54 / 103
27③ ー混乱ー
フィオナは無心で生地を練っていた。
ねりねりねりねり。ねりねりねりねり。
「奥様。それ以上練ってしまうと、生地に粘りが出てしまうのでは?」
「はっ! そうね! さっくり作るつもりだったのに!」
本日は天気もいいので、外でゆったりお茶でもしようかと朝からお菓子作りに励んでいたのだが、心ここにあらずと混ぜすぎてしまった。
シェフのポールに指摘されて急いで練る手を止めると、フィオナは肩を揺らすように息を吐いた。
最近のクラウディオの行動に、なんだか振り回されている気がする。
(今すぐ屋敷を出ていくことくらいわけないんだけれど、モーリスからも両親のことは気にしないようにって、言われちゃったのよね)
クラウディオと仲が悪いのだと見せた方が良いと思うのだが。
今はとりあえず気にしなくて良いとのことで、手紙の返事もどうしたのか分からない。
甘く香ばしい香りが漂ってきて、フィオナはもう一度息を吐いた。
「お祭りがあるの?」
外で出来たばかりのお菓子を皆で食べていると、そんな話をメイドの一人がし始めた。
今日は街で祭りがあり、楽しみにしているそうだ。既に街は賑わっているのだろう。
「じゃあ、みんな夜は出掛けるのね?」
「いえ、お屋敷のことが……」
どうやら行ける者と行けない者がいるようだ。時間によっては祭りが終わってしまうのだろう。
「急ぎの仕事でないならば、みんなで行ってきたら? そうね、私とアロイスになにかお土産を買ってきてくれる?」
「奥様あ!」
「夜は花火もあるんです。奥様もご一緒にいかがですか?」
「私はいいわ。夜はアロイスを連れて行けないから。行けない人たちにもお土産を買ってきて」
「ありがとうございます!!」
「リディも行ってきたら。たまにはいいでしょう」
「ですが……」
「大丈夫よ。私はゆっくりしているから」
(お祭りかあ。いいわねえ。私行ったことないのよね)
そんな人混みに行ってどうなるか分からない。セレスティーヌのようにメイドがついてくるわけでもないのだから、外に出て体調が悪くなったら屋敷に帰れない。
セレスティーヌの体であれば問題ないだろうが、アロイスも連れて行けないのだし、屋敷でのんびりしている方が良いだろう。アロイスはその時間就寝である。
(賑わいのあるところは苦手だしね)
彼女たちは相談しながら今日の仕事を早めに切り上げて、祭りに行く算段をしていた。
「本当に、大丈夫ですか?」
「こんな時間に、何もないですよ。行ってらっしゃい」
リディは心配そうな顔をしつつも、久し振りの祭りだといって、他のメイドたちと出掛けていった。
部屋からは、その賑やかさが分かるような街の光が良く見えた。
あの光を見ていると、ブルイエ家を思い出す。
フィオナの家からも祭りは見えた。窓から見える、町の明かり。賑やかな雰囲気を感じられる、いつもよりもずっと明るい光。
この屋敷からはブルイエ家からよりも多くの光が見える。街の規模が違うので、光の多さも比べものにならない。
けれど周囲はとても静かで、あの光の中の喧騒が想像できなかった。
「……庭にお散歩行こうかな」
光を見ていると、なんだか寂しくなる。一人庭に出てみれば、涼しげな風が爽やかに吹いて、セレスティーヌの髪がゆらめいた。
「気持ちいー」
夜外に出るだけで開放感がある。フィオナは両手を広げて伸びをした。静かな場所の方が慣れているせいか、気が楽になる気がする。
一人ではないことが増えて、それはそれで楽しいのだが、一人になればその時を思い出した。
庭園の森の方を見遣ると、どうしてもブルイエ家の森が思い浮かぶ。木々に囲まれた屋敷は、風が吹けば葉が揺れる音や、枝が擦れる音ばかりが聞こえた。
「うわっ」
急に突風が吹いた。梢が絡まるように揺れて、葉や枝が大きな怪物のような動きをする。
風の音と、時折見える光とが混じり、フィオナは目を眇めた。
(あの日、私はベッドで眠り、風の音に気付いて外を見て、……光が)
そう思った瞬間、ずきりと頭が痛んだ。うずくまった時、すぐに誰かの声が届く。
「セレスティーヌ! どうかされたんですか!?」
「……旦那様。いえ、なんでもありません」
