35 / 50
35 ーご褒美ー
しおりを挟む
「大雑把な手はマルディンだから分かりやすいよ。リングの攻撃はもっと、あり得ないものだからね。リングに比べればかわいいものだ。今回はさすがに派手だけど」
ティオはため息交じりに言った。今回の嫌がらせは中々面倒だと笑って見せたが、お付きの男達の表情を見ている限り、本当に困っているのだろう。
急成長する植物は根が浅い。けれどコメドキアは壁にすらはびこる面倒な草だ。幾ら表面上草を抜いても、壁の小さな穴に根が残っていればそこからまたはびこる。
完全に根絶やしにするには、燃やすか薬をまくかしない。
城の薬師には同情する。全てを消すのはロンもきつい。
「それに第二王子が弱り切って、リングが何度も呼ばれてるんだよねー。王子二人とも災難ばっかりだよ」
「第二王子?」
「オグニ第二王子。マルディンに薬を盛られて今は操り人形だ。 薬を盛りすぎたせいで容態が良くないらしい。リングを呼んで延命させるつもりだろう。第一王子が死ぬ前に第二王子に死なれたら、マルディンの権力も終わりだからな」
第二王子はマルディンの手中だ。
薬を飲ませて操り人形とは、もう薬師とは言えない。マルディンはやはり母親とは相入れない薬師なのだ。
「オグニ様は元々精神の弱い方だ。薬も良く効くんだろう。強力な暗示をかけられて、殺されることばかり口にしていたらしいが、とうとう病に伏されたんだな」
シェインは呆れるように言った。ティオも困ったように言っているが、そこまで重要に思っていないように聞こえた。死のうが死ぬまいが、マルディンが出てくることを考えればどちらでも構わないかのようだ。
「淡白だね。第二王子は死んでもいいの?」
素朴な疑問だ。操られている第二王子を助けようとはしないのだろうか。
その言葉にティオが微かに表情を歪めた。
疑問に思った時には消えていた。いつもの嘘くさい笑顔が表れて、わざとらしく髪をかき上げる。
「第二王子はねー、元々いいこちゃんでねー。でもいいこちゃんすぎて言われたことを何でも疑わずに受けとっちゃうのよ」
ティオは言う。それがどれだけ愚かなことかと。
「マルディンには権力があって、どちらの王子も奴の手の中だった。けれど大人になれば分別がつくものでしょ?マルディンがおかしいと気づくのも時間はかからないはずなのに、第二王子はいつまでもマルディンを信じてたんだよ。わかりやすく懐いて、奴の言うことは全て正しいのだと思っていた。途中まではね」
ティオは含んだ。そこが薬師の力なのだと。
王は既にマルディンの手にかかり、病がち。薬を盛られたと気づく頃には第二王子が懐いている。それを伝えても第二王子は頑として信じなかったが、王が倒れた頃にやっとおかしいと感じはじめた。
「素直ってのはねえ、時折とても邪魔になる。第二王子はね、マルディンに長く懐いていたせいで、疑いの心を持てなかったんだ。けれど、病がちの王が極端に悪くなった頃、やっと変だと気付いたんだよ。それが第二王子の顔に出る頃にはもう、本人がマルディンの薬漬けだったわけだ」
薬を盛る。
言うことを聞かせるために催眠の類の薬を使ったか、大人しくさせるために体を弱らせる薬を飲まされ続けていたか。どちらかかもしれない。
「第一王子は助けなかったの?気づいていたんでしょう?」
「気づいても、助けられないんだよ。側にマルディンがいる。奴を信じるなと言っても第二王子は聞かない。食事に薬を混ぜられ続けても、それを止めることはできない。なぜなら第二王子の周りは全てマルディンの手下で固められていて、本人が嫌がらない限りどうにもできないからだ」
それを、愚かだと言うのだろうか。
無理にでも手を引けば助けられるかもしれないのに。
素直であることを悪だと言われては、第二王子もやるせないだろう。それでも誰かが助けを出せば、そこから逃げられたのではないのだろうか。
「ねえ、ロンちゃん。全てを助けられればいいけれど、助けられないこともあるんだよ?それは別に恥ではないし、罪ではない。仕方のないことだったんだ」
ティオはまとめた。確かに全てを助けられないことはある。ロンにだってそれは同じだ。自分は母親を助けられず、母親の犠牲の前で背を向けて逃げた。仕方のないことだったと言われればそうだっただろう。
けれど、と思う。
「助けたいなら、諦めなくていいんじゃないの?今も生きているなら、まだ助けることはできるでしょう?今の話を聞いてると、もうどうでもいいみたいに聞こえる」
ティオは一瞬眉根を寄せた。
それが何を思ってさせたのか分からなかった。いつも通りの嘘くさい笑顔は、そうだね。の言葉と共にいて、話をそれ以上膨らませなかったからだ。
話がずれたと、ティオは先程の話に戻す。
第二王子に死なれる前に、マルディンが第一王子を殺そうとするかもしれないと言う話だ。
「パンドラがマルディンに渡らない今、第二王子が危険と言うことは、第一王子も更に危険にさらされるかもってことなのよ。だから、城は限界体制」
第二王子をたてて裏から国を牛耳る。パンドラの力を使用すれば恐怖政治となるかもしれない。しかしそのパンドラも手元になく、更に第二王子が病に伏している。死にそうな第二王子を延命して尚不可能ならば、第二王子が死ぬ前に第一王子を殺してしまおうと言う、何とも短絡な話だった。
マルディンは国を手に入れられれば、他はどうでもいいのだろう。
古来そのように手にした栄光など長続きしないものを。
「そ、ゆーわけでロンちゃんには色々お世話になり、これからもなるのでご褒美をね」
ロンはぎくりとした。ご褒美なんてものティオから貰うなんてお断りだ。
言葉に出さずロンは遠慮こうむった。お断りしますと首を横に振って拒否したが、ぎゅっと握られた手の中に何かが入った。
「ご褒美。シェイン、適度な時によろしくね」
手の中にあるのは銅色の鍵だ。
ティオ達はそのまま帰宅し、ご褒美である鍵が残った。
ティオはため息交じりに言った。今回の嫌がらせは中々面倒だと笑って見せたが、お付きの男達の表情を見ている限り、本当に困っているのだろう。
急成長する植物は根が浅い。けれどコメドキアは壁にすらはびこる面倒な草だ。幾ら表面上草を抜いても、壁の小さな穴に根が残っていればそこからまたはびこる。
完全に根絶やしにするには、燃やすか薬をまくかしない。
城の薬師には同情する。全てを消すのはロンもきつい。
「それに第二王子が弱り切って、リングが何度も呼ばれてるんだよねー。王子二人とも災難ばっかりだよ」
「第二王子?」
「オグニ第二王子。マルディンに薬を盛られて今は操り人形だ。 薬を盛りすぎたせいで容態が良くないらしい。リングを呼んで延命させるつもりだろう。第一王子が死ぬ前に第二王子に死なれたら、マルディンの権力も終わりだからな」
第二王子はマルディンの手中だ。
薬を飲ませて操り人形とは、もう薬師とは言えない。マルディンはやはり母親とは相入れない薬師なのだ。
「オグニ様は元々精神の弱い方だ。薬も良く効くんだろう。強力な暗示をかけられて、殺されることばかり口にしていたらしいが、とうとう病に伏されたんだな」
シェインは呆れるように言った。ティオも困ったように言っているが、そこまで重要に思っていないように聞こえた。死のうが死ぬまいが、マルディンが出てくることを考えればどちらでも構わないかのようだ。
「淡白だね。第二王子は死んでもいいの?」
素朴な疑問だ。操られている第二王子を助けようとはしないのだろうか。
その言葉にティオが微かに表情を歪めた。
疑問に思った時には消えていた。いつもの嘘くさい笑顔が表れて、わざとらしく髪をかき上げる。
「第二王子はねー、元々いいこちゃんでねー。でもいいこちゃんすぎて言われたことを何でも疑わずに受けとっちゃうのよ」
ティオは言う。それがどれだけ愚かなことかと。
「マルディンには権力があって、どちらの王子も奴の手の中だった。けれど大人になれば分別がつくものでしょ?マルディンがおかしいと気づくのも時間はかからないはずなのに、第二王子はいつまでもマルディンを信じてたんだよ。わかりやすく懐いて、奴の言うことは全て正しいのだと思っていた。途中まではね」
ティオは含んだ。そこが薬師の力なのだと。
王は既にマルディンの手にかかり、病がち。薬を盛られたと気づく頃には第二王子が懐いている。それを伝えても第二王子は頑として信じなかったが、王が倒れた頃にやっとおかしいと感じはじめた。
「素直ってのはねえ、時折とても邪魔になる。第二王子はね、マルディンに長く懐いていたせいで、疑いの心を持てなかったんだ。けれど、病がちの王が極端に悪くなった頃、やっと変だと気付いたんだよ。それが第二王子の顔に出る頃にはもう、本人がマルディンの薬漬けだったわけだ」
薬を盛る。
言うことを聞かせるために催眠の類の薬を使ったか、大人しくさせるために体を弱らせる薬を飲まされ続けていたか。どちらかかもしれない。
「第一王子は助けなかったの?気づいていたんでしょう?」
「気づいても、助けられないんだよ。側にマルディンがいる。奴を信じるなと言っても第二王子は聞かない。食事に薬を混ぜられ続けても、それを止めることはできない。なぜなら第二王子の周りは全てマルディンの手下で固められていて、本人が嫌がらない限りどうにもできないからだ」
それを、愚かだと言うのだろうか。
無理にでも手を引けば助けられるかもしれないのに。
素直であることを悪だと言われては、第二王子もやるせないだろう。それでも誰かが助けを出せば、そこから逃げられたのではないのだろうか。
「ねえ、ロンちゃん。全てを助けられればいいけれど、助けられないこともあるんだよ?それは別に恥ではないし、罪ではない。仕方のないことだったんだ」
ティオはまとめた。確かに全てを助けられないことはある。ロンにだってそれは同じだ。自分は母親を助けられず、母親の犠牲の前で背を向けて逃げた。仕方のないことだったと言われればそうだっただろう。
けれど、と思う。
「助けたいなら、諦めなくていいんじゃないの?今も生きているなら、まだ助けることはできるでしょう?今の話を聞いてると、もうどうでもいいみたいに聞こえる」
ティオは一瞬眉根を寄せた。
それが何を思ってさせたのか分からなかった。いつも通りの嘘くさい笑顔は、そうだね。の言葉と共にいて、話をそれ以上膨らませなかったからだ。
話がずれたと、ティオは先程の話に戻す。
第二王子に死なれる前に、マルディンが第一王子を殺そうとするかもしれないと言う話だ。
「パンドラがマルディンに渡らない今、第二王子が危険と言うことは、第一王子も更に危険にさらされるかもってことなのよ。だから、城は限界体制」
第二王子をたてて裏から国を牛耳る。パンドラの力を使用すれば恐怖政治となるかもしれない。しかしそのパンドラも手元になく、更に第二王子が病に伏している。死にそうな第二王子を延命して尚不可能ならば、第二王子が死ぬ前に第一王子を殺してしまおうと言う、何とも短絡な話だった。
マルディンは国を手に入れられれば、他はどうでもいいのだろう。
古来そのように手にした栄光など長続きしないものを。
「そ、ゆーわけでロンちゃんには色々お世話になり、これからもなるのでご褒美をね」
ロンはぎくりとした。ご褒美なんてものティオから貰うなんてお断りだ。
言葉に出さずロンは遠慮こうむった。お断りしますと首を横に振って拒否したが、ぎゅっと握られた手の中に何かが入った。
「ご褒美。シェイン、適度な時によろしくね」
手の中にあるのは銅色の鍵だ。
ティオ達はそのまま帰宅し、ご褒美である鍵が残った。
21
あなたにおすすめの小説
拝啓、聖騎士様。もうすぐ貴方を忘れるから離縁しましょう
花虎
恋愛
「はぁ?嫁に逃げられたぁ!?」
世界を救った召喚聖女リナリアと彼女を守り抜いた聖騎士フィグルドは世界に祝福されて結婚した。その一年後、突然リナリアは離縁状を置いてフィグルドの元を去った。
両想いで幸せだと思っていたフィグルドは行方不明になった妻を探し出すが、再会した彼女は、自分に関する記憶を全て、失っていた。
記憶を取り戻させたいフィグルドに対して、リナリアは困惑する。
「……でも、私は貴方のことを忘れたくて忘れたのかもしれないですよ?」
「もし君が、俺のことを忘れたくて忘れたとしても……、記憶を取り戻せなくても……俺は君に心を捧げている」
再び愛する彼女と共に生きるため、記憶の試練が始まる――――。
夫のことだけ記憶を失った妻の聖女リナリア(21)×両想いだと思い込んでいた夫の聖騎士フィグルド(24)のすれ違い追いかけっこラブコメ
離婚を望む悪女は、冷酷夫の執愛から逃げられない
柴田はつみ
恋愛
目が覚めた瞬間、そこは自分が読み終えたばかりの恋愛小説の世界だった——しかも転生したのは、後に夫カルロスに殺される悪女・アイリス。
バッドエンドを避けるため、アイリスは結婚早々に離婚を申し出る。だが、冷たく突き放すカルロスの真意は読めず、街では彼と寄り添う美貌の令嬢カミラの姿が頻繁に目撃され、噂は瞬く間に広まる。
カミラは男心を弄ぶ意地悪な女。わざと二人の関係を深い仲であるかのように吹聴し、アイリスの心をかき乱す。
そんな中、幼馴染クリスが現れ、アイリスを庇い続ける。だがその優しさは、カルロスの嫉妬と誤解を一層深めていき……。
愛しているのに素直になれない夫と、彼を信じられない妻。三角関係が燃え上がる中、アイリスは自分の運命を書き換えるため、最後の選択を迫られる。
完結·異世界転生したらアザラシ? でした〜白いモフモフでイケメン騎士たちに拾われましたが、前世の知識で医療チートしています〜
禅
恋愛
ネットでアザラシを見ることが癒しだった主人公。
だが、気が付くと知らない場所で、自分がアザラシになっていた。
自分が誰か分からず、記憶が曖昧な中、個性的なイケメン騎士たちに拾われる。
しかし、騎士たちは冬の女神の愛おし子を探している最中で……
※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿しています
※完結まで毎日投稿します
二度目の初恋は、穏やかな伯爵と
柴田はつみ
恋愛
交通事故に遭い、気がつけば18歳のアランと出会う前の自分に戻っていた伯爵令嬢リーシャン。
冷酷で傲慢な伯爵アランとの不和な結婚生活を経験した彼女は、今度こそ彼とは関わらないと固く誓う。しかし運命のいたずらか、リーシャンは再びアランと出会ってしまう。
【完結/番外追加】サリシャの光 〜憧れの先へ〜
ねるねわかば
恋愛
彼女は進む。過去に囚われた者たちを残して──
大商会の娘サーシャ。
子どもの頃から家業に関わる彼女は、従妹のメリンダと共に商会の看板娘として注目を集めていた。
華々しい活躍の裏で、着実に努力を重ねて夢へと向かうサーシャ。しかし時には心ないことを言う者もいた。
そんな彼女が初めて抱いた淡い恋。
けれどその想いは、メリンダの涙と少年の軽率な一言であっさり踏みにじられてしまう。
サーシャはメリンダたちとは距離をおき、商会の仕事からも離れる。
新たな場所で任される仕事、そして新たな出会い。どこにあっても、彼女が夢を諦めることはない。
一方、光に囚われた者たちは後悔と執着を募らせていき──
夢を諦めない少女が、もがきながら光を紡いでいく軌跡。
※前作「ルースの祈り」と同じ世界観で登場人物も一部かぶりますが、単体でお読みいただけます。
※作中の仕事や制作物、小物の知識などは全てフィクションです。史実や事実に基づいていないことをご理解ください。
噂の聖女と国王陛下 ―婚約破棄を願った令嬢は、溺愛される
柴田はつみ
恋愛
幼い頃から共に育った国王アランは、私にとって憧れであり、唯一の婚約者だった。
だが、最近になって「陛下は聖女殿と親しいらしい」という噂が宮廷中に広まる。
聖女は誰もが認める美しい女性で、陛下の隣に立つ姿は絵のようにお似合い――私など必要ないのではないか。
胸を締め付ける不安に耐えかねた私は、ついにアランへ婚約破棄を申し出る。
「……私では、陛下の隣に立つ資格がありません」
けれど、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「お前は俺の妻になる。誰が何と言おうと、それは変わらない」
噂の裏に隠された真実、幼馴染が密かに抱き続けていた深い愛情――
一度手放そうとした運命の絆は、より強く絡み合い、私を逃がさなくなる。
学生時代、私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私が実は本物の聖女で、いじめていた女は災厄を呼ぶ魔女でした。
さら
恋愛
いじめていた女と一緒に異世界召喚された私。
聖女として選ばれたのは彼女で、私は無能扱いされ追放された。
だが、辺境の村で暮らす中で気づく。
私の力は奇跡を起こすものではなく、
壊れた世界を“元に戻す”本物の聖女の力だった。
一方、聖女として祭り上げられた彼女は、
人々の期待に応え続けるうち、
世界を歪め、災厄を呼ぶ魔女へと変わっていく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる