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百鬼夜行編
161話 かみさまtoカミサマ
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ホウシェン城は天守閣から北東側を含め60パーセント近く破壊。
状態異常に掛かり同士討ちをして死亡した侍部隊、弓兵部隊、陰陽師、忍衆が多数。
現在百鬼夜行で生存した城の兵力は街の妖と暴動鎮圧へと早馬を駆け向かわせていた。
ミカさんは「ヒルドルの盾」を使用し死者の蘇生を行う。
私達は咲耶と回復魔法の使える陰陽師を中心に道具屋の安い回復アイテムで怪我人の治療を手分けして行った。
「シロウさん、どうしたのですか?」
「いえ、あははは。」
シロウは乾いた笑いを浮かべる。
その意味を聞くと、笑えない事に城の入口付近で死亡していた侍達の大多数は麻痺が解け混乱状態の天帝様が原因だとシロウが話していた。
何でも豪快な斬り傷で一目で分かった様だ。
うーん、蘇生しても遺恨や恐怖が残らなければ良いけど。
この国なら、むしろ忠義心が向上するかも知れない。
「もう大丈夫ですよ。」
「拙者は死んだと思ったのだが・・・ありがとうございます。」
「いやお前は間違い無く死んでいたぞ、奇跡だ。」
「まさに大神様だ。」
どの国でも死者蘇生と言う奇跡を目の当たりにした人々は、ミカさんの装いも相まって神様として崇める風潮が有る。
この城の中でも既に100人以上死者の蘇生を行っている。
街に遠征に行った侍と忍衆にも死者をなるべく丁寧に広場に集める様に指示を出していた。
24時間以内なら蘇生可能だが、超えると二度と蘇生が出来なくなる。
ミカさんは今日明日中に街全体の死者蘇生を行うつもりで居る様だ。
私達は一様にレイドボスの空亡を倒した事の喜びや安堵感は無く、天守閣を壊しアイテムを奪い去ったアルラトと未だ戦火に塗れている街の様子をどうして良いやら悩んでいた。
護衛を気絶させ大広間で鎖に繋がれていた天帝様を解放したのはアルラトらしく、天帝が中庭に到着した後に護衛をしていた侍達を殺害し天守閣の【イエローダイヤモンド】を奪取し逃亡した様だ。
当然の事ながら私達の仲間が仕出かした事なので、私達を不審に思う侍も大多数いる様だった。不穏な空気の中1人だけ考え方の違う人間が居た。
「がっはっは!国宝とは言えあのような妖しい宝石なんぞ、この国を守った褒美としてくれてやるわ!」
「いや、しかし天帝様!あれは城に代々受け継がれた由緒正しき物です!即刻この者共を捕らえ牢に入れた後、逃亡した仲間を指名手配すべきです!」
「あの巨大な妖共を薙ぎ倒し、死者を復活させる者共を捕らえられる強者がおるのか?おるなら連れて来て見せい!」
「ぐぬぬ・・・」「仮に全員で戦って1人倒しても即復活するか・・・」
「ミカエルさん達も戸惑っている様でした。あの幼子の行動は予想外だったかの様に。」
「いや、それも演技やも知れんぞ!」
天帝は相変わらず「強さこそ全て」と言う感じで、政治的な事や伝統等に興味が無いと言った性格らしい。
天帝の話を聞いても尚、侍達の疑念は晴れる事は無い。
彼等は敵意有る言葉を小さく口にする。
天帝とシロウとその他幹部連中が集まりDOSとサクラを交えて、アルラトの事と今後の行動を話し合っている様だった。
「我々の仲間が国の宝物を奪った事は揺るぎ様の無い事実だ。しかし我々には為さなければならない使命も有ります。今は立ち止まって居られない。」
「謝罪の印と言う訳ではござらんが、ミカエル殿はこの国の戦乱で命を落とした民を救おうと動いておる。今は少しでも死者数を減らす為に協力するでござる。」
