13 / 42
第十二話 出立
しおりを挟む
「いたたた……。マジ色んな意味で危なかったな」
俺の足元で大の字に伸びているのは白髪の少年だ。顔面から夥しい血を流しているが、死んではいないようだ。
でも咄嗟に出たのが手で良かった。こいつも身体強化をしていたようだが、出たのが足だったら今ごろ頭部が爆ぜていたな。危うく殺人者のレッテルを貼られるところだった。静かにスローライフを送りたいのだ。指名手配犯として逃亡生活とかありえない。
「おい、あの無能どういうことだ?」
「さっきまで重傷だったよな」
「まやかしの魔法かなにかか?」
「モンスターが化けているのもしれんぞ」
「やはり災厄をもたらすのか」
「誰かあいつを捕らえろ!」
観衆が煩い。あ、やべ。遠くから警備隊が駆けてくる。騒ぎを聞きつけたのか、誰かが呼びにいったのかもしれない。
「おらどけよ!」
取り巻く観衆を押しのけて大通りから路地裏に入る。観衆どもが警備隊に俺の逃げた方を教えている声が聞こえる。挟み撃ちとかいうフレーズも聞こえた。
「ふん、やれるもんならやってみろ」
俺は軽く跳躍し、二階建ての屋根に乗る。あとは屋根伝いに移動するだけだった。自分達の頭上を移動する俺には一切気づかなかった。
「しかし、カラードの連中は要注意だな。今度からはもっと気をつけないと。あ、そういえばもう一個あったな」
無限収納から紐の輪っかを取り出し、腕に通す。自動でサイズが調整されしっかりとフィットした。
身代わりのミサンガ。
致命傷を受けた際、そのダメージを肩代わりしてくれる魔道具だ。これをしていなかったら今頃は……。そう思うとゾッとする。俺は腹部に手を当てるがまったく痛みを感じない。完全にキャンセルされたようだ。
刺された時にバチンと響いたのはミサンガが効果を発揮して切れたのだろう。通常であれば期間は一か月。その間に命の危機に遭わなければ切れずにただのミサンガに成り下がるらしい。俺の場合は期間が無制限となるようだ。
「服も買わないといけないな」
さすがに服まではキャンセルされないようだ。お腹辺りにぽっかりと穴が開いていた。見えないがおそらく背中もそうなっているはずだ。
コロセウムを挟んで逆側にある別の商店街へ向かう。あっちであれば先ほどの騒ぎもまだ伝わっていないだろう。
「すみません。この店の服に魔道具ってありますか?」
「ええ、ございますが……」
訝し気に俺を見下ろす服屋の店主。カラフルな髪型と尖った黄色の嘴。鳥獣人のようだ。どうやら俺からは金持ちのオーラは出ていないようだ。
「あ、僕ね。使えなくなった魔道具のコレクターしているんだ。だから――」
「いいわよ! 全部持っていって構わないわ! ついてらっしゃい」
服は防具とは違い比較的安く、日常的に身に着けるものだ。このため種類も量も豊富だった。つまり、返品される数も多い。この店では月に一度一斉に処分するらしい。都合がよいことにそれは数日後。なので今は山積みだった。
「でも、他人が着た服に袖を通すのはちょっとなあ」
「大丈夫よ。魔法でクリーニングしてあげるわ。一着あたり百ギルでいいわよ」
金とるんだ。でも、服自体は無料らしいからお願いすることにした。
「あのー。女性用はいらないんですけど……」
スカートとか、ブラとか。それパンティーだよね。こんなの身に着けたら完全に変態じゃないか。
「何を言うの! コレクターなら男女差別したら駄目よ。全商品をコンプリートする意気込みじゃないと!」
「はあ……」
単にいらないものを全て俺に押しつけたいだけだよね。
「とりあえず一着いま着替えたいんだけど。何かいいものあるかな?」
「あら、コレクトするだけじゃなく着るのね」
「集めているものを人に見せたいのさ」
「なるほどね」
俺の装備を見て納得する店員。
「なるだけ高機能のものがいいんだけど」
「だったらこれかしら?」
なんてことない黒い無地の長袖だ。
「これはね。セルフクリーニング、耐熱耐寒、防刃、そして僅かにだけど身体能力を向上させる機能がついているのよ」
「それはいい。でもサイズが……」
どうみても大人のスリーエルサイズはあった。
