父に連れられて遥々海を渡った私は、異母姉に不幸をもたらした元凶だったようです

奏千歌

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ステラⅣ

6 ゴミ掃除

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 魔女という邪魔が入ったせいで用事を済ます事ができませんでしたが、今日のところはお姉様にお帰りいただいて、去っていく馬車のお見送りをすると、会議室でジェレミー様よりお話がありました。 

「第二部隊から報告があったよ。麻薬の製造、それから、妙な病気の発生源は、ドルティエル王国が絡んだ同じ組織によるものだよ。いずれその組織の大元を断たなければならないけど、今は事態の打開だね。カティック伯爵家が資金を提供して国内の流通を手引きしたのも困ったものだよ」

 現状の説明です。

 淡々と話が続きます。

「それと、さっき言ってた魔女の置き土産だね。隣国の企みに便乗して、侵攻に対して防衛にあたってる騎士団や警備隊の背後から、時限式で魔物を大量に召喚するみたいだよ」

 ディランさんの顔が浮かびました。

 そんな事したら………

「伯爵家は他にも色々やらかしていたみたいだねぇ。うちが隣と友好関係を結んで、争いがなくなったものだから武器が売れなくて。隣に大量の武器も横流ししてたって。迷惑だねぇ」

 いつもの事ですが、深刻な話のはずなのにジェレミー様の話し方は気が抜けます。

「人体実験にまで手を貸してて、結構儲けたみたいだよ」

「ジェレミー。騎士団の援護に行かなくていいのか?すでに何度か衝突は起きてるようだが、本隊が到着したらマズイだろ」

 ギデオン様の心配もごもっともです。

 時限式の召喚も気になりますし。

「今は、こっちに病を蔓延させようと、病気の兵士を送りつけている状態だよ。それは騎士団で対処できている」

「病気の兵士……」

 何も安心はできません。

 ますます心配になりました。

「非常に興味深い事に、人を凶暴化させる病気で、妙な薬を使われているみたいだ。でも、それを無効化するすべがこちらにはある。ステラのお姉さんはすごいね」

 お姉様が見つけたお薬の事ですね。

 お姉様が褒められた事はとても嬉しくて、誇らしいですが。

「でも、そろそろロクサスに行ってもらおうかと思っている。ねぇ、ロクサス。ちょっと、向こうの本隊を足止めしてくれるかな?」

「俺、半年くらい寝る事になるけどいい?」

「いいよ」

「ん。じゃあ、行く」

 返事も軽いものであったのなら、ふらりと、散歩に行くような気軽さでロクサス様は出て行かれました。
  
「召喚が発動するまでにはまだ猶予があるから、迎え討つ準備はできるね。みんなを家に帰してあげたいって、我が友人の願いは叶えてあげたいな」

 申し訳ありませんが、ジェレミー様の友人の想像ができません。

「ギデオンの出番だよ。好きなだけ燃やしてきていいからね。ステラはギデオンと行ってね。召喚される魔物の始末にかかるよ」

「わかった」

「はい」

 最後にジェレミー様から、

「じゃあ、“ゴミ掃除”に行ってらっしゃい」

 お使いを頼まれるように、言われました。

 えーっと、これ、作戦会議的なやつだったのですよね?

「あ、サイラスは私と薬の運搬の準備をするよ」

「えー……サボれると思ったのに……」

 コソコソっと部屋の外に出ようとしていたサイラスさんの、不満げな言葉はまた、流されていました。

「行くぞ、ステラ」

「はい!」

 私とギデオン様は大事なゴミ掃除です!

 魔女の置き土産を片付けに、ミナージュ領に向かいました。

 陽が沈んでいく中、ゲートを利用して、少しだけ歩いて移動した先は、遠目に騎士団の野営地の光が見える場所でした。

 あそこに、ディランさんがいるのかな……

「よそ見をするな!」

 ゴン!っと頭にギデオン様のロッドが降ってきました。

 私が悪いけど、ひどいです……

「ほら、始まったぞ」

 肩にロッドを乗せて、気楽な様子のギデオン様のその言葉に、視線を戻します。

 地面がうっすらと、光り始めました。

 少し離れた場所でも数ヶ所見えます。

 次第にその範囲がどんどん広がっていきます。

 光る地面からぽん!ぽん!ぽん!と不釣り合いなくらい軽快に、狼型の魔物が飛び出してきました。

 飛竜の姿もあります。

「あー、ちまちまとメンドくせぇ。ステラ、あれ出せ。ほら、呪いの塊」

 エサですか。

 囮ですか。

 私も手に持つロッドの先端を頭上に掲げ、すぐに特大の呪いの塊を出しました。

 無数の光る眼が一斉に私の方を向きました。

 怖くはありません。

 なぜなら、私を守るように、渦巻く炎が周りを取り囲んだからです。

 全く熱くないから不思議です。

 光に群がる虫みたいに魔物が寄ってきますが、それらはすぐに消し炭になっていました。

 炎の隙間から、恍惚の表情で大量の魔物を燃やし尽くしているギデオン様が見えます。

 こちらの方が、よほど怖かったです。

 ディランさんとは違う種類の狂戦士です。

 ギデオン様の無双でした。

 飛竜を押し潰すために、空から降り注ぐように落ちてくる幾つもの巨大な火球。

 それが地面に触れると、今度は爆炎が空を焦がしました。

 辺り一面が燃え尽くされる中心で、息もできるし、爆風に吹き飛ばされる事なく普通に立っていられるのが不思議でなりませんでした。

 世界の終わりのような光景は、広範囲の夜空を赤々と染め上げ、とうとう侵攻が開始されたのかとミナージュ領の住民を不安がらせていた。と言う話は、後になって聞いた事です。

 こうして、私と言うかギデオン様のほぼ一方的な虐殺にも近いゴミ掃除は、離れた野営地までその炎の灯りを届かせるという豪快さで幕引きがはかられる形となりました。

 騎士団により伯爵親子は捕らえられたけど、共犯関係にある一人娘のソニアさんの行方がわかっていないというこぼれ落ちた不安を残して。



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