「がっはっは!!聞いたか?我が配下共!必死に配下を救うミカエル殿の姿をしかと見よ!そして己の器の小さき事を恥と知れい!!!」
一際大きい天帝の一喝でその場に居た配下全員が膝ま付き平伏す。
戦の元凶を討伐した者達とその仲間の女性1人が己が力を行使して奇跡の様な所業を行っている最中、その者達を罰しようとしている事がどれだけ愚かな発言か皆が理解する。
「天帝の名において命ずる!この戦に勝利した事の報酬として「深紅の薔薇」に国宝【イエローダイヤモンド】を授ける!そして全人員を割きミカエル殿に御助力せよ!」
「御意!!」「はっ!」
「仰せのままに!」
天帝の勅命を受け、侍達の動きが変わる。
蘇生した侍達もすぐに街の救援へと向かった様だ。
「死と言う永遠の深淵を覗いて我はまた1つ魂の位が上がったのを感じるぞ。」
「暗黒神ハーデス、もう大丈夫なの?」
「頭以外は大丈夫そうでござるな。」
蘇生を終えた暗黒神ハーデスが暗黒オーラ全快で話しかけて来た。
彼を助け出したDOSの話では両腕欠損、全身の骨が粉々に砕け裂傷多数で全身の毛穴から血液を吹き出したショック死状態だったと言う。
直接見た訳じゃないが想像するだけで痛い。
・・・ってか怖過ぎ。
暗黒神ハーデスとアルラトの事を少し話す。
彼女が奪取した未実装アイテムの【イエローダイヤモンド】がこの城の天守閣に封印して有ったのは、サービスが続いていた時に実装予定のイベントで使う予定だったんじゃないかと暗黒神ハーデスが語っていた。
未実装アイテムやイベントの類は今までも発見してきた。
「盗賊イベント」「レッドドラゴン回避ルート」「謎の老婆」「オスロウ国とハイメス国共同レイドボス討伐」「マザーブレイン戦闘回避ルート」「アビスダンジョン階層ボス仲間加入」「階層ボス不在」「マザーブレインシステムダウン」「3個目の希少鉱石」「カジノバトル」「未実装都市亜人国家アニマと古代遺跡」「思考が読める国王」「倒せない進化する敵」「グラフィックの崩れたアイテム」「コダ国とピトゥリア国の婚姻騒動」、そして今回の【イエローダイヤモンド】・・・翌々思い返すと沢山有る。
このゲームは「森で〇〇を〇個採取」「洞窟の〇〇〇を〇匹討伐」等の言って見れば「お使いイベント」が多く、その他は大規模なレイドイベント位しか無かった。
当然私達が経験して来たイベントは攻略サイトやSNS上で見かけた事は無い。
当然前半制作陣に居た暗黒神ハーデスも知らない物が多い、【イエローダイヤモンド】は自分がプログラムをしたので覚えていたみたいだけど。
「アルラトはお主がプログラムしたのでござろう?」
「初期プログラムはな・・・3年間で何回ヴァージョンアップしたと思っているのだ。」
確かにアップデートの度にヴァージョンアップしているはずだ。
1年と少しで制作陣を離れた暗黒神ハーデスはその後の内容までは知らない様だ。
「お父さんでも分かりませんか。」
「クク・・・魔人ハスタ復活フラグが立ったって感じだな。」
「おい、馬鹿止めろ!」
敢えて死亡フラグを踏み抜きに行く勢いで悪い笑みを浮かべる暗黒神ハーデスに対して咲耶がツッコミを入れる。
この2人はグラズヘイムでプライドを賭けた勝負をしてから、何故だか距離が縮まった様な気がする。
相変わらず、私達はこの世界の事が半分も分かって無い様な気がする。
暗黒神ハーデスはこの全ての隠されたイベントを用意した「黒幕」が居るんじゃないかと言っていた。
それは制作陣なのか、それとも別の創造者なのか・・・
その後、天帝と幹部達と引き続きホウシェン城の防衛。
ミカさんと咲耶はシロウと共に死者蘇生と負傷者の回復の為に城を立った。
全員とまでは行かなくても死者数が減らせれば良いけど。
残る私達は各方面に散らばり街の見回りをする事となった。
私は東部隊、サクラは南部隊、DOSは北部隊、暗黒神ハーデスは南部隊に参加し最終的に鬼門と裏鬼門に当たる玄武神社と白虎神社跡地にそれぞれ集合する事になったのだった。
状態異常に掛かり同士討ちをして死亡した侍部隊、弓兵部隊、陰陽師、忍衆が多数。
現在百鬼夜行で生存した城の兵力は街の妖と暴動鎮圧へと早馬を駆け向かわせていた。
ミカさんは「ヒルドルの盾」を使用し死者の蘇生を行う。
私達は咲耶と回復魔法の使える陰陽師を中心に道具屋の安い回復アイテムで怪我人の治療を手分けして行った。
「シロウさん、どうしたのですか?」
「いえ、あははは。」
シロウは乾いた笑いを浮かべる。
その意味を聞くと、笑えない事に城の入口付近で死亡していた侍達の大多数は麻痺が解け混乱状態の天帝様が原因だとシロウが話していた。
何でも豪快な斬り傷で一目で分かった様だ。
うーん、蘇生しても遺恨や恐怖が残らなければ良いけど。
この国なら、むしろ忠義心が向上するかも知れない。
「もう大丈夫ですよ。」
「拙者は死んだと思ったのだが・・・ありがとうございます。」
「いやお前は間違い無く死んでいたぞ、奇跡だ。」
「まさに大神様だ。」
どの国でも死者蘇生と言う奇跡を目の当たりにした人々は、ミカさんの装いも相まって神様として崇める風潮が有る。
この城の中でも既に100人以上死者の蘇生を行っている。
街に遠征に行った侍と忍衆にも死者をなるべく丁寧に広場に集める様に指示を出していた。
24時間以内なら蘇生可能だが、超えると二度と蘇生が出来なくなる。
ミカさんは今日明日中に街全体の死者蘇生を行うつもりで居る様だ。
私達は一様にレイドボスの空亡を倒した事の喜びや安堵感は無く、天守閣を壊しアイテムを奪い去ったアルラトと未だ戦火に塗れている街の様子をどうして良いやら悩んでいた。
護衛を気絶させ大広間で鎖に繋がれていた天帝様を解放したのはアルラトらしく、天帝が中庭に到着した後に護衛をしていた侍達を殺害し天守閣の【イエローダイヤモンド】を奪取し逃亡した様だ。
当然の事ながら私達の仲間が仕出かした事なので、私達を不審に思う侍も大多数いる様だった。不穏な空気の中1人だけ考え方の違う人間が居た。
「がっはっは!国宝とは言えあのような妖しい宝石なんぞ、この国を守った褒美としてくれてやるわ!」
「いや、しかし天帝様!あれは城に代々受け継がれた由緒正しき物です!即刻この者共を捕らえ牢に入れた後、逃亡した仲間を指名手配すべきです!」
「あの巨大な妖共を薙ぎ倒し、死者を復活させる者共を捕らえられる強者がおるのか?おるなら連れて来て見せい!」
「ぐぬぬ・・・」「仮に全員で戦って1人倒しても即復活するか・・・」
「ミカエルさん達も戸惑っている様でした。あの幼子の行動は予想外だったかの様に。」
「いや、それも演技やも知れんぞ!」
天帝は相変わらず「強さこそ全て」と言う感じで、政治的な事や伝統等に興味が無いと言った性格らしい。
天帝の話を聞いても尚、侍達の疑念は晴れる事は無い。
彼等は敵意有る言葉を小さく口にする。
天帝とシロウとその他幹部連中が集まりDOSとサクラを交えて、アルラトの事と今後の行動を話し合っている様だった。
「我々の仲間が国の宝物を奪った事は揺るぎ様の無い事実だ。しかし我々には為さなければならない使命も有ります。今は立ち止まって居られない。」
「謝罪の印と言う訳ではござらんが、ミカエル殿はこの国の戦乱で命を落とした民を救おうと動いておる。今は少しでも死者数を減らす為に協力するでござる。」
「がっはっは!!聞いたか?我が配下共!必死に配下を救うミカエル殿の姿をしかと見よ!そして己の器の小さき事を恥と知れい!!!」
一際大きい天帝の一喝でその場に居た配下全員が膝ま付き平伏す。
戦の元凶を討伐した者達とその仲間の女性1人が己が力を行使して奇跡の様な所業を行っている最中、その者達を罰しようとしている事がどれだけ愚かな発言か皆が理解する。