「何いってるのよ。自動調整機能が付いているに決まっているじゃない」
「ああ、そうだったね」
ブーツと同じだった。どうやら魔道具類にはその機能は必ずついているみたい。確かに高い品物だからサイズ限定じゃ売れないよね。
「ありがとうございましたー」
「ああ……」
まさか二百着以上も渡されるとは思わなかった。完全にごみ回収業者だな。しかも服は無料なはずなのにクリーニング代として二万ギル以上支払ってるし。よく考えると何割かはセルフクリーニング機能がついていたよな。全部クリーニングする必要なかったんじゃないのか……。
「よし、気をとりなおして次いこう」
屋台で気になった料理を次から次へと無限収納鞄にいれていく。生の魚や肉、果物類や野菜も大量に購入した。おっと調味料を忘れちゃならない。しかしこの鞄便利だな。カテゴリー別に自動で整理されるようだ。頭の中で念じるだけでいま自分が何を持っているのかがわかる。
調理器具やポーションなどのアイテム類も買った。散財したが、これで旅の準備は整ったと思う。
「しかし、真っ黒なっちまったな」
装備も入れ替えた。部位に別れた防具だとチャーリーの時のような失態をしかねない。全身を覆う革の鎧に変えた。もちろん魔武具なので色々と機能もついている。何より重量軽減機能がいいよな。つけているのがまったくわからないほどだ。
魔武具だと思われるとやっかいなので全部黒に塗りたくった。金持ちだと思われて不必要に狙われれたくない。というのもあるが、それよりも魔武具を繰り返し使用しているのをバレる方がまずい。
「王都まで乗りたいんだけどいくら?」
「お一人様ですか?」
軍用列車前の仮設の販売所にきていた。街をどうやって出ようかと考えていたらたまたま目に飛び込んできたのだ。これが一番手っ取り早く遠くにいけると思ったのだ。
「そうだけど。もしかしてすでに満席?」
「いえ、滞在日を伸ばすなど少しばかりキャンセルが出ていますので開いていますよ。お一人様ですと五万ギルになります」
「た、たけーな」
「当日券ですから」
にしたって、高すぎないか。
「背に腹は代えられないし、それでいいや」
「席はいかがいたしますか?」
「ん? だからそれが五万ギルなんだよね?」
「それは乗車券です。席は別途かかります」
んだとぉ。
「払わないと乗れないと」
「いえ、立ち乗りになります」
「は? 着くまでずっとか?」
確か十時間かかるんじゃなかったか。
「そうですね。トイレも我慢して頂くことになります」
「へ? なんで?」
「貨物車両に荷物と一緒に乗ってもらうことになりますので」
扱いがひど過ぎないか?
「わかったよ。幾ら払えばいいんだ?」
「B席が一万、A席が五万、S席は三十万ギルになります」
「それらの違いは?」
「B席ですと四人掛けのボックス席になります。A席はリクライニング付きの独立シート席、S席は個室です」
なんつーふざけた価格設定だ。でも見知らぬ奴と十時間同じ席は正直勘弁だ。
「A席で頼む」
「かしこまりました」
懐が一気に寒くなった。ああ、王都に行ったらまた稼がないとな。
「それでいつ出発なんだ?」
「三十分後です」
また急だな。ちょっと道草食ってたらアウトだったじゃないか。
「もう乗っちゃってもいいのか?」
「ええ、勿論でございます」
「お弁当やお飲み物は御所望ですか?」
「どうせ別売りだろ」
「勿論でございます」
「持ち込みでもいいのか?」
「それは構いません」
「なら、いらない」
一号車に乗り込む。しかし、列車に乗るのに梯子を伝うってないわー。俺は肩掛けバッグだからいいけど。大きな荷物がある人達はどうしているんだ? ああ、だから貨物車両があるのか。荷物の預け賃も馬鹿高いんだろーけど。
車両内に入る。
「おお、思った以上だなこれ」
三列で並ぶリクライニングシート。列間は通路になっている。前後のシート間も余裕があり、テーブルも据え付けられていた。中世的な時代設定にしては十分豪華といえるだろう。これでモニタがついて映画でも見れたら言うことないのにな。
出発前とあってか席はほぼ満席だった。えーと俺の席は……。お、ラッキー。窓際じゃん。
席に座って窓の外を見やる。ああ、やっとこれで自由になれる。でも挨拶も何もできなかったな。
