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本編
第20話 クロの好きな人
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週明けから仕事のため昼は権藤さんのところに行くと知ると、クロは大喜びして一通り暴れ回る。そうかと思えば今度はソワソワしはじめた。俺自身、花屋の仕事を知らなかったので、とりあえず家でお店屋さんごっこをしてみた。耳が目立つのでバンダナを巻いてやり、雰囲気を出すためエプロンをかけてやる。いらっしゃいませと挨拶する笑顔は、看板犬としてやっていけるポテンシャルを秘めていた。
「クロ、仕事楽しみだな。クロの働くところ俺も見てみたいな」
「キャウンッ!」
夕飯を食べて、風呂で髪を洗ってやったら、クロは気持ちよさそうにしていた。昨日の一件から怯えていたのは俺だけで、クロはすんなり湯船に入って俺の腕の中でくつろいでいる。
「宮間さん、いい匂いした」
「そうだ! なんでクロは俺がアルファだって知ってたんだ?」
「一緒に外で寝た時言ってた!」
「え……? あれ、そうだっけ……」
俺が思い出しているうちにクロに唇を奪われる。クロがいなくなったのは確かに俺が中学生の時で、検査結果は出ていた。しかしさすがに中学生にもなって家を締め出された覚えはない。
「ハルチカは宮間さんのこと好きなの?」
「なんでそうなるんだ。クロは宮間さんが気に入ったのか?」
「宮間さん、俺のことを臭いって言わなかった!」
「誰もクロが臭いなんて思わないよ。宮間さんは確かにかわいいけど、クロにはちょっと難しいんじゃないか?」
「なんで! ハルチカは宮間さんのこと好きなの?」
うまくはぐらかそうとしたが、クロは一歩も引かなかった。だから面倒になって手っ取り早い答えを言った。
「クロのほうが好きだよ」
言ったことを後悔するほど、クロは照れはじめる。宮間さんの存在で、家から追い出されることを恐れているのではないかと少しだけ勘繰った。しかしこの異常にかわいい顔を見れば、いい意味でも悪い意味でもそんな打算はできないか、と考えが収束する。
「犬の中では俺が一番好き?」
「犬でも人間でも今のところクロが一番好きだよ」
きっと嬉しさのあまり吠えだすだろうと身構えていたから、無音になって俺が困惑する。鼻をピスピス鳴らしはじめたので、クロの首根っこを掴んで抱き寄せた。クロは考えていることが単純でも、アウトプットが少ない分、理解するのが難しい。
「そうだ。クロの家がなくなっちゃったから、クロの部屋を作ろう。ボールとか、クロが好きなもの置いていいぞ」
「俺の部屋! ハルチカも一緒に寝れる?」
「寝るのは俺の部屋だよ。ベッドがひとつしかないからな」
「キュウゥウンッ! キャンキャンキャンキャン!」
「そうだ、さっきクロに似合いそうなカッコいいパンツを買ったから、それも部屋に置いておこう。風呂から出たらはいてみるか?」
「俺の! パンツ!」
「はは、じゃあ出るか。今日は遊びまわったから風呂、気持ちよかったなぁ」
クロは突然、俺の腕を振り払い、唇を尖らせて近づいてきた。
「ほら、風呂出たあとでも練習していいから。パンツをはいてみよう」
俺が立ち上がりざまキスをすると、クロは嬉しそうに笑って風呂を出た。
ちなみにクロのパンツはゴムの部分がやけに派手なボクサーパンツで、小麦色の肌にとても映えた。それを褒めてやると、しばらく半裸で走り回った。だから買ってやったスウェットもきっと似合うと褒めそやすと、着用までの最短記録を樹立したのであった。
「クロ、仕事楽しみだな。クロの働くところ俺も見てみたいな」
「キャウンッ!」
夕飯を食べて、風呂で髪を洗ってやったら、クロは気持ちよさそうにしていた。昨日の一件から怯えていたのは俺だけで、クロはすんなり湯船に入って俺の腕の中でくつろいでいる。
「宮間さん、いい匂いした」
「そうだ! なんでクロは俺がアルファだって知ってたんだ?」
「一緒に外で寝た時言ってた!」
「え……? あれ、そうだっけ……」
俺が思い出しているうちにクロに唇を奪われる。クロがいなくなったのは確かに俺が中学生の時で、検査結果は出ていた。しかしさすがに中学生にもなって家を締め出された覚えはない。
「ハルチカは宮間さんのこと好きなの?」
「なんでそうなるんだ。クロは宮間さんが気に入ったのか?」
「宮間さん、俺のことを臭いって言わなかった!」
「誰もクロが臭いなんて思わないよ。宮間さんは確かにかわいいけど、クロにはちょっと難しいんじゃないか?」
「なんで! ハルチカは宮間さんのこと好きなの?」
うまくはぐらかそうとしたが、クロは一歩も引かなかった。だから面倒になって手っ取り早い答えを言った。
「クロのほうが好きだよ」
言ったことを後悔するほど、クロは照れはじめる。宮間さんの存在で、家から追い出されることを恐れているのではないかと少しだけ勘繰った。しかしこの異常にかわいい顔を見れば、いい意味でも悪い意味でもそんな打算はできないか、と考えが収束する。
「犬の中では俺が一番好き?」
「犬でも人間でも今のところクロが一番好きだよ」
きっと嬉しさのあまり吠えだすだろうと身構えていたから、無音になって俺が困惑する。鼻をピスピス鳴らしはじめたので、クロの首根っこを掴んで抱き寄せた。クロは考えていることが単純でも、アウトプットが少ない分、理解するのが難しい。
「そうだ。クロの家がなくなっちゃったから、クロの部屋を作ろう。ボールとか、クロが好きなもの置いていいぞ」
「俺の部屋! ハルチカも一緒に寝れる?」
「寝るのは俺の部屋だよ。ベッドがひとつしかないからな」
「キュウゥウンッ! キャンキャンキャンキャン!」
「そうだ、さっきクロに似合いそうなカッコいいパンツを買ったから、それも部屋に置いておこう。風呂から出たらはいてみるか?」
「俺の! パンツ!」
「はは、じゃあ出るか。今日は遊びまわったから風呂、気持ちよかったなぁ」
クロは突然、俺の腕を振り払い、唇を尖らせて近づいてきた。
「ほら、風呂出たあとでも練習していいから。パンツをはいてみよう」
俺が立ち上がりざまキスをすると、クロは嬉しそうに笑って風呂を出た。
ちなみにクロのパンツはゴムの部分がやけに派手なボクサーパンツで、小麦色の肌にとても映えた。それを褒めてやると、しばらく半裸で走り回った。だから買ってやったスウェットもきっと似合うと褒めそやすと、着用までの最短記録を樹立したのであった。
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