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6話 決闘
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6話 決闘
「えっ?」
私は自分の耳を疑いました。いま彼はなんと言ったのでしょう?
「はぁあ?お前まさかフェアリーデに惚れたのか?そんなちんちくりんのどこがいいんだ?顔はまぁまぁだが、その幼児体型だぞ?」
さっきまでお前は俺の婚約者だと言っていた男の言葉ですか?デュークが私をどう思っているのかよく分かりました。
「決闘を受けるのか、受けないのか。早く決めろ。」
さっきの言葉は聞き間違いではなかったようです。どうして私の周りにはこんな男性しかいないのでしょう。
私はつかつかと歩み出ると、座り込んだままのデュークの前に立ち塞がりました。
そして思い切り、奴の頬に平手打ちしてやったのです。
バチンっと我ながら綺麗な音がしました。
「なっなんだお前?!こんなことして許されると思っているのか!」
くるりと向きを変え、今度は大きな騎士の前に立ちました。
「少し屈んでください。」
「?」
「届かないのです。屈んでください。」
素直に腰を曲げ、近づいてきたその怖い顔にも同じように平手打ちをしてやりました。騎士だからなのか、彼の顔は固くてすごく痛かったのをよく覚えています。
彼は叩かれた左頬に手をあて、ぽかんとした顔をしていました。こんな人に少しでもときめいてしまった自分が情けない。
「わたくしの為に怒ってくださったことは感謝しております。しかし、決闘だなんて。私が喜ぶとでも思いましたか?
決闘で勝った方と結婚ですって?馬鹿にするのもいい加減にしてください。私はあなた方の戦利品ですか?物のように扱われて、喜ぶ女がどこにいるんでしょう。」
私たちの様子を伺っていた騎士たちから、息を飲む気配が伝わってきました。
「男の人はいつもそう、僕が守ってあげるよだの、女なんだから男に頼ればいいだの。いい加減にして!
第一、私は貴方の名前すら存じ上げないんですよ?求婚だなんてふざけているとしか思えません!」
こんなに大きな声を出したのは、生まれて初めてかもしれません。もちろん男の人に平手打ちしたのも初めてのことです。
「ちっ違うんだ。ふざけてなんていない。君を馬鹿にしたのが許せなくてだな。発言を撤回させたくて。
求婚したのも、そのっ、決して、怒らせるつもりではっ。」
怖い顔があたふたする様子が情けなくて、すこし笑ってしまいました。
「すまなかった。馬鹿にするつもりなんてない。俺は全部本気で言ったんだ。」
私を見つめる瞳は真剣で、またしても少しだけドキドキしてしまいました。
そのとき、パチパチと場違いな拍手の音が聞こえてきます。
「いやぁ、びっくりしました。コイツに平手打ちする女性がいるなんて信じられない。」
騎士たちの間から現れたアーカス殿下は、なぜかとても楽しそうです。
「アーカス様!この騎士を罰してください!俺に決闘を挑んだあげく、辱しめるようなことを!」
左頬を真っ赤に腫らしたデュークは涙目で訴えます。あれくらいで泣くなんて、弱い男です。
「デューク殿、残念ながらそれは難しいですね。彼は貴方より位が上ですから侮辱にはなりませんし、むしろ決闘を受けなければ貴方が侮辱罪になりかねませんよ?」
「アーカス!やめろ!決闘はもういい!彼女にまた怒られたらどうするんだ!」
殿下へのその気安い言葉遣いに私は唖然としてしまいました。言葉遣いだけでなく、王子様を呼び捨てにするなんて。
「マキシム、いい加減名乗れよ。彼女だって言ってただろう。名前も知らないヤツと結婚なんてできないって。」
マキシム…?待ってください。その名前、聞いたことがあるような。
「フェアリーデ嬢、俺の名はマキシム。マキシム・ロックスフォード。さっきも言ったが、求婚は冗談ではない。どうか真剣に考えてくれないだろうか?」
ロックスフォード。この町で、いいえこの国でその家名を知らない者はきっといないでしょう。並外れた剣術の腕と戦闘能力で王族に仕え、この国を運営する十貴族と同じくらいの力を持つ大貴族。そのご子息がたしかにマキシムという名前だったと記憶しています。
「…マキシム様?」
「そうだ!昨日は名乗らずに立ち去ってすまなかった。君のために素晴らしい獲物を探そうと張り切ってしまって、名前を伝えるのを忘れてしまったんだ。大きな猪だっただろう?明日は鹿がいいか?」
名乗った途端饒舌になった彼の前で、私は後悔に襲われていました。私はなんて方に平手打ちをしてしまったのでしょう。
そんな私たちをアーカス様は面白いものを見るように微笑んでいらっしゃいました。
「えっ?」
私は自分の耳を疑いました。いま彼はなんと言ったのでしょう?
「はぁあ?お前まさかフェアリーデに惚れたのか?そんなちんちくりんのどこがいいんだ?顔はまぁまぁだが、その幼児体型だぞ?」
さっきまでお前は俺の婚約者だと言っていた男の言葉ですか?デュークが私をどう思っているのかよく分かりました。
「決闘を受けるのか、受けないのか。早く決めろ。」
さっきの言葉は聞き間違いではなかったようです。どうして私の周りにはこんな男性しかいないのでしょう。
私はつかつかと歩み出ると、座り込んだままのデュークの前に立ち塞がりました。
そして思い切り、奴の頬に平手打ちしてやったのです。
バチンっと我ながら綺麗な音がしました。
「なっなんだお前?!こんなことして許されると思っているのか!」
くるりと向きを変え、今度は大きな騎士の前に立ちました。
「少し屈んでください。」
「?」
「届かないのです。屈んでください。」
素直に腰を曲げ、近づいてきたその怖い顔にも同じように平手打ちをしてやりました。騎士だからなのか、彼の顔は固くてすごく痛かったのをよく覚えています。
彼は叩かれた左頬に手をあて、ぽかんとした顔をしていました。こんな人に少しでもときめいてしまった自分が情けない。
「わたくしの為に怒ってくださったことは感謝しております。しかし、決闘だなんて。私が喜ぶとでも思いましたか?
決闘で勝った方と結婚ですって?馬鹿にするのもいい加減にしてください。私はあなた方の戦利品ですか?物のように扱われて、喜ぶ女がどこにいるんでしょう。」
私たちの様子を伺っていた騎士たちから、息を飲む気配が伝わってきました。
「男の人はいつもそう、僕が守ってあげるよだの、女なんだから男に頼ればいいだの。いい加減にして!
第一、私は貴方の名前すら存じ上げないんですよ?求婚だなんてふざけているとしか思えません!」
こんなに大きな声を出したのは、生まれて初めてかもしれません。もちろん男の人に平手打ちしたのも初めてのことです。
「ちっ違うんだ。ふざけてなんていない。君を馬鹿にしたのが許せなくてだな。発言を撤回させたくて。
求婚したのも、そのっ、決して、怒らせるつもりではっ。」
怖い顔があたふたする様子が情けなくて、すこし笑ってしまいました。
「すまなかった。馬鹿にするつもりなんてない。俺は全部本気で言ったんだ。」
私を見つめる瞳は真剣で、またしても少しだけドキドキしてしまいました。
そのとき、パチパチと場違いな拍手の音が聞こえてきます。
「いやぁ、びっくりしました。コイツに平手打ちする女性がいるなんて信じられない。」
騎士たちの間から現れたアーカス殿下は、なぜかとても楽しそうです。
「アーカス様!この騎士を罰してください!俺に決闘を挑んだあげく、辱しめるようなことを!」
左頬を真っ赤に腫らしたデュークは涙目で訴えます。あれくらいで泣くなんて、弱い男です。
「デューク殿、残念ながらそれは難しいですね。彼は貴方より位が上ですから侮辱にはなりませんし、むしろ決闘を受けなければ貴方が侮辱罪になりかねませんよ?」
「アーカス!やめろ!決闘はもういい!彼女にまた怒られたらどうするんだ!」
殿下へのその気安い言葉遣いに私は唖然としてしまいました。言葉遣いだけでなく、王子様を呼び捨てにするなんて。
「マキシム、いい加減名乗れよ。彼女だって言ってただろう。名前も知らないヤツと結婚なんてできないって。」
マキシム…?待ってください。その名前、聞いたことがあるような。
「フェアリーデ嬢、俺の名はマキシム。マキシム・ロックスフォード。さっきも言ったが、求婚は冗談ではない。どうか真剣に考えてくれないだろうか?」
ロックスフォード。この町で、いいえこの国でその家名を知らない者はきっといないでしょう。並外れた剣術の腕と戦闘能力で王族に仕え、この国を運営する十貴族と同じくらいの力を持つ大貴族。そのご子息がたしかにマキシムという名前だったと記憶しています。
「…マキシム様?」
「そうだ!昨日は名乗らずに立ち去ってすまなかった。君のために素晴らしい獲物を探そうと張り切ってしまって、名前を伝えるのを忘れてしまったんだ。大きな猪だっただろう?明日は鹿がいいか?」
名乗った途端饒舌になった彼の前で、私は後悔に襲われていました。私はなんて方に平手打ちをしてしまったのでしょう。
そんな私たちをアーカス様は面白いものを見るように微笑んでいらっしゃいました。
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