一瞬、何か思い出しかけたが、すぐにそれは消えてしまい、フィオナは頭を抑えながらゆっくりと立ち上がる。痛みはすぐになくなったが、クラウディオが気にするように手を差し伸べてくれた。
「ありがとうございます。……どうされたんですか。こんなところで、散歩ですか?」
夕食も過ぎた頃。普段クラウディオがこの時間何をしているのか知らないが、食後の散歩でもしていたのだろうか。少々、暗い方への散歩だが。
「その、外に行ったのが見えたので。……メイドはどこに? 一緒ではないのですか?」
「みんなでお祭りに行きました」
「祭り? あなたを一人にして??」
クラウディオは尖った声を出した。少しばかり不機嫌な声だ。仕事はどうしたのかと言いたいのだろう。
先にクラウディオに許可を取るべきだったか。
「祭りに行ってお土産を買ってきて欲しいと。私の命令です」
「そ、そうですか……」
途端肩を下ろしてしゅんとする。怒られた子供みたいな動きだ。
(最近、こんな姿ばっかり見てる気がするわ……)
こちらの対応に困っているというより、こちらの言葉に反応して一喜一憂しているようだ。
(アロイスがお菓子食べ過ぎて怒られた時に似てない?)
そう思うと笑いそうになる。クラウディオは勘違いをしました。と珍しく理由を言って、それならば良いと怒りそうになったことを謝った。
そんなことを言うのも珍しい。フィオナがまじまじ見ていると、クラウディオは恥ずかしそうに頬を染めて顔を背けた。
(あれ? なんか……)
その時、ドンと上空で大きな音が聞こえた。花火だ。
「わー。綺麗ですね」
大輪が咲くように、空に描かれる。彩りは美しく、闇にはっきりと映えて、なんとも雅だ。高いところで見たいものである。
「でしたら、こちらに」
クラウディオはそれならばとフィオナを促す。お屋敷からよく見える場所があるのか、フィオナが入ったことのない建物に案内してくれた。
公爵邸は広すぎて知らぬ場所が多い。案内されたのは物見塔のような高い場所で、美しい部屋とは違い屋根裏部屋のようなところだった。
「少し、埃っぽいですが……」
「平気です。すごく高い場所ですね。庭も一望できるし、街がよく見えます」
結構な数の階段を登り少々疲労があったが、軋んだ窓を開けば街がよく見渡せる。川でもあってそこから花火を打ち上げているのか、街の向こうの暗い場所から打ち上がっているのも見えた。
「素敵―。なにも遮るものがないから、よく見えますね!」
花火が近く見えるほどで、音も大きく聞こえる。フィオナは大声を出してクラウディオに礼を言いつつ、花火を見上げた。
こんなに間近で花火を見たことがない。いつもは木々の隙間からのぞいて見える小さな花を眺めているくらいだった。遠目の花火は音もあまり聞こえず、隔離された場所にいるような、遠い世界に思える風景だった。
美しさに見惚れていると、準備で休憩に入ったのか、花火の音が止む。風の音だけが耳に入ると、クラウディオがこちらを見つめているのに気付いた。
「ご両親の件ですが、屋敷を出て行く必要はありません」
面と向かい、クラウディオははっきりと口にした。なにかに怒ったかのように言うのではなく、凛として静かな声音だった。
ねりねりねりねり。ねりねりねりねり。
「奥様。それ以上練ってしまうと、生地に粘りが出てしまうのでは?」
「はっ! そうね! さっくり作るつもりだったのに!」
本日は天気もいいので、外でゆったりお茶でもしようかと朝からお菓子作りに励んでいたのだが、心ここにあらずと混ぜすぎてしまった。
シェフのポールに指摘されて急いで練る手を止めると、フィオナは肩を揺らすように息を吐いた。
最近のクラウディオの行動に、なんだか振り回されている気がする。
(今すぐ屋敷を出ていくことくらいわけないんだけれど、モーリスからも両親のことは気にしないようにって、言われちゃったのよね)
クラウディオと仲が悪いのだと見せた方が良いと思うのだが。
今はとりあえず気にしなくて良いとのことで、手紙の返事もどうしたのか分からない。
甘く香ばしい香りが漂ってきて、フィオナはもう一度息を吐いた。
「お祭りがあるの?」
外で出来たばかりのお菓子を皆で食べていると、そんな話をメイドの一人がし始めた。
