を反芻するように、ゆっくりと繰り返す。
「そのために必要なことは全部やる。兵を動かすのは俺の仕事だ。……お前は、動かすべき場所を全部指させ」
シュアラは、目を瞬かせた。
ほんの一瞬、返事の仕方を忘れた。
代わりに、手が先に動いた。机の端に置いていた自分の手帳を開き、「初戦準備(仮)」と書かれた見出しの下に、新しい行を作る。
『目標:砦側死者ゼロ(暫定)』
インクがじわりと紙に染みる。その下に、矢印を一本引き、今日の軍議で決まった最低限の条件を書き連ねた。
東への街道、二つの「噛ませどころ」。村と砦に残す人数。リオの配置。工兵の作業量。兵の交代時間。
書きながら、ふと視線を感じた。
顔を上げると、扉の近くで立っている若い兵が、こちらを見ていた。伝令役として廊下に控えていたはずが、いつのまにか半歩、部屋の中に踏み込んでいる。
「……何か?」
問うと、彼は慌てて背筋を伸ばした。
「い、いえ。その……」
言いかけて、視線をカイとシュアラの間で泳がせる。
「団長と文官殿が、同じ板の上で喋ってるの、初めてちゃんと見たなと思って」
言ってから、自分で言葉のまずさに気づいたらしく、真っ赤になる。
ゲルトがニヤリとする。
「いつもは別々に怒鳴ってるからな」
「怒鳴ってはいません」
シュアラは反射的に否定し、それから少しだけ口元を緩めた。
カイも、小さく鼻を鳴らす。
「聞いたか、文官」
「何をですか」
「お前と俺で、頭一つ分ってとこだとよ」
そう言って、彼は机の上の砦の石と、シュアラの手帳を交互に指先で叩いた。
「牙が勝手に走らねえように、ちゃんと手綱握っとけよ、相棒」
相棒、という単語が、耳の奥で鈍く跳ねた。
共犯者、と言い換えてもいい。
この冬の間に、帝国の外れで勝手に始めた「試験国家」のゲーム。その盤面の上で、二人して帝都にも小領主にも内緒の賭けをしているのだとしたら――その呼び方は、あながち間違いではないのかもしれない。
シュアラは、手帳の余白に小さく一行だけ書き足した。
『脳と牙を一つに束ねること』
文字の形が、いつもよりわずかに歪んだ。
インクが乾くのを待たずに手帳を閉じる。
「では、詳細な作業案を今夜中にまとめます」
そう告げて、彼女は頭を下げた。
「明日から、砦全体を巻き込んだ、『第四ゲーム』の準備を始めましょう」
冬の夕方の光が、窓の外で完全に色を失った。
会議室の中に残っているのは、蝋燭の小さな火と、紙と石と、人間の体温だけだった。
視線が一斉にそちらへ向く。本人が一番驚いたように肩をすくめていた。
「俺、その……矢を撃つ場所、ちゃんと分かってた方がいいと思って」
昨日、「何のために引き金を引くか」を自分で選んだ少年だ。
シュアラは、少しだけ頬の内側を噛んでから頷いた。
「もちろんです。リオさんには、二つの役目をお願いするつもりです」
「二つ?」
「一つは、牙の先端として。もう一つは、『脳』の延長として」
自分で言ってから、その言い方が少し気恥ずかしいと気づく。
「高いところから、こちらと敵の動きを両方見てください。撃つか撃たないかだけでなく、『今どこが噛まれているか』を、私の代わりに見てほしい」
リオは、眉をしかめたまま、ゆっくりとうなずいた。
「……やってみます」
声は小さいが、弦を持つ指の震えは、昨日よりずっと少ない。
ゲルトが、椅子の背にもたれながらぼそりと漏らした。
「若の剣が牙で、文官の数字が脳みそで……」
その言葉に、隣の兵が乾いた笑いを混ぜる。
「じゃあ俺らは何だ。筋肉か?」
「筋肉がなきゃ牙も動かねえよ」
くだらないやりとりが二、三往復する。その薄い笑いが、かえって全員の緊張を少しだけほぐした。
笑いが落ち着いたところで、カイが机の上に拳を置いた。
「条件は分かった」
彼は一度だけ砦の石を叩き、そのまま指先で東の村への線をたどる。
