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暗黒神ザナファ討伐編
084話 転移の先導者
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-アビスダンジョン 40階層-
戦闘準備を整えフロアボスに繋がる大扉を開く。
光苔の発行で薄っすらと光源を得た真っ黒の岩壁に囲まれた巨大な空間が広がっている。
【索敵】にはモンスターの反応は無い。
本来居るはずの魔人ヨグトスの姿は無く戦闘用に造られた広い空間が広がっていた。
皆でフロア内を捜索したが特に何も発見出来ず、誰かが戦闘を行った形跡も存在しなかった。
まるで最初から存在しなかったかの様に部屋全体を静寂が包んでいた。
「・・・・・どう言う事ですか?」
「ボスが居ないでござるね。」
「誰かが倒したとか?ミカさんとか。」
「それは無いな、周囲に戦闘の形跡がまるで無い。」
魔人ヨグトスは暗黒神ハーデスがプログラムしたらしいが、サービス後半に何らかのイベントに使用する為に情報更新を行われたらしい。
プログラムの内容は不明。
魔人アルラトの様に何らかの自立行動を行っている可能性が有ると彼は皆に語っていた。
魔人ヨグトスの初期コンセプトは過去から未来の全てを知っていると言う設定で、マザーブレインの上位互換とも呼べる存在。
魔人ヨグトスそのものが次元を超越した「門」の様な設定らしい。
魔人の元ネタがクトゥルフ神話を基にデザインされており、設定もそのままオマージュされていると話していた。
「次元と次元を繋ぐ門って・・・ねぇ私達がこの世界に来た事と関係有るのかな?」
「クトゥルフ神話の神がモチーフなのでしょう。設定でしかないのでは?」
「でも、面白い仮説が作れそうでござるな。大好物でござる。」
サクラが持論を語った。
ゲームでも魔人ヨグトスの後、更に下層の暗黒神ザナファとの戦闘になる。
そして私達は暗黒神ザナファを倒した瞬間にこの世界に転移した。
その事を念頭においてサクラが考えた仮説を話す。
もしかしたら現実世界と異世界を繋ぐ門の役割を果たしたのが魔人ヨグトスなんじゃないかと言う仮説だ。
現実世界の魔人ヨグトスを倒した時点で異世界転移が発動「門が開く」、そしてこちらの世界に転移完了した時点で「門が閉じる」。
その時点で此方の世界の魔人ヨグトスが消滅し役割が終了する。
はっきり言って根拠が無く荒唐無稽なオカルト仮説だ。
「サービス終了と同時にゲーム自体を別次元に転移させたのか。それを実行した犯人は?製作者の誰かって事か?」
DOSが暗黒神ハーデスに問う。
確かに、この現象を引き起こした犯人が居るはずだ。
それとも偶然に偶然が重なって起きた奇跡的な現象なのか。
「人如きに、そんな神の様な所業が出来るとは思えんがな。」
「じゃ、神のパパなら出来るの?」
魔人アルラトが手を後ろに組みながら無邪気な表情で尋ねる。
こいつ馬鹿か?と今にも出そうな表情で暗黒神ハーデスが溜息を付く。
「我に出来る力が有ればしてみたい物だな。」
ゲーム世界を現実の様に造り上げるなんて事は現代技術ではほぼ不可能だ。
実写の様にリアルな映像と没入感を得る事は可能だけど、視覚と聴覚以外の感覚器官を共有することは物理的にも不可能だ。
しかも多人数を同時に同期している?
もしそうだとしたら、この世界は完全に人智を越えている。
暗黒神ハーデス達は仮説に仮説を重ねて議論を白熱させていた。
アルラトが退屈そうにしていたので「ジャンケン」と「あっち向いてホイ」を教えてあげたら、喜んでいた。
ふっふっふ。
回避能力の高い私には絶対に勝てないけどね!