今日は街で祭りがあり、楽しみにしているそうだ。既に街は賑わっているのだろう。
「じゃあ、みんな夜は出掛けるのね?」
「いえ、お屋敷のことが……」
どうやら行ける者と行けない者がいるようだ。時間によっては祭りが終わってしまうのだろう。
「急ぎの仕事でないならば、みんなで行ってきたら? そうね、私とアロイスになにかお土産を買ってきてくれる?」
「奥様あ!」
「夜は花火もあるんです。奥様もご一緒にいかがですか?」
「私はいいわ。夜はアロイスを連れて行けないから。行けない人たちにもお土産を買ってきて」
「ありがとうございます!!」
「リディも行ってきたら。たまにはいいでしょう」
「ですが……」
「大丈夫よ。私はゆっくりしているから」
(お祭りかあ。いいわねえ。私行ったことないのよね)
そんな人混みに行ってどうなるか分からない。セレスティーヌのようにメイドがついてくるわけでもないのだから、外に出て体調が悪くなったら屋敷に帰れない。
セレスティーヌの体であれば問題ないだろうが、アロイスも連れて行けないのだし、屋敷でのんびりしている方が良いだろう。アロイスはその時間就寝である。
(賑わいのあるところは苦手だしね)
彼女たちは相談しながら今日の仕事を早めに切り上げて、祭りに行く算段をしていた。
「本当に、大丈夫ですか?」
「こんな時間に、何もないですよ。行ってらっしゃい」
リディは心配そうな顔をしつつも、久し振りの祭りだといって、他のメイドたちと出掛けていった。
部屋からは、その賑やかさが分かるような街の光が良く見えた。
あの光を見ていると、ブルイエ家を思い出す。
フィオナの家からも祭りは見えた。窓から見える、町の明かり。賑やかな雰囲気を感じられる、いつもよりもずっと明るい光。
この屋敷からはブルイエ家からよりも多くの光が見える。街の規模が違うので、光の多さも比べものにならない。
けれど周囲はとても静かで、あの光の中の喧騒が想像できなかった。
「……庭にお散歩行こうかな」
光を見ていると、なんだか寂しくなる。一人庭に出てみれば、涼しげな風が爽やかに吹いて、セレスティーヌの髪がゆらめいた。
「気持ちいー」
夜外に出るだけで開放感がある。フィオナは両手を広げて伸びをした。静かな場所の方が慣れているせいか、気が楽になる気がする。
一人ではないことが増えて、それはそれで楽しいのだが、一人になればその時を思い出した。
庭園の森の方を見遣ると、どうしてもブルイエ家の森が思い浮かぶ。木々に囲まれた屋敷は、風が吹けば葉が揺れる音や、枝が擦れる音ばかりが聞こえた。
「うわっ」
急に突風が吹いた。梢が絡まるように揺れて、葉や枝が大きな怪物のような動きをする。
風の音と、時折見える光とが混じり、フィオナは目を眇めた。
(あの日、私はベッドで眠り、風の音に気付いて外を見て、……光が)
そう思った瞬間、ずきりと頭が痛んだ。うずくまった時、すぐに誰かの声が届く。
「セレスティーヌ! どうかされたんですか!?」
「……旦那様。いえ、なんでもありません」
一瞬、何か思い出しかけたが、すぐにそれは消えてしまい、フィオナは頭を抑えながらゆっくりと立ち上がる。痛みはすぐになくなったが、クラウディオが気にするように手を差し伸べてくれた。
「ありがとうございます。……どうされたんですか。こんなところで、散歩ですか?」
夕食も過ぎた頃。普段クラウディオがこの時間何をしているのか知らないが、食後の散歩でもしていたのだろうか。少々、暗い方への散歩だが。
「その、外に行ったのが見えたので。……メイドはどこに? 一緒ではないのですか?」
「みんなでお祭りに行きました」
「祭り? あなたを一人にして??」
クラウディオは尖った声を出した。少しばかり不機嫌な声だ。仕事はどうしたのかと言いたいのだろう。
先にクラウディオに許可を取るべきだったか。
「祭りに行ってお土産を買ってきて欲しいと。私の命令です」
「そ、そうですか……」
途端肩を下ろしてしゅんとする。怒られた子供みたいな動きだ。
(最近、こんな姿ばっかり見てる気がするわ……)
こちらの対応に困っているというより、こちらの言葉に反応して一喜一憂しているようだ。
(アロイスがお菓子食べ過ぎて怒られた時に似てない?)