「えっ――。あれってまさか」
父とレオンとどうでもいい奴がキョロキョロと周りを見回しながらこちらに近づいてくる。やっべー、見つかったらどうしよう。
しかし、三人とも俺には気づかなかった。列車の脇を歩いて通り過ぎていっただけだ。
「あ、もしかしてこれってマジックミラーなのか?」
そういえば、列車の外から中の席って見えなかったな。でも正直ほっとした。バレなくてじゃない。みんな怪我もなく無事なようなので安心したのだ。彼らが探していたのは恐らく俺だろう……。レオンは思い詰めたような顔をしていたな。思い返すと胸がずきっと痛んだ。
甲高い汽笛が三回鳴った。
魔道列車がゆっくりと動き出す。どうやら出発するようだ。タイヤが大きいからか、思った以上に滑らかだ。
次第に小さくなっていくポリシアの街を黙って眺める。
前世の記憶を取り戻してからは一か月ちょっとにしかならない。でも、ルイスとして生きてきた時間は七年にもなる。故郷の村にはあまり良い思い出はない。虐げられた苦い記憶ばかりだ。
それでも両親やレオンは俺に良くしてくれた。心から感謝している。その恩に報いず、親不孝にも何も告げずに出ていく俺を許して欲しい。きっといつか――。
「ひょこっと元気な姿を見せにいきます」
立派になって戻るとは言えない。勇者とか英雄になんてなりたくないし。城勤めとかもありえない。だって一人気ままに生きたいんだから。それでも、ちゃんと無事に生きてますよ。楽しくやってますよ。それだけでも伝えたい。
「あ、あれ? おかしいな」
戸惑う俺の頬を涙が伝っていた。それは前世では一度も経験したことのない感情だった。
俺の足元で大の字に伸びているのは白髪の少年だ。顔面から夥しい血を流しているが、死んではいないようだ。
でも咄嗟に出たのが手で良かった。こいつも身体強化をしていたようだが、出たのが足だったら今ごろ頭部が爆ぜていたな。危うく殺人者のレッテルを貼られるところだった。静かにスローライフを送りたいのだ。指名手配犯として逃亡生活とかありえない。
「おい、あの無能どういうことだ?」
「さっきまで重傷だったよな」
「まやかしの魔法かなにかか?」
「モンスターが化けているのもしれんぞ」
「やはり災厄をもたらすのか」
「誰かあいつを捕らえろ!」
観衆が煩い。あ、やべ。遠くから警備隊が駆けてくる。騒ぎを聞きつけたのか、誰かが呼びにいったのかもしれない。
「おらどけよ!」
取り巻く観衆を押しのけて大通りから路地裏に入る。観衆どもが警備隊に俺の逃げた方を教えている声が聞こえる。挟み撃ちとかいうフレーズも聞こえた。
「ふん、やれるもんならやってみろ」
俺は軽く跳躍し、二階建ての屋根に乗る。あとは屋根伝いに移動するだけだった。自分達の頭上を移動する俺には一切気づかなかった。
「しかし、カラードの連中は要注意だな。今度からはもっと気をつけないと。あ、そういえばもう一個あったな」
無限収納から紐の輪っかを取り出し、腕に通す。自動でサイズが調整されしっかりとフィットした。
身代わりのミサンガ。
致命傷を受けた際、そのダメージを肩代わりしてくれる魔道具だ。これをしていなかったら今頃は……。そう思うとゾッとする。俺は腹部に手を当てるがまったく痛みを感じない。完全にキャンセルされたようだ。
刺された時にバチンと響いたのはミサンガが効果を発揮して切れたのだろう。通常であれば期間は一か月。その間に命の危機に遭わなければ切れずにただのミサンガに成り下がるらしい。俺の場合は期間が無制限となるようだ。
「服も買わないといけないな」
さすがに服まではキャンセルされないようだ。お腹辺りにぽっかりと穴が開いていた。見えないがおそらく背中もそうなっているはずだ。
コロセウムを挟んで逆側にある別の商店街へ向かう。あっちであれば先ほどの騒ぎもまだ伝わっていないだろう。
「すみません。この店の服に魔道具ってありますか?」
「ええ、ございますが……」
訝し気に俺を見下ろす服屋の店主。カラフルな髪型と尖った黄色の嘴。鳥獣人のようだ。どうやら俺からは金持ちのオーラは出ていないようだ。