「天帝の名において命ずる!この戦に勝利した事の報酬として「深紅の薔薇」に国宝【イエローダイヤモンド】を授ける!そして全人員を割きミカエル殿に御助力せよ!」
「御意!!」「はっ!」
「仰せのままに!」
天帝の勅命を受け、侍達の動きが変わる。
蘇生した侍達もすぐに街の救援へと向かった様だ。
「死と言う永遠の深淵を覗いて我はまた1つ魂の位が上がったのを感じるぞ。」
「暗黒神ハーデス、もう大丈夫なの?」
「頭以外は大丈夫そうでござるな。」
蘇生を終えた暗黒神ハーデスが暗黒オーラ全快で話しかけて来た。
彼を助け出したDOSの話では両腕欠損、全身の骨が粉々に砕け裂傷多数で全身の毛穴から血液を吹き出したショック死状態だったと言う。
直接見た訳じゃないが想像するだけで痛い。
・・・ってか怖過ぎ。
暗黒神ハーデスとアルラトの事を少し話す。
彼女が奪取した未実装アイテムの【イエローダイヤモンド】がこの城の天守閣に封印して有ったのは、サービスが続いていた時に実装予定のイベントで使う予定だったんじゃないかと暗黒神ハーデスが語っていた。
未実装アイテムやイベントの類は今までも発見してきた。
「盗賊イベント」「レッドドラゴン回避ルート」「謎の老婆」「オスロウ国とハイメス国共同レイドボス討伐」「マザーブレイン戦闘回避ルート」「アビスダンジョン階層ボス仲間加入」「階層ボス不在」「マザーブレインシステムダウン」「3個目の希少鉱石」「カジノバトル」「未実装都市亜人国家アニマと古代遺跡」「思考が読める国王」「倒せない進化する敵」「グラフィックの崩れたアイテム」「コダ国とピトゥリア国の婚姻騒動」、そして今回の【イエローダイヤモンド】・・・翌々思い返すと沢山有る。
このゲームは「森で〇〇を〇個採取」「洞窟の〇〇〇を〇匹討伐」等の言って見れば「お使いイベント」が多く、その他は大規模なレイドイベント位しか無かった。
当然私達が経験して来たイベントは攻略サイトやSNS上で見かけた事は無い。
当然前半制作陣に居た暗黒神ハーデスも知らない物が多い、【イエローダイヤモンド】は自分がプログラムをしたので覚えていたみたいだけど。
「アルラトはお主がプログラムしたのでござろう?」
「初期プログラムはな・・・3年間で何回ヴァージョンアップしたと思っているのだ。」
確かにアップデートの度にヴァージョンアップしているはずだ。
1年と少しで制作陣を離れた暗黒神ハーデスはその後の内容までは知らない様だ。
「お父さんでも分かりませんか。」
「クク・・・魔人ハスタ復活フラグが立ったって感じだな。」
「おい、馬鹿止めろ!」
敢えて死亡フラグを踏み抜きに行く勢いで悪い笑みを浮かべる暗黒神ハーデスに対して咲耶がツッコミを入れる。
この2人はグラズヘイムでプライドを賭けた勝負をしてから、何故だか距離が縮まった様な気がする。
相変わらず、私達はこの世界の事が半分も分かって無い様な気がする。
暗黒神ハーデスはこの全ての隠されたイベントを用意した「黒幕」が居るんじゃないかと言っていた。
それは制作陣なのか、それとも別の創造者なのか・・・
その後、天帝と幹部達と引き続きホウシェン城の防衛。
ミカさんと咲耶はシロウと共に死者蘇生と負傷者の回復の為に城を立った。
全員とまでは行かなくても死者数が減らせれば良いけど。
残る私達は各方面に散らばり街の見回りをする事となった。
私は東部隊、サクラは南部隊、DOSは北部隊、暗黒神ハーデスは南部隊に参加し最終的に鬼門と裏鬼門に当たる玄武神社と白虎神社跡地にそれぞれ集合する事になったのだった。
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