【第二部投稿中】今を生きる魔法使いへ

一三三

文字の大きさ
17 / 62
第一部

16話 芽吹く感情②

しおりを挟む
 とはいえ、さすがに何口か食べていけばある程度コツは掴めるもので、マーシアはその後至福に満ちた表情で、上手にホットドッグを頬張っていた。

「ウインナーが弾けるようにパリパリで、とても美味しいです!」
「そりゃよかった。それなら、今度はハンバーガーもいけそうだな」
「うふふっ。次はぜひいただいてみたいです」
「ああ。ぜひ、な」

 美味しそうに、幸せそうに食べ物を頬張るマーシアの可愛いこと。
 彼女を眺めるジニの目元が、自然と緩んでいく。


(何か、ずっと見てられるな……)


 そう思うのは、マーシアに愛の告白をされ、彼女を意識してしまっているからなのか。


(……でもなぁ。、そんなことだけで生まれるもんかね……)
 
  
 それはあくまで、彼が自分の気持ちの変化に気付くきっかけにすぎないのだろう。

 元よりマーシアからは、自分が魔法道具を製作する上での指針となる温かい言葉をもらっているのだ。それがどれほど嬉しかったか、ジニは今でもしかと覚えている。

 マーシアと幾度と交わした他愛もない会話。彼女の包容力溢れる優しさ。いつの間にか、それらが全て、彼の中でかけがえのないものになっていたのかもしれない。
 勿論、マーシアという存在も含めて──


(……って、いやいや!! ちょっと落ち着け!! 俺、そんなにすぐ女の子に惚れるような男じゃねぇだろ!!)


 ジニは移ろう自分の感情に戸惑い、マーシアへの想いに待ったをかける。
 実のところ、ジニは恋人がいたにも関わらず、本気で恋をした上での交際をしたことがなかったため、己の心臓がむず痒くなる感情にはとんと疎かったのだ。
 
(こっ、この気持ちだって、気のせいかもしれねぇし!! ウォルジーは可愛くて良い奴だけど、そんな!! こ、恋とかそんな……。てか、そもそも恋って、こんな急にしちゃうもんなの?! え?! はっ?! 何、分かんないんだけど!?)

 心の中のジニは大パニックだ。
 どったんばったん、右往左往を繰り返す。

(いや、どうすりゃいいの……。何か、俺のウォルジーへの気持ちがハッキリ分かる方法とかねぇの……?)

 心の混乱に疲弊したジニはそんなことを思った。
 そんな矢先。

「エラ様。手が止まってしまっていますが、もしかして、お腹がいっぱいになってしまいましたか?」
「……えっ?! いやぁ!? そ、そんなことないよぉ?!」

 突然マーシアに声をかけられ、心臓が跳ねたジニの声は、思わず上ずる。

「まあ、そうでしたか。お料理は熱いうちに召し上がったほうが、きっと美味しいですよ」
「あっはは! そ、そうだよな! 食べる、食べる!」

 ジニはあせあせとピザを手に取り、口に運ぶ。
 チラッとマーシアへ視線を向けると、彼女はジニを見て、ニコニコと微笑んでいた。


「エラ様、美味しいですか?」

「!! ハイッ!!♡♡」


 笑顔──。その破壊力は、時に最たるもの。
 ジニの心臓はまんまと撃ち抜かれた。

 
(……~~~~ッああああッ!!!!)


 ジニは膝から崩れ落ちそうになるも、どうにか踏み止まる。

 そんなことよりも、今覚えた感覚。
 ふわふわするような、心臓がギュッと握り締められるような、切なく甘い、未知なる心地良さ。

 それは、正に──
 
 
(……恋です!!!! これは、恋です!!!!)


 さすがに、認めざるを得なかった。


 自分は、マーシアに恋をしているのだ。


(……マ、マジか、そうなのか。俺、ウォルジーのこと……)

  
 自覚が芽生えると、途端に顔が真っ赤になる。
 そして、マーシアを見つめる自分の視線は、恋する相手へ向ける眼差しであったことに、ジニは気付いた。

 好きなものに目をきらめかせる姿。
 食べ物を頬張る姿。
 全てが、愛しさに溢れていたのだ。
 

(そうだよな。あれだけウォルジーのあったかさに触れておいて何の感情も持たないとか、そんなん無理だもんな……)

 
 なるべくしてなった、というところだろう。
「そうか、そうか」と呟く心がくすぐったい。

 これが、恋なのか。人を好きになるということなのか。
 己のマーシアに対する想いを自覚したジニは、微笑気味にピザをもう一枚手に取った。


(……ハッ!!)

 
 と、同時に、超重要なことにも気が付く。


(!! ちょっと待て!! てことは俺らって、もしかして──)

 
 そう、両思いなのでは──?


(キャーーーーーーーーッ!!!!!!)


 パフパフパフと、心のラッパがやかましく鳴り響く。
 
 
 早く、マーシアの口から全てを聞きたい。
 ジニは浮かれ気分で残りのピザを頬張った。



 ****



 そして、二人は料理を食べ終えた。

「あー、ピザ美味すぎた!」

 店の味に感動し、ジニが単調な言葉しか発しなくなった頃、マーシアがいよいよ口を開く。

「では、エラ様。お腹も膨れましたし、本題のお話をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「はい!! いつでもどうぞ!!」

 待ってましたと言わんばかりに、ジニは声を張り上げる。

「先日のことについてというのは、あの時のお話の中で、私がエラ様にお伝えしきれなかった、自身の気持ちについてです」

 マーシアは先程までの緩やかな顔を一変させ、真剣な面持ちでジニを見据えた。

「あの時、エラ様に抱いた気持ちは本当なんです。愛おしさが芽生え、触れたくなってしまった、あの気持ち……」

 余裕に見せるべくうんうんと頷きながら、ジニは平常心を装い、マーシアの話に耳を傾ける。
 だが実際、心の中は平常などとても保ててなどいない。改めて本人から聞かされた想いに、再び心の奥がムズムズして、思わず心臓を掻きむしりたくなってしまう。

(アアアア゛ーーッ!! 耐えろ、耐えろ俺!!)

 ドンドコドンドコ。
 ジニの心臓を、熱血太鼓奏者が打ち鳴らす。

 そんな彼の内心に気付けるはずもなく、マーシアは照れくさそうに微笑み、再び口を開いた。

「……エラ様」
「はい!!!!」

 マーシアは、ジニの紫色の瞳をしかと見据えた。ジニの鼓動のメロディはサビへ突入する。


 マーシアは彼にこう告げた。


「……エラ様は、ベルちゃんにそっくりなんです!」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

女性が少ない世界でVTuberやります!

dekoma26+ブル
恋愛
ある日朝起きてキッチンに行くとそこには知らない男性たちが! …え、お父さん⁉ なぜか突然女性の少ない世界に来てしまった少女がVTuberをしたり、学校に通ったりするお話。 ※毎週火曜・金曜日の夜に投稿。作者ブル

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

そのまさか

ハートリオ
恋愛
「そのまさかですわ、旦那様!」 ーーベナ・マギネは、16才の誕生日の前日、ギネオア邸3階からロープで脱出しようとして失敗、その際、残念前世をうっすら思い出し、今世をちゃんと生きようと、先ずは旦那様を色仕掛けで骨抜きにしようとトッチラカル・・! 前世が残念な事もある・・・何のスキルも無い事だってある・・・そんなベナが全力でトッチラカリます! 設定ゆ~るゆるです。緩い気持ちで読んで頂けると助かります。 第15回恋愛小説大賞にエントリーしました。 読んで、良いなと思ってもらえたら、投票お願いします。 短編ではないので長編選びますが、中編だと思います。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

城内別居中の国王夫妻の話

小野
恋愛
タイトル通りです。

処理中です...