「あ、僕ね。使えなくなった魔道具のコレクターしているんだ。だから――」
「いいわよ! 全部持っていって構わないわ! ついてらっしゃい」
服は防具とは違い比較的安く、日常的に身に着けるものだ。このため種類も量も豊富だった。つまり、返品される数も多い。この店では月に一度一斉に処分するらしい。都合がよいことにそれは数日後。なので今は山積みだった。
「でも、他人が着た服に袖を通すのはちょっとなあ」
「大丈夫よ。魔法でクリーニングしてあげるわ。一着あたり百ギルでいいわよ」
金とるんだ。でも、服自体は無料らしいからお願いすることにした。
「あのー。女性用はいらないんですけど……」
スカートとか、ブラとか。それパンティーだよね。こんなの身に着けたら完全に変態じゃないか。
「何を言うの! コレクターなら男女差別したら駄目よ。全商品をコンプリートする意気込みじゃないと!」
「はあ……」
単にいらないものを全て俺に押しつけたいだけだよね。
「とりあえず一着いま着替えたいんだけど。何かいいものあるかな?」
「あら、コレクトするだけじゃなく着るのね」
「集めているものを人に見せたいのさ」
「なるほどね」
俺の装備を見て納得する店員。
「なるだけ高機能のものがいいんだけど」
「だったらこれかしら?」
なんてことない黒い無地の長袖だ。
「これはね。セルフクリーニング、耐熱耐寒、防刃、そして僅かにだけど身体能力を向上させる機能がついているのよ」
「それはいい。でもサイズが……」
どうみても大人のスリーエルサイズはあった。
「何いってるのよ。自動調整機能が付いているに決まっているじゃない」
「ああ、そうだったね」
ブーツと同じだった。どうやら魔道具類にはその機能は必ずついているみたい。確かに高い品物だからサイズ限定じゃ売れないよね。
「ありがとうございましたー」
「ああ……」
まさか二百着以上も渡されるとは思わなかった。完全にごみ回収業者だな。しかも服は無料なはずなのにクリーニング代として二万ギル以上支払ってるし。よく考えると何割かはセルフクリーニング機能がついていたよな。全部クリーニングする必要なかったんじゃないのか……。
「よし、気をとりなおして次いこう」
屋台で気になった料理を次から次へと無限収納鞄にいれていく。生の魚や肉、果物類や野菜も大量に購入した。おっと調味料を忘れちゃならない。しかしこの鞄便利だな。カテゴリー別に自動で整理されるようだ。頭の中で念じるだけでいま自分が何を持っているのかがわかる。
調理器具やポーションなどのアイテム類も買った。散財したが、これで旅の準備は整ったと思う。
「しかし、真っ黒なっちまったな」
装備も入れ替えた。部位に別れた防具だとチャーリーの時のような失態をしかねない。全身を覆う革の鎧に変えた。もちろん魔武具なので色々と機能もついている。何より重量軽減機能がいいよな。つけているのがまったくわからないほどだ。
魔武具だと思われるとやっかいなので全部黒に塗りたくった。金持ちだと思われて不必要に狙われれたくない。というのもあるが、それよりも魔武具を繰り返し使用しているのをバレる方がまずい。
「王都まで乗りたいんだけどいくら?」
「お一人様ですか?」
軍用列車前の仮設の販売所にきていた。街をどうやって出ようかと考えていたらたまたま目に飛び込んできたのだ。これが一番手っ取り早く遠くにいけると思ったのだ。
「そうだけど。もしかしてすでに満席?」
「いえ、滞在日を伸ばすなど少しばかりキャンセルが出ていますので開いていますよ。お一人様ですと五万ギルになります」
「た、たけーな」
「当日券ですから」
にしたって、高すぎないか。
「背に腹は代えられないし、それでいいや」
「席はいかがいたしますか?」
「ん? だからそれが五万ギルなんだよね?」
「それは乗車券です。席は別途かかります」
んだとぉ。
「払わないと乗れないと」
「いえ、立ち乗りになります」
「は? 着くまでずっとか?」
確か十時間かかるんじゃなかったか。
「そうですね。トイレも我慢して頂くことになります」
「へ? なんで?」
「貨物車両に荷物と一緒に乗ってもらうことになりますので」
扱いがひど過ぎないか?