「ジャンケンポン!あっちむいてホイ!」
「ぎゃぁ!シノ強過ぎ!もう1回!!」
短時間で私は42勝無敗。
ジャンケンで負けても全ての指差しを回避する私に魔人アルラトは勝てない。
彼女の悔しそうな顔を見るのが楽しくて挑戦を全て受けている。
「ハーデス、あれだ。」
DOSは魔人アルラトを指さして話を続けた。
魔人アルラトが「ジャンケン」と「あっちむいてホイ」を習得して私と互角に勝負が出来る様になるのに1分も掛かってない。
もしプログラムがAIの様に自立進化を繰り返したら人間よりも早く解明されてなかった分野の学問や数式を解明するんじゃないか。
そしてその最終地点で異世界転移も可能になるのではないかと語る。
理解が遅い私とアルラトに咲耶が優しく説明をしてくれた。
要約するとゲーム内のAIが異常進化して別次元にへの跳躍を可能にした。
そしてゲーム世界をそのまま反映した異世界に私達の意識を飛ばしたと言う話らしい。
「ふん、全部仮説だ。証明が出来ないのだからな。それよりも咲耶、下へは行けそうだったか?」
「ええ、下層への扉は解除されてました。」
「何はともあれ戦闘スキップはラッキーでござるよ。」
「ここも守護放棄か、やりたい放題だな。」
機械都市ギュノス国から暗黒神ハーデスは疑問な事が多くて納得がいかない様子だった。
プログラマーの視点で見て、私達よりも違和感に気付き易いのだろう。
魔人アルラトに問い質しても要領を得ない回答が返ってくるので少し苛付いている様子だ。
システムエンジニアと言う職業を良く知らない私達では専門用語の入り混じる彼と対等の会話出来ない。
恐らく凄いストレスを感じているに違いない。
「暗黒神ハーデス大丈夫?」
「問題無い。ただ理解不能な事が多くてな。」
無理に作った様な笑みを浮かべながら、暗黒神ハーデスは遠くに視線を向ける。
結局私達は特に何も分からないまま40階層を後にした。
戦闘準備を整えフロアボスに繋がる大扉を開く。
光苔の発行で薄っすらと光源を得た真っ黒の岩壁に囲まれた巨大な空間が広がっている。
【索敵】にはモンスターの反応は無い。
本来居るはずの魔人ヨグトスの姿は無く戦闘用に造られた広い空間が広がっていた。
皆でフロア内を捜索したが特に何も発見出来ず、誰かが戦闘を行った形跡も存在しなかった。
まるで最初から存在しなかったかの様に部屋全体を静寂が包んでいた。
「・・・・・どう言う事ですか?」
「ボスが居ないでござるね。」
「誰かが倒したとか?ミカさんとか。」
「それは無いな、周囲に戦闘の形跡がまるで無い。」
魔人ヨグトスは暗黒神ハーデスがプログラムしたらしいが、サービス後半に何らかのイベントに使用する為に情報更新を行われたらしい。
プログラムの内容は不明。
魔人アルラトの様に何らかの自立行動を行っている可能性が有ると彼は皆に語っていた。
魔人ヨグトスの初期コンセプトは過去から未来の全てを知っていると言う設定で、マザーブレインの上位互換とも呼べる存在。
魔人ヨグトスそのものが次元を超越した「門」の様な設定らしい。
魔人の元ネタがクトゥルフ神話を基にデザインされており、設定もそのままオマージュされていると話していた。
「次元と次元を繋ぐ門って・・・ねぇ私達がこの世界に来た事と関係有るのかな?」
「クトゥルフ神話の神がモチーフなのでしょう。設定でしかないのでは?」
「でも、面白い仮説が作れそうでござるな。大好物でござる。」
サクラが持論を語った。
ゲームでも魔人ヨグトスの後、更に下層の暗黒神ザナファとの戦闘になる。
そして私達は暗黒神ザナファを倒した瞬間にこの世界に転移した。
その事を念頭においてサクラが考えた仮説を話す。
