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第13話 女オークと人族の末裔
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ギルドの集会所は街から出たところに広がっていた草原の真ん中に位置する。港の街にもクエストを貼りだす掲示板があるが、競争が激しい割に報酬が少ない。草原一帯は森の切れ間に現れたナガザノチの縄張りで、初心者はそこを突っ切るのは難しいことから、草原の集会所には中級以上のクエストが集まるとのことだった。
「仕事をもらうのは誰にでもできるのか?」
先を歩くミオは足を止めて薬草のようなものを拾い集めている。
「草原の集会所はたどり着いたら、下位のクエストが請られるようになるよ。でも集会所にたどり着くには危険な道ばかりじゃないんだ。6日くらいこの森を歩いた先に、木で囲われた一本道がある。でもレジーは強いし、突っ切った方がはやいし……このまま行こうよ」
ミオが一瞬黙ったのは、行きすがらナガザノチの肝も手に入るという算段もあるのだろう。安定の皮算用に安心する。
森は草原をぐるっと囲むように湾曲している。洞窟から森の出口はすぐだった。確かにこの森伝いに歩くには洞窟のあった崖を迂回したりして相当日数がかかるのであろう。
森の切れ間が近づいてきたとき、前方に人影が2つ見えた。前を歩いていたミオはそれに気づいたのか、ささっと俺の後ろに回り込み、腰をぐいぐいと前に押した。
「姉様! やっぱり無理ですって!」
「なにを言っているのだ! もう3日も歩いているのに全然迂回路が見えないじゃないか! 食料ももう尽きてしまったのだぞ!」
「それは姉様が方向音痴のくせに、僕の言うことを信じないからではないですか!」
「なんだと貴様! もう一度言ってみろ」
目を凝らしてみると、女性と男性が森の出口で口論をしていた。女性と思しき巨大な影が、小さな人影の胸ぐらを掴んでいる。小さな人影は宙に浮いたまま足をブラブラとさせて苦しがっていた。よく見たら人族の男の子である。慌てて駆け寄り声をかける。
「ご婦人、なにかお困りですか?」
「おい、なに話しかけてるんだよ! レジー!」
ミオは怯えた声で、しかししっかりと俺に着いてきた。
女性は俺の声に気づくなり、男の子を落として、背負った大剣を抜こうと手を振り上げる。女性は巨大で、緑がかった肌が筋肉で盛り上がる、強靭な肉体の持ち主だった。
「ご婦人、レシオン・ド・ミゼルと申します」
敵意がないことをわかってもらうため跪き、手を差し出した。女性は大剣を抜こうとした手を緩めて躊躇いがちに、俺の差し出した手にそっと重ねた。
「レジーとお呼びください」
俺は屈強な女性の手にキスを落とす。
「あ……はあ……はわわわ……」
「ご婦人、お名前をうかがっても?」
「は……あわわ、こんなの……初めて……はわぁ!」
女性はなにがなんだかわからなくなってしまって、名を聞き出すことができない。
「姉様の名は、メア・ディル・ダーガ。僕の名はユキです」
少年ユキは俺の手を払い、慇懃無礼に言い放つ。
「おい、ユキ! 紳士になんて失礼な態度をとるんだ!」
女性の鉄拳がユキの頭に落ちる。俺が呆然としている間にユキの目がみるみると潤んだ。男は外で泣かないという教育なのか、ユキは声を押し殺しポロポロと涙を落としはじめる。
「ごめん……なさぁい……うぐっ……」
姉様というが、種族は全く違う2人。きっとミオと俺のような間柄だとは思うが、教育方針の差に愕然とする。
「俺が悪かった、メア、彼も立派な紳士だ」
「あ、ああ」
メアは顔を逸らし気まずそうに俯く。ユキはしゃくりあげまいとブルブル震えていた。そこにミオが抱きついた。
「俺、ミオ! ユキとおんなじだよ! レジーは俺の兄貴になってくれたんだ。俺もレジーが大好きでずっと一緒にいるんだ。ユキもそうだろ?」
「ふぐえっ、ふ……ふんっ……メアの……弟だげどぉおお! おっぎぐなっでぇ……! メアをお嫁さんに……するうううううあああああん!」
「お嫁さんかぁ……そっか、じゃあレジーが悪いな。ごめんな。こいつこどもで、そういうことなんもわかっちゃいないんだ……」
「メア……メアを取らないでえええ!」
「ビービーうるさい! 私を嫁にしようなんて百年はやいんだよ!」
メアは顔を再度顔を背けたが、緑の肌でもわかるほど顔が赤く、口元が緩んでいる。そして地鳴りのような音が彼女の腹から響き渡った。
「仕事をもらうのは誰にでもできるのか?」
先を歩くミオは足を止めて薬草のようなものを拾い集めている。
「草原の集会所はたどり着いたら、下位のクエストが請られるようになるよ。でも集会所にたどり着くには危険な道ばかりじゃないんだ。6日くらいこの森を歩いた先に、木で囲われた一本道がある。でもレジーは強いし、突っ切った方がはやいし……このまま行こうよ」
ミオが一瞬黙ったのは、行きすがらナガザノチの肝も手に入るという算段もあるのだろう。安定の皮算用に安心する。
森は草原をぐるっと囲むように湾曲している。洞窟から森の出口はすぐだった。確かにこの森伝いに歩くには洞窟のあった崖を迂回したりして相当日数がかかるのであろう。
森の切れ間が近づいてきたとき、前方に人影が2つ見えた。前を歩いていたミオはそれに気づいたのか、ささっと俺の後ろに回り込み、腰をぐいぐいと前に押した。
「姉様! やっぱり無理ですって!」
「なにを言っているのだ! もう3日も歩いているのに全然迂回路が見えないじゃないか! 食料ももう尽きてしまったのだぞ!」
「それは姉様が方向音痴のくせに、僕の言うことを信じないからではないですか!」
「なんだと貴様! もう一度言ってみろ」
目を凝らしてみると、女性と男性が森の出口で口論をしていた。女性と思しき巨大な影が、小さな人影の胸ぐらを掴んでいる。小さな人影は宙に浮いたまま足をブラブラとさせて苦しがっていた。よく見たら人族の男の子である。慌てて駆け寄り声をかける。
「ご婦人、なにかお困りですか?」
「おい、なに話しかけてるんだよ! レジー!」
ミオは怯えた声で、しかししっかりと俺に着いてきた。
女性は俺の声に気づくなり、男の子を落として、背負った大剣を抜こうと手を振り上げる。女性は巨大で、緑がかった肌が筋肉で盛り上がる、強靭な肉体の持ち主だった。
「ご婦人、レシオン・ド・ミゼルと申します」
敵意がないことをわかってもらうため跪き、手を差し出した。女性は大剣を抜こうとした手を緩めて躊躇いがちに、俺の差し出した手にそっと重ねた。
「レジーとお呼びください」
俺は屈強な女性の手にキスを落とす。
「あ……はあ……はわわわ……」
「ご婦人、お名前をうかがっても?」
「は……あわわ、こんなの……初めて……はわぁ!」
女性はなにがなんだかわからなくなってしまって、名を聞き出すことができない。
「姉様の名は、メア・ディル・ダーガ。僕の名はユキです」
少年ユキは俺の手を払い、慇懃無礼に言い放つ。
「おい、ユキ! 紳士になんて失礼な態度をとるんだ!」
女性の鉄拳がユキの頭に落ちる。俺が呆然としている間にユキの目がみるみると潤んだ。男は外で泣かないという教育なのか、ユキは声を押し殺しポロポロと涙を落としはじめる。
「ごめん……なさぁい……うぐっ……」
姉様というが、種族は全く違う2人。きっとミオと俺のような間柄だとは思うが、教育方針の差に愕然とする。
「俺が悪かった、メア、彼も立派な紳士だ」
「あ、ああ」
メアは顔を逸らし気まずそうに俯く。ユキはしゃくりあげまいとブルブル震えていた。そこにミオが抱きついた。
「俺、ミオ! ユキとおんなじだよ! レジーは俺の兄貴になってくれたんだ。俺もレジーが大好きでずっと一緒にいるんだ。ユキもそうだろ?」
「ふぐえっ、ふ……ふんっ……メアの……弟だげどぉおお! おっぎぐなっでぇ……! メアをお嫁さんに……するうううううあああああん!」
「お嫁さんかぁ……そっか、じゃあレジーが悪いな。ごめんな。こいつこどもで、そういうことなんもわかっちゃいないんだ……」
「メア……メアを取らないでえええ!」
「ビービーうるさい! 私を嫁にしようなんて百年はやいんだよ!」
メアは顔を再度顔を背けたが、緑の肌でもわかるほど顔が赤く、口元が緩んでいる。そして地鳴りのような音が彼女の腹から響き渡った。
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