「わかったよ。幾ら払えばいいんだ?」
「B席が一万、A席が五万、S席は三十万ギルになります」
「それらの違いは?」
「B席ですと四人掛けのボックス席になります。A席はリクライニング付きの独立シート席、S席は個室です」
なんつーふざけた価格設定だ。でも見知らぬ奴と十時間同じ席は正直勘弁だ。
「A席で頼む」
「かしこまりました」
懐が一気に寒くなった。ああ、王都に行ったらまた稼がないとな。
「それでいつ出発なんだ?」
「三十分後です」
また急だな。ちょっと道草食ってたらアウトだったじゃないか。
「もう乗っちゃってもいいのか?」
「ええ、勿論でございます」
「お弁当やお飲み物は御所望ですか?」
「どうせ別売りだろ」
「勿論でございます」
「持ち込みでもいいのか?」
「それは構いません」
「なら、いらない」
一号車に乗り込む。しかし、列車に乗るのに梯子を伝うってないわー。俺は肩掛けバッグだからいいけど。大きな荷物がある人達はどうしているんだ? ああ、だから貨物車両があるのか。荷物の預け賃も馬鹿高いんだろーけど。
車両内に入る。
「おお、思った以上だなこれ」
三列で並ぶリクライニングシート。列間は通路になっている。前後のシート間も余裕があり、テーブルも据え付けられていた。中世的な時代設定にしては十分豪華といえるだろう。これでモニタがついて映画でも見れたら言うことないのにな。
出発前とあってか席はほぼ満席だった。えーと俺の席は……。お、ラッキー。窓際じゃん。
席に座って窓の外を見やる。ああ、やっとこれで自由になれる。でも挨拶も何もできなかったな。
「えっ――。あれってまさか」
父とレオンとどうでもいい奴がキョロキョロと周りを見回しながらこちらに近づいてくる。やっべー、見つかったらどうしよう。
しかし、三人とも俺には気づかなかった。列車の脇を歩いて通り過ぎていっただけだ。
「あ、もしかしてこれってマジックミラーなのか?」
そういえば、列車の外から中の席って見えなかったな。でも正直ほっとした。バレなくてじゃない。みんな怪我もなく無事なようなので安心したのだ。彼らが探していたのは恐らく俺だろう……。レオンは思い詰めたような顔をしていたな。思い返すと胸がずきっと痛んだ。
甲高い汽笛が三回鳴った。
魔道列車がゆっくりと動き出す。どうやら出発するようだ。タイヤが大きいからか、思った以上に滑らかだ。
次第に小さくなっていくポリシアの街を黙って眺める。
前世の記憶を取り戻してからは一か月ちょっとにしかならない。でも、ルイスとして生きてきた時間は七年にもなる。故郷の村にはあまり良い思い出はない。虐げられた苦い記憶ばかりだ。
それでも両親やレオンは俺に良くしてくれた。心から感謝している。その恩に報いず、親不孝にも何も告げずに出ていく俺を許して欲しい。きっといつか――。
「ひょこっと元気な姿を見せにいきます」
立派になって戻るとは言えない。勇者とか英雄になんてなりたくないし。城勤めとかもありえない。だって一人気ままに生きたいんだから。それでも、ちゃんと無事に生きてますよ。楽しくやってますよ。それだけでも伝えたい。
「あ、あれ? おかしいな」
戸惑う俺の頬を涙が伝っていた。それは前世では一度も経験したことのない感情だった。
0
あなたにおすすめの小説
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
魔力ゼロの俺だけが、呪いの装備を『代償なし』で使い放題 ~命を削る魔剣も、俺が持てば『ただのよく切れる剣』~
仙道
ファンタジー
現代日本で天才研究者だった相模登(さがみ のぼる)は、ある日突然、異世界へ転移した。 そこは『スキル』と『魔力』が全てを決める世界。
しかし登には、ステータス画面もなければ、魔力も、スキルも一切存在しなかった。
ただの一般人として迷宮に放り出された彼は、瀕死の女騎士と出会う。彼女の前には、使う者の命を瞬時に吸い尽くす『呪いの魔剣』が落ちていた。
武器はそれしかない。女騎士は絶望していたが、登は平然と魔剣を握りしめる。 「なぜ……生きていられるの?」 登には、剣が対価として要求する魔力は存在しない。故に、魔剣はデメリットなしの『ただのよく切れる剣』として機能した。
これは、世界で唯一「対価」を支払う必要がない登が、呪われた武具を次々と使いこなし、その副作用に苦しむ女騎士やエルフ、聖女を救い出し、無自覚に溺愛されていく物語。
万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?
Gai
ファンタジー
鉄柱が頭にぶつかって死んでしまった少年は神様からもう異世界へ転生させて貰う。
貴族の四男として生まれ変わった少年、ライルは属性魔法の適性が全くなかった。
貴族として生まれた子にとっては珍しいケースであり、ラガスは周りから憐みの目で見られる事が多かった。
ただ、ライルには属性魔法なんて比べものにならない魔法を持っていた。
「はぁーー・・・・・・属性魔法を持っている、それってそんなに凄い事なのか?」
基本気だるげなライルは基本目立ちたくはないが、売られた値段は良い値で買う男。
さてさて、プライドをへし折られる犠牲者はどれだけ出るのか・・・・・・
タイトルに書いてあるパートナーは序盤にはあまり出てきません。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる