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第12話 竜神のウロコ
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いつのまにか彼のフワフワの胸の中で眠ってしまったらしい。しかし起きたのは寝藁の上だった。それに体の上にも藁がかけられていた。名前もわからない彼の優しさにジンと心の端が痺れる。
「あ、いたいたー! もう、なにやってんだよ! サニアにすごい怒られただろ!」
ミオの朝を知らせる声が洞窟に響き渡る。よく見るとミオは俺が置き忘れてきた甲冑や武器を背負って息を切らしていた。
「ミオ……具合は大丈夫なのか?」
「具合なんて悪くないって言ってるだろ! サニアの商売邪魔して、おまけに奉仕の途中で逃げ出したっていうじゃないか! 昨日の前金だけじゃなくて、迷惑料もぶん取られたんだぞ!」
「昨日の前金……? ミオは俺を売ったのか?」
ミオはしまったという顔を打ち消すように俯き、そして話題を逸らすかのように叫んだ。
「あ! それどうしたんだよ」
ミオが甲冑や武器をその辺に放り出して、俺の太腿に手を伸ばした。
「竜神のウロコだ! どうせ採集できないからってギルドでも滅多にクエストが出ない希少品だよ! すごいすごいすごい!」
ミオはウロコを両手で摘んで、目を輝かす。何色にも見えるウロコが、ミオの目に映り込み美しい光を放っていた。
「これ売って、家を買おうよ! いや、家を買っても有り余る、しばらくどんちゃん騒ぎできるよ! ああ、でも街を渡り歩いて豪遊も捨てがたいな!」
喜ぶミオの手からウロコをもぎ取り、そしてそれを見つめた。昨日の彼の深い愛情を思い出し、胸がギュッと痛んだ。
「ミオ、何度でも俺を売っていい。ミオが働かなくて済むようにこの大地で俺も職を見つける。だから、ミオはもう出稼ぎをやめるんだ。それに……これを俺から取り上げないでくれ……」
「なんだよ……そんな誰からでも価値がわかる物、レジーの宝物にはならないだろ!」
「もう一度会いたい……」
ミオは口を噤み、困った顔で俺を見る。だからミオを抱き寄せた。
「昨日誰かと一緒にいたのか?」
「ああ……とても美しい人と一緒にいた……」
「レジー、惚れちゃったのか?」
ニヤニヤと笑うミオに問われるも、自分の気持ちを正確に表せる回答を持ち合わせていなかった。
「なんだよ、水臭いな。兄弟なんだからレジーのこと応援するよ!」
ミオはパッと体を離すと、また兄弟のキスで俺の口をくすぐる。
「ミオ、くすぐったい」
「レジーはこどもだな!」
「ああ、まだこどもだ。ミオ、このウロコが生えた種族はなんていうんだ?」
「竜神のウロコっていうんだから竜神だろ? ギルドでもクエスト自体が少ないんだ。希少な種族で、ウロコだったり爪だったり、新陳代謝で抜け落ちたものを採集するクエストがほとんどだよ。特に鱗は万病に効くって重宝されてるらしいぜ」
昨日の彼の言葉を思い出す。定住している種族の方が少ないと。彼もまた各地を転々としているのだろうか。
「竜神に会うためにはどうしたらいい?」
「ギルドでクエストをこなしたら、ギルドメンバーから情報を収集できるんじゃないかな? レジーはナガザノチも討伐できるんだからすぐに稼げるようになるよ!」
ギルドとはクエストという発注の仲買人のようなものなのだろうか。兄弟と言いながらその実、金ヅルとしか思っていないミオが清々しい。
「この大陸の常識も少しは勉強したいしな。じゃあギルドとやらに行くか」
「俺は少し回復魔法が使えるぜ! 2人でガッポリ稼ごう!」
ミオが元気よく拳を振り上げてはしゃいでいる。昨日はどうなってしまうのかと思ったが、元気になってよかった。その件について詳しく聞きたい気持ちもあった。しかし彼の性格上、本当に助けが必要ならば言うだろうし、不要ならば触れてほしくないと思うはずだ。
