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隣国戦争編

034話 予言者になった!?

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-オスロウ国 王宮跡地-

ゆうに8メートルは有る黒い肉塊の様な物体は脈動しながら生物の形を成していった。

巨大な前足が4本、野太い後ろ足が2本。
首が無く胴体に顔が有る不気味な姿に変容する。

紫色の筋肉繊維は太く赤黒い血管が浮き上がり、胸と頭部に当たる場所に巨大に裂けた口と4つの赤く濁った眼が浮き上がる。

超きもい。
この第2形態は先程とは違い防御力が多少低下し魔法無効、攻撃力、魔法攻撃力、敏捷性向上。
かなり厄介な能力となる。

「あの形態になったら魔法系の特殊技能スキル魔法スペルは一切通用しなくなります!物理攻撃でお願いします!」

私が指示をすると、デイアは不服そうな顔して魔法攻撃の態勢に入る。

うん、あれは信じて無い表情だな。

本来ゲームではデイアと偽国王が戦う事は無い。

それにDOSどっちゃん達の知り合いとは言え、初対面の小娘の言う事なんて信じれないだろう。

「デイア姫!シノブの言っている事は本当です!あの形態になったら魔法攻撃は通用しません!」

咲耶が私の指示に加勢をするが、デイアは魔法攻撃を止める気は無い様子だ。

両手に集中した膨大な魔力の凝縮は続く、あれは戦争のレイドイベント時にハイメス国と敵対した時にデイアが使用する極大攻撃魔法アルティメルスペルだ。

「何故そんな事が分かる!初めて対峙する相手の事に何故詳しい!!」

怪訝そうな表情でデイアが叫ぶ。

ごもっともだ。
それに彼女は本来指図されるのが好きでは無いのだろう。

今日初めて会った敵対する国の犯罪者印どくろマークを付けた忍者如きとか思っていそう・・・。

訳の分からない者に初めて出会ったモンスターの特性をさも知っていたかの様に説かれ、しかも自分の魔法が効かないと侮辱に取れる発言をされたら、怒るよね・・・・

デイアに続きシグも【エデンズレイ】の準備をし始める。

先程まで城内だったから撃てないでいたシグの最強攻撃。
アレも魔法に近い特殊技能スキルなので、もちろん効かない。

「シグ殿!その技も効かないでござる!」

即座にサクラがシグに叫ぶ。線引きが難しいが、【エデンズレイ】や【セイクルレイン】は聖属性の魔法寄りの攻撃で、クリス君の使っていた【極掌発勁ごくしょうはっけい】や剣に赤黒い炎を纏う【天業ノ黒てんごうのくろ】は物理攻撃扱いだ。

「サクラ様!私の雄姿を見ていてください!勝利を貴女に捧げます!」

話聞いてないしコイツ。しかもブレないな!

「ドラゴン●エストⅣのク●フトがボスに【サラギ】をするアレでござるな。」

サクラが突然ドヤ顔で説明し出す。
最初期のFCファミコン版はゲームのキャラクターに「AI」が導入されており、雑魚モンスターに即死魔法が効きまくるから「AI」が有効性を学習し何度も使う様になるんだとか。
そのまま即死魔法の効かないボスと戦闘に入ると、馬鹿の一つ覚えの様に即死魔法を使いまくるそうだ。

全滅して再戦をすると、「効かない」と学習するらしいが大抵全滅せずに倒すので「行動がお馬鹿」と言う印象が強くなるらしい。
PSプレステ版やDSディーエス版は修正済で更に命令出来るので問題無い・・・と。

自分の得意分野には饒舌になるのがサクラの癖だ。

本来デイアとの戦闘で使用する極大攻撃魔法アルティメルスペル【アストラインダクス】は、巨大な隕石を落下させ周囲を崩壊に導くレイドボス専用魔法だ。

あれは物理防御扱いだっけ?
確か回避可能な魔法防御扱いのはず。

単独ソロ攻略の魔法職救済処置なのかは不明だが、見た目は明らかに物理ダメージっぽいが計算式は魔法ダメージ扱いと言う変わった魔法スペルだ。

「消滅せよ!【アストラインダクス】!」

無数の小型隕石がまだ動く気配の無い第2形態ヴァッサゴに直撃する。

もの凄い爆風が私達を襲い砂煙で視界が無くなる。
やはり見た目的に物理攻撃扱いで良くね?約10~20個の巨大隕石が直撃し地面に幾つものクレーターが出来ていた。

そのクレーターの中心部に向けてシグが【エデンズレイ】を発動し、天空より巨大な光の柱が変化中のヴァッサゴに直撃する。

こちらの特殊技能スキルも負けない位派手な技だ。
【エデンズレイ】の落ちた衝撃により、ヴァッサゴを中心に爆風が起こり砂埃が飛び散り視界が晴れる。

そこには無傷の第2形態ヴァッサゴが裂けた口を歪ませ笑っていた。

やはりコイツには魔法判定の攻撃は一切効いてない。
デイアとシグはほぼ同時に「馬鹿な!」と叫んでいた。

やはりゲームと同じ設定が活きているらしい。

第1形態は魔法職有利で第2形態は物理職有利と言うレイドボスなのだが、上位のやり込みプレイヤーは魔法職の単独ソロ攻略とかを動画で上げていたなぁ。

「どうやら戯言ではなさそうですね、あなた方は何者なのですか?」

デイアが疑う様な目で私達を見つめる。
プレイヤーで何度か戦った事が有ります・・・などと言っても理解してはくれないだろう。

どうした物か・・・・

デイア、シグ、クリス君が疑う様な目付きで私を凝視してくる。
なんか私悪い事している気分。

微妙な空気の沈黙を破ったのはサクラだった。

「何を隠そう・・・シノブ殿は未来予知が出来るのでござる!特殊才能ギフト所持者でござる!言わば・・・そう!世界最高峰の予言者でござる!」

また適当な設定をでっちあげてこのオッサンは・・・

忍者で犯罪者で使い魔の大予言者とか、設定盛り過ぎだろう。

誰がそんなの信じるんだ。
私は責任持てないぞ。

「そうだったのか!?シノブ凄いです!」

咲耶・・・本気で驚いている?天然か!?

「・・・・・・」

あ、DOSどっちゃんは呆れてる。表情は変化無いけど、なんとなく分かる。

「未来予知・・・あの使い魔にそこまでの力が!」

「凄い、流石サクラ様の使い魔だけの事は有る。」

シグ・・・クリス君まで真に受けている。素直か!

「彼女も特殊才能ギフトを持っていたのか」

聡明そうなデイアまでも驚いて関心してるし。
てかNPC連中は結構信じてくれているのか?

ま、いいや、もうそれで良いよ。

私達は改めて第2形態ヴァッサゴと対峙し武器を構える。

さてと、ココからが本番だ。

先程までとは禍々しさが段違いだ。
洞窟のレッドドラゴンを髣髴とする威圧感。

ヴァッサゴ第2形態との戦闘開始だ。
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