出来損ないと呼ばれた公爵令嬢の結婚

奏千歌

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11 不安に思わなくていい

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 ハーバートさんや私の心配をよそに、何事もない日が続きました。

 このまま、何も起きないほうがいいに決まっています。

 いつもと変わらない風景を眺めながら、すっかり慣れたおつかいの為に町に行くと、商店の近くで見知ったお二人に会いました。

「あ!エリ!」

 元気いっぱいの様子で駆け寄ってきたのは、ハーバートさんの生徒さんのジェフ君でした。

 お兄さんと一緒のようです。

 その子のお兄さんは、町の代表者の一人で、ハーバートさんと協力して町の色々な整備を行っているデレクさん。

 自警団の代表も務めている方です。

 ハーバートさんと歳が近い友人であり、この町での初めての生徒さんだったとか。

「こんにちは」

 お二人に挨拶をします。

「ハーバートのおつかいか?」

 デレクさんの視線は、私の持つ手提げのカゴに向いています。

「はい」

「見覚えのない連中がウロウロしていたからと、ハーバートから警告されて、見回りを増やしているところだ。聞いているとは思うけど、エリも気を付けろ」

 それは、聞いていませんでした。

 私を不安にさせないために、ハーバートさんが黙っていたのでしょうか?

「エリ、おいでよ!クルミ投げを教えてあげる!」

 私の疑問をよそに、考える間も、返事をする間も無く、同じような身長のジェフ君にぐいぐいと腕を引かれていきます。

「一人で町から出るなって、小さい子達に言ってくれ」

「分かった、兄ちゃん!」

 デレクさんの言葉を背中で聞いて、元気に返事したジェフ君に町の広場に連れて行かれていました。

 そこではすでに数人の子供達が、賑やかに遊んでいました。

 岩に投げつけて、クルミの殻を割って食べるという遊びをしているようです。

 おやつと遊びで一石二鳥というわけですね。

 私にもしっかりした大きさのクルミが渡されました。

「そうそう!そのまま、腕を伸ばしながら、振り抜け!」

「エリ、上手いな!」

 そうして始まったわりと本気の子供達の指導に、息があがります。

 この子達は、こんな遊びをずっとしてて疲れないのですね。

 凄いです。

 そして、何故私はここに参加させられてしまったのでしょうか。

 その理由を、

「町のこどもどーめいの一員になる為の、つーかぎれーだったんだよ!エリは、合格だ!」

 小さな子が教えてくれました。

「仲間入りってことですね。ありがとうございます」

「はい、これ。ハーバート先生にも持っていって」

 最後に殻付きのクルミを大量にもらい、子供達とは別れました。

 有り難くいただいたクルミは、オイルに浸した保存食にしようと思います。

 でも、疲れました。

 汗をハンカチで拭いながら、本来の目的に戻ります。

 お店で買い物をし、品物を会計場に持って行くと、今度は子供連れの親子とお店の人にニコニコされながら挨拶をされたので、私もそれに返します。

「お母さん達、可愛らしいお嬢さんのエリお姉ちゃんが、ハーバート先生のお嫁さんならいいのにって話していたところなんだよ」

 小さな女の子の言葉に、

「わ、わたしみたいなみすぼらしい者が、そんな、」

 赤面して、慌てます。

「でも、ほら、ハーバート先生も言ってたよ!美人なお姉さんって!」

 そ、そうでしたか?

 記憶にはありませんが、ハーバートさんは優しいから決して悪く言うことはないと思います。

 とにかく、そんなのではないので!と、念入りに否定して急ぎ足でお店から出ました。

 クルミが重いですが、恥ずかしさから逃げるように走って家に帰ります。

 家の中は静かで、ハーバートさんは畑に行っているようで、ホッとしました。

 まだ冷めない顔の熱に、何か尋ねられても、上手く返事ができるか分かりません。

 気持ちを落ち着かせながらクルミをカゴに入れて、テーブルに置いてあった新聞を横目で見ます。

 新聞の大きな見出しなら読めるようになりました。

 大きな文字で書かれているから、そこだけならあまり苦労せずに読めます。


『聖教区の視察』

『大公家嫡男』

『聖女の兄』

『梟』

『警戒』


 折り畳まれた上側からは、そんな文字が読めました。

 他国からお客様がおいでになるのですね。

 それなら、警備がそちらに集中するかもしれませんね。

 この辺は、影響を受けなければいいですが。

 遠方の港町のはずなので関係ないかな?

 “梟”がなんのことなのかは気になりました。

 生き物を指すのか、何かの例えなのか。

 もう少しちゃんと読んだら意味が理解できるとは思いますが、今は先にする事があるのでそちらを優先します。

 読もうと思えば文字が読めるようになってきて、それは自分の自信に繋がっています。

 本当にハーバートさんには感謝しかありません。

 そんなことを考えながら椅子に座り、道具を使ってクルミの殻をわっていきました。


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