そう思うと笑いそうになる。クラウディオは勘違いをしました。と珍しく理由を言って、それならば良いと怒りそうになったことを謝った。
そんなことを言うのも珍しい。フィオナがまじまじ見ていると、クラウディオは恥ずかしそうに頬を染めて顔を背けた。
(あれ? なんか……)
その時、ドンと上空で大きな音が聞こえた。花火だ。
「わー。綺麗ですね」
大輪が咲くように、空に描かれる。彩りは美しく、闇にはっきりと映えて、なんとも雅だ。高いところで見たいものである。
「でしたら、こちらに」
クラウディオはそれならばとフィオナを促す。お屋敷からよく見える場所があるのか、フィオナが入ったことのない建物に案内してくれた。
公爵邸は広すぎて知らぬ場所が多い。案内されたのは物見塔のような高い場所で、美しい部屋とは違い屋根裏部屋のようなところだった。
「少し、埃っぽいですが……」
「平気です。すごく高い場所ですね。庭も一望できるし、街がよく見えます」
結構な数の階段を登り少々疲労があったが、軋んだ窓を開けば街がよく見渡せる。川でもあってそこから花火を打ち上げているのか、街の向こうの暗い場所から打ち上がっているのも見えた。
「素敵―。なにも遮るものがないから、よく見えますね!」
花火が近く見えるほどで、音も大きく聞こえる。フィオナは大声を出してクラウディオに礼を言いつつ、花火を見上げた。
こんなに間近で花火を見たことがない。いつもは木々の隙間からのぞいて見える小さな花を眺めているくらいだった。遠目の花火は音もあまり聞こえず、隔離された場所にいるような、遠い世界に思える風景だった。
美しさに見惚れていると、準備で休憩に入ったのか、花火の音が止む。風の音だけが耳に入ると、クラウディオがこちらを見つめているのに気付いた。
「ご両親の件ですが、屋敷を出て行く必要はありません」
面と向かい、クラウディオははっきりと口にした。なにかに怒ったかのように言うのではなく、凛として静かな声音だった。
あなたにおすすめの小説
嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。
しあ
恋愛
目が覚めるとお腹が痛い!
声が出せないくらいの激痛。
この痛み、覚えがある…!
「ルビア様、赤ちゃんに酸素を送るためにゆっくり呼吸をしてください!もうすぐですよ!」
やっぱり!
忘れてたけど、お産の痛みだ!
だけどどうして…?
私はもう子供が産めないからだだったのに…。
そんなことより、赤ちゃんを無事に産まないと!
指示に従ってやっと生まれた赤ちゃんはすごく可愛い。だけど、どう見ても日本人じゃない。
どうやら私は、わがままで嫌われ者の皇后に憑依転生したようです。だけど、赤ちゃんをお世話するのに忙しいので、構ってもらわなくて結構です。
なのに、どうして私を嫌ってる皇帝が部屋に訪れてくるんですか!?しかも毎回イラッとするとこを言ってくるし…。
本当になんなの!?あなたに構っている時間なんてないんですけど!
※視点がちょくちょく変わります。
ガバガバ設定、なんちゃって知識で書いてます。
エールを送って下さりありがとうございました!
突然決められた婚約者は人気者だそうです。押し付けられたに違いないので断ってもらおうと思います。
橘ハルシ
恋愛
ごくごく普通の伯爵令嬢リーディアに、突然、降って湧いた婚約話。相手は、騎士団長の叔父の部下。侍女に聞くと、どうやら社交界で超人気の男性らしい。こんな釣り合わない相手、絶対に叔父が権力を使って、無理強いしたに違いない!
リーディアは相手に遠慮なく断ってくれるよう頼みに騎士団へ乗り込むが、両親も叔父も相手のことを教えてくれなかったため、全く知らない相手を一人で探す羽目になる。
怪しい変装をして、騎士団内をうろついていたリーディアは一人の青年と出会い、そのまま一緒に婚約者候補を探すことに。
しかしその青年といるうちに、リーディアは彼に好意を抱いてしまう。
全21話(本編20話+番外編1話)です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚
きぬがやあきら
恋愛
「私に愛まで望むな。褒賞に王子を求めておいて、強欲が過ぎると言っている」
新婚初夜に訪れた寝室で、レオノールはクラウディオ王子に白い結婚を宣言される。
それもそのはず。
2人の間に愛はないーーどころか、この結婚はレオノールが魔王討伐の褒美にと国王に要求したものだった。
でも、王子を望んだレオノールにもそれなりの理由がある。
美しく気高いクラウディオ王子を欲しいと願った気持ちは本物だ。
だからいくら冷遇されようが、嫌がらせを受けようが心は揺るがない。
どこまでも逞しく、軽薄そうでいて賢い。どこか憎めない魅力を持ったレオノールに、やがてクラウディオの心は……。
すれ違い、拗れる2人に愛は生まれるのか?
焦ったい恋と陰謀+バトルのラブファンタジー。
氷の宰相補佐と押しつけられた厄災の花嫁
瑞原唯子
恋愛
王命により、アイザックはまだ十歳の少女を妻として娶ることになった。
彼女は生後まもなく始末されたはずの『厄災の姫』である。最近になって生存が判明したが、いまさら王家に迎え入れることも始末することもできない——悩んだ末、国王は序列一位のシェフィールド公爵家に押しつけたのだ。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜
しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。
高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。
しかし父は知らないのだ。
ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。
そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。
それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。
けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。
その相手はなんと辺境伯様で——。
なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。
彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。
それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。
天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。
壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。
一度目で黒狼公に討たれた私ですが、二度目の夜はお父様のそばでしか眠れません
師走
恋愛
八歳の冬、リリア・ヴァルグレイは父に殺された。
王国最強の討魔貴族――黒狼公レオンハルト・ヴァルグレイ。
人にも魔にも容赦のないその男は、黒花の災厄に呑まれかけた実の娘を、自らの手で討ったのだ。
けれど次に目を覚ました時、リリアは赤ん坊に戻っていた。
もう二度と、お父様に剣を向けられたくない。
そう願うのに、夜になるとまた黒花の囁きが忍び寄る。甘くやさしいその声は、孤独な心に触れて、静かに破滅へと導こうとする。
そして、その囁きがぴたりと止むのは――世界でいちばん怖いお父様のそばだけだった。
一度目の父は、同じ城で暮らしていても遠い人だった。
リリアを見ない。抱かない。呼びもしない。
そのくせ二度目の父は、相変わらず冷たいまま、なぜか夜ごとリリアを放っておいてくれない。侍女を替え、部屋を守らせ、怯えて眠れない娘を黙って自分の近くへ置いてしまう。
人にはあれほど容赦がないのに、リリアにだけ少しずつおかしくなっていく。
怖い。近づきたくない。
それでも、その腕の中でしか眠れない。
またあの冬が来る。
また同じように、黒花はリリアを呑み込もうとするかもしれない。
今度こそ囁きに負けないために。今度こそ父に剣を抜かせないために。
一度目で父に討たれた娘は、二度目の人生でもっとも恐ろしいその人のそばへ、自分の意志で手を伸ばしていく。
小説家になろう様でも掲載中