「敵は三倍。こっちは六十。村は守る。砦も空けない。……それで、お前の望む結果は何だ」
望む結果。
言葉にされると、喉の奥で引っかかる。
昨夜までなら、「死者を半分に抑える」や「損耗率を許容範囲に収める」といった文言が、すぐに並んだはずだ。帝都の帳簿に慣れた舌なら、いくらでも「現実的な数字」を用意できる。
シュアラは、懐の中の封筒の感触を、布越しに指で探った。宛名のない死亡届。あれを自分のために使う可能性を、父は計算に入れていた。
(でも今、ここで数字を下げるのは……)
喉が乾く。舌先が上顎に貼りつく。
カイは何も急かさなかった。ただ、机の上に置いた拳の上で親指を動かしている。待っている。答えを、数字ではなく言葉で出すのを。
「……目標は」
シュアラは、ゆっくりと言葉を絞り出した。
「砦側の死者、ゼロです」
室内が、ほんの一瞬だけ静まり返った。
その静けさの中で、誰かの椅子がきしむ音と、窓の外で風が木を揺らす音が、やけに大きく聞こえる。
「ゼロ?」
ゲルトが、眉を跳ね上げる。
「おい文官。さすがにそれは――」
「無謀だ、とおっしゃりたいのは分かります」
シュアラは、彼の言葉を遮らないよう、タイミングを慎重に測って差し込んだ。
「ですが、この冬までの間に、私はこの砦と三つの村で、『死なせずに済んだはずの人間』の数を、嫌というほど見ました」
トマス。リナ。名前のついてしまった顔が、脳裏の帳簿に勝手に並ぶ。
「ここで『仕方がない』と最初に書いた瞬間、この先の戦いでそれを何度でも使ってしまうと思います。だから最初だけは、意図的に高く設定させてください」
ゲルトはしばらく目を細めていたが、やがて肩をすくめた。
「……いいさ。どうせ現場で足りねえ分は、俺らが泥かぶるだけだ」
ボルグが鼻で笑う。
「最初から『誰か死ぬ』前提で並ばされるよりは、ずっとマシだな」
リオは何も言わなかった。ただ、矢筒の紐から手を離し、拳を握った。
カイが、ようやく口を開く。
「目標、死者ゼロ」
その言葉を反芻するように、ゆっくりと繰り返す。
「そのために必要なことは全部やる。兵を動かすのは俺の仕事だ。……お前は、動かすべき場所を全部指させ」
シュアラは、目を瞬かせた。
ほんの一瞬、返事の仕方を忘れた。
代わりに、手が先に動いた。机の端に置いていた自分の手帳を開き、「初戦準備(仮)」と書かれた見出しの下に、新しい行を作る。
『目標:砦側死者ゼロ(暫定)』
インクがじわりと紙に染みる。その下に、矢印を一本引き、今日の軍議で決まった最低限の条件を書き連ねた。
東への街道、二つの「噛ませどころ」。村と砦に残す人数。リオの配置。工兵の作業量。兵の交代時間。
書きながら、ふと視線を感じた。
顔を上げると、扉の近くで立っている若い兵が、こちらを見ていた。伝令役として廊下に控えていたはずが、いつのまにか半歩、部屋の中に踏み込んでいる。
「……何か?」
問うと、彼は慌てて背筋を伸ばした。
「い、いえ。その……」
言いかけて、視線をカイとシュアラの間で泳がせる。
「団長と文官殿が、同じ板の上で喋ってるの、初めてちゃんと見たなと思って」
言ってから、自分で言葉のまずさに気づいたらしく、真っ赤になる。
ゲルトがニヤリとする。
「いつもは別々に怒鳴ってるからな」
「怒鳴ってはいません」
シュアラは反射的に否定し、それから少しだけ口元を緩めた。
カイも、小さく鼻を鳴らす。
「聞いたか、文官」
「何をですか」
「お前と俺で、頭一つ分ってとこだとよ」
そう言って、彼は机の上の砦の石と、シュアラの手帳を交互に指先で叩いた。
「牙が勝手に走らねえように、ちゃんと手綱握っとけよ、相棒」
相棒、という単語が、耳の奥で鈍く跳ねた。
共犯者、と言い換えてもいい。