もしかしたら現実世界と異世界を繋ぐ門の役割を果たしたのが魔人ヨグトスなんじゃないかと言う仮説だ。
現実世界の魔人ヨグトスを倒した時点で異世界転移が発動「門が開く」、そしてこちらの世界に転移完了した時点で「門が閉じる」。
その時点で此方の世界の魔人ヨグトスが消滅し役割が終了する。
はっきり言って根拠が無く荒唐無稽なオカルト仮説だ。
「サービス終了と同時にゲーム自体を別次元に転移させたのか。それを実行した犯人は?製作者の誰かって事か?」
DOSが暗黒神ハーデスに問う。
確かに、この現象を引き起こした犯人が居るはずだ。
それとも偶然に偶然が重なって起きた奇跡的な現象なのか。
「人如きに、そんな神の様な所業が出来るとは思えんがな。」
「じゃ、神のパパなら出来るの?」
魔人アルラトが手を後ろに組みながら無邪気な表情で尋ねる。
こいつ馬鹿か?と今にも出そうな表情で暗黒神ハーデスが溜息を付く。
「我に出来る力が有ればしてみたい物だな。」
ゲーム世界を現実の様に造り上げるなんて事は現代技術ではほぼ不可能だ。
実写の様にリアルな映像と没入感を得る事は可能だけど、視覚と聴覚以外の感覚器官を共有することは物理的にも不可能だ。
しかも多人数を同時に同期している?
もしそうだとしたら、この世界は完全に人智を越えている。
暗黒神ハーデス達は仮説に仮説を重ねて議論を白熱させていた。
アルラトが退屈そうにしていたので「ジャンケン」と「あっち向いてホイ」を教えてあげたら、喜んでいた。
ふっふっふ。
回避能力の高い私には絶対に勝てないけどね!
「ジャンケンポン!あっちむいてホイ!」
「ぎゃぁ!シノ強過ぎ!もう1回!!」
短時間で私は42勝無敗。
ジャンケンで負けても全ての指差しを回避する私に魔人アルラトは勝てない。
彼女の悔しそうな顔を見るのが楽しくて挑戦を全て受けている。
「ハーデス、あれだ。」
DOSは魔人アルラトを指さして話を続けた。
魔人アルラトが「ジャンケン」と「あっちむいてホイ」を習得して私と互角に勝負が出来る様になるのに1分も掛かってない。
もしプログラムがAIの様に自立進化を繰り返したら人間よりも早く解明されてなかった分野の学問や数式を解明するんじゃないか。
そしてその最終地点で異世界転移も可能になるのではないかと語る。
理解が遅い私とアルラトに咲耶が優しく説明をしてくれた。
要約するとゲーム内のAIが異常進化して別次元にへの跳躍を可能にした。
そしてゲーム世界をそのまま反映した異世界に私達の意識を飛ばしたと言う話らしい。
「ふん、全部仮説だ。証明が出来ないのだからな。それよりも咲耶、下へは行けそうだったか?」
「ええ、下層への扉は解除されてました。」
「何はともあれ戦闘スキップはラッキーでござるよ。」
「ここも守護放棄か、やりたい放題だな。」
機械都市ギュノス国から暗黒神ハーデスは疑問な事が多くて納得がいかない様子だった。
プログラマーの視点で見て、私達よりも違和感に気付き易いのだろう。
魔人アルラトに問い質しても要領を得ない回答が返ってくるので少し苛付いている様子だ。
システムエンジニアと言う職業を良く知らない私達では専門用語の入り混じる彼と対等の会話出来ない。
恐らく凄いストレスを感じているに違いない。
「暗黒神ハーデス大丈夫?」
「問題無い。ただ理解不能な事が多くてな。」
無理に作った様な笑みを浮かべながら、暗黒神ハーデスは遠くに視線を向ける。
結局私達は特に何も分からないまま40階層を後にした。
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