俺はこの大陸の掟をなにも知らない。それにミオは俺の秘密を暴こうとはしなかった。変な物差しで物事を見るのをやめて、ありのままを見つめよう。ぼんやりと甲冑の紐を結いながら、そんなことを思った。
「あ、いたいたー! もう、なにやってんだよ! サニアにすごい怒られただろ!」
ミオの朝を知らせる声が洞窟に響き渡る。よく見るとミオは俺が置き忘れてきた甲冑や武器を背負って息を切らしていた。
「ミオ……具合は大丈夫なのか?」
「具合なんて悪くないって言ってるだろ! サニアの商売邪魔して、おまけに奉仕の途中で逃げ出したっていうじゃないか! 昨日の前金だけじゃなくて、迷惑料もぶん取られたんだぞ!」
「昨日の前金……? ミオは俺を売ったのか?」
ミオはしまったという顔を打ち消すように俯き、そして話題を逸らすかのように叫んだ。
「あ! それどうしたんだよ」
ミオが甲冑や武器をその辺に放り出して、俺の太腿に手を伸ばした。
「竜神のウロコだ! どうせ採集できないからってギルドでも滅多にクエストが出ない希少品だよ! すごいすごいすごい!」
ミオはウロコを両手で摘んで、目を輝かす。何色にも見えるウロコが、ミオの目に映り込み美しい光を放っていた。
「これ売って、家を買おうよ! いや、家を買っても有り余る、しばらくどんちゃん騒ぎできるよ! ああ、でも街を渡り歩いて豪遊も捨てがたいな!」
喜ぶミオの手からウロコをもぎ取り、そしてそれを見つめた。昨日の彼の深い愛情を思い出し、胸がギュッと痛んだ。
「ミオ、何度でも俺を売っていい。ミオが働かなくて済むようにこの大地で俺も職を見つける。だから、ミオはもう出稼ぎをやめるんだ。それに……これを俺から取り上げないでくれ……」
「なんだよ……そんな誰からでも価値がわかる物、レジーの宝物にはならないだろ!」
「もう一度会いたい……」
ミオは口を噤み、困った顔で俺を見る。だからミオを抱き寄せた。
「昨日誰かと一緒にいたのか?」
「ああ……とても美しい人と一緒にいた……」
「レジー、惚れちゃったのか?」
ニヤニヤと笑うミオに問われるも、自分の気持ちを正確に表せる回答を持ち合わせていなかった。
「なんだよ、水臭いな。兄弟なんだからレジーのこと応援するよ!」
ミオはパッと体を離すと、また兄弟のキスで俺の口をくすぐる。
「ミオ、くすぐったい」
「レジーはこどもだな!」
「ああ、まだこどもだ。ミオ、このウロコが生えた種族はなんていうんだ?」
「竜神のウロコっていうんだから竜神だろ? ギルドでもクエスト自体が少ないんだ。希少な種族で、ウロコだったり爪だったり、新陳代謝で抜け落ちたものを採集するクエストがほとんどだよ。特に鱗は万病に効くって重宝されてるらしいぜ」
昨日の彼の言葉を思い出す。定住している種族の方が少ないと。彼もまた各地を転々としているのだろうか。
「竜神に会うためにはどうしたらいい?」
「ギルドでクエストをこなしたら、ギルドメンバーから情報を収集できるんじゃないかな? レジーはナガザノチも討伐できるんだからすぐに稼げるようになるよ!」
ギルドとはクエストという発注の仲買人のようなものなのだろうか。兄弟と言いながらその実、金ヅルとしか思っていないミオが清々しい。
「この大陸の常識も少しは勉強したいしな。じゃあギルドとやらに行くか」
「俺は少し回復魔法が使えるぜ! 2人でガッポリ稼ごう!」
ミオが元気よく拳を振り上げてはしゃいでいる。昨日はどうなってしまうのかと思ったが、元気になってよかった。その件について詳しく聞きたい気持ちもあった。しかし彼の性格上、本当に助けが必要ならば言うだろうし、不要ならば触れてほしくないと思うはずだ。
俺はこの大陸の掟をなにも知らない。それにミオは俺の秘密を暴こうとはしなかった。変な物差しで物事を見るのをやめて、ありのままを見つめよう。ぼんやりと甲冑の紐を結いながら、そんなことを思った。
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