この冬の間に、帝国の外れで勝手に始めた「試験国家」のゲーム。その盤面の上で、二人して帝都にも小領主にも内緒の賭けをしているのだとしたら――その呼び方は、あながち間違いではないのかもしれない。
シュアラは、手帳の余白に小さく一行だけ書き足した。
『脳と牙を一つに束ねること』
文字の形が、いつもよりわずかに歪んだ。
インクが乾くのを待たずに手帳を閉じる。
「では、詳細な作業案を今夜中にまとめます」
そう告げて、彼女は頭を下げた。
「明日から、砦全体を巻き込んだ、『第四ゲーム』の準備を始めましょう」
冬の夕方の光が、窓の外で完全に色を失った。
会議室の中に残っているのは、蝋燭の小さな火と、紙と石と、人間の体温だけだった。
1
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
王子、おひとり様で残りの人生をお楽しみください!
ちゃっぴー
恋愛
「ラーニャ、貴様との婚約を破棄する!」
卒業パーティーの真っ最中、ナルシストな第一王子ウィルフレッドに身に覚えのない罪で断罪された公爵令嬢ラーニャ。しかし、彼女はショックを受けるどころか、優雅に微笑んで拍手を送った。
なぜなら、ラーニャはとっくに王子の無能さに愛想を尽かし、この日のために完璧な「撤退準備」を進めていたからだ。
お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました
夏見ナイ
恋愛
伯爵令嬢リリアーナは、強大すぎる聖女の力を隠し「地味で無能」と虐げられてきた。婚約者の第二王子からも疎まれ、ついに夜会で「お前のような地味な女は不要だ!」と衆人の前で婚約破棄を突きつけられる。
全てを失い、あてもなく国を出た彼女が森で出会ったのは、邪悪な呪いに蝕まれ死にかけていた一人の美しい男性。彼こそが隣国エルミート帝国が誇る「氷の皇子」アシュレイだった。
持て余していた聖女の力で彼を救ったリリアーナは、「お前の力がいる」と帝国へ迎えられる。クールで無愛想なはずの皇子様が、なぜか私にだけは不器用な優しさを見せてきて、次第にその愛は甘く重い執着へと変わっていき……?
これは、不要とされた令嬢が、最高の愛を見つけて世界で一番幸せになる物語。
『外見しか見なかったあなたへ。私はもう、選ぶ側です』
鷹 綾
恋愛
「お前のようなガキは嫌いだ」
幼く見える容姿を理由に、婚約者ライオネルから一方的に婚約を破棄された
公爵令嬢シルフィーネ・エルフィンベルク。
その夜、嫉妬に狂った伯爵令嬢に突き落とされ、
彼女は一年もの間、意識不明の重体に陥る――。
目を覚ました彼女は、大人びた美貌を手に入れていた。
だが、中身は何ひとつ変わっていない。
にもかかわらず、
かつて彼女を「幼すぎる」と切り捨てた元婚約者は態度を一変させ、
「やり直したい」とすり寄ってくる。
「見かけが変わっても、中身は同じです。
それでもあなたは、私の外見しか見ていなかったのですね?」
静かにそう告げ、シルフィーネは過去を見限る。
やがて彼女に興味を示したのは、
隣国ノルディアの王太子エドワルド。
彼が見ていたのは、美貌ではなく――
対話し、考え、異論を述べる彼女の“在り方”だった。
これは、
外見で価値を決められた令嬢が、
「選ばれる人生」をやめ、
自分の意思で未来を選び直す物語。
静かなざまぁと、
対等な関係から始まる大人の恋。
そして――
自分の人生を、自分の言葉で生きるための物語。
---
勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる
千環
恋愛
第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。
なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる