皇帝に追放された騎士団長の試される忠義

大田ネクロマンサー

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第29話 雨の日の鳥

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 目が覚め、起きあがろうとして、片腕が無くなったことを思い出す。そして、ぱっちり目の開いたミオを見て、それも夢ではなかったと思う。雨音がまだ屋根を打つのに、窓からは柔らかな光が漏れていた。

「ミオ、おはよう」

 ミオはいつものように朝に騒ぎ立てなかった。ただ気まずそうに俺を見つめているだけでなにも話そうとしない。

「すごく、気持ちがよかった。俺はもうミオの宝物になれたのか?」

 ミオは頷くか頷かないかわからないほど微妙に頭を動かし、蚊の鳴くような声でつぶやいた。

「怒ってないの?」

「ミオに? なぜ? すごく気持ちよかった。ミオに教えてもらってばかりだな」

 ミオは涙を浮かべて黙った。ずっと隠していたことを気に病んでいるのだろう。しかし、今思い返せば、合点のいくことばかりだった。それに、ミオと竜神の痛々しいほどの愛を感じずにはいられなかった。

「途中でどうにもならなくなったんだろう。ミオらしい。でも……」

「でも?」

 不安そうな顔でミオは俺に顔を寄せる。

「嬉しかった。秘密を教えてくれて。ミオはなぜその格好をしているのだ?」

「あの姿だと……孤独で……。淫魔に擬態方法を習ったんだ。それで街で行き倒れていた男の子に、姿も名前も生い立ちも借りたんだ」

「じゃあ娼館で働いていたのもその男の子の経歴か」

「うん……そういうことしようとすると、昨日みたいになっちゃうから……」

 娼館で働けない理由が壮絶で、笑ってはいけないのだが、吹き出してしまった。

「でも、凱旋の隊列でレジーを見たのは本当なんだ。ホテルの2階から見たんだけど、レジーがかっこよくて……ホテルで昨日みたいな姿になっちゃって……」

「ホテルは壊れなかったのか?」

「ギチギチだったよ。だから、レジーがこの部屋作ってくれて……すごく……」

 涙が一粒落ちたから、俺は片手でそれを拭った。

「ミオは俺に抱かれたいのかと思っていたよ」

「そう言えば、この姿の方を好きにならないかと思って……」

 チグハグなミオの言動が全て解明し、そのいじらしさに胸が焦がされる。キスをしたいが体が動かない。だから俺が唇を少し尖らせると、ミオはそこにキスをしてくれた。しかしやはりくすぐったい。

「それもわざとそうしているのか?」

「わざとじゃないよ! レジーがこどもなだけだろ!」

 俺はミオの頬を何度か撫でて、そして唇にキスをする。昨日竜神としたそれのように、丁寧に舌を差し入れ、何度も何度も中で交わる。

「あ……らめぇ……れりー……あっ!」

 ミオは俺を突き放したかと思ったら、みるみるとツノや鱗を生やし、大きくなった。

「はは、本当だ。朝見ると鱗がとても綺麗だな」

「こうなったら半日は戻らないんだぞ! レジーのそういうところがこどもだって言ってるんだよ!」

 竜神の声でミオの言葉を喋る。それが愛おしくて仕方がなかった。

「ミオ、起こしてくれるか?」

「もう! 午前中どうするんだよ! 俺の助けがなければどうにもならないのに!」

 ミオは怒りながら俺を引き起こし、フワフワの胸に抱き寄せる。

「ミオ、このまま抱いてほしい。そうされたいと、ずっと思ってたんだ」

「え……?」

「愛してる」

「俺が! 俺が先に言おうと思ってたのに! なんでレジーが先に言うの!?」

「してくれないのか?」

「する、したいよ! レジー、俺のレジーなんだ、ああ、ああ、でもなんで先に言うの?」

「ずっと言ってくれてただろ。ミオ、ありがとう」

 ミオは急に大人しくなり、そして俺は意識を失うまで抱かれた。長く揺さぶられたせいで、意識を取り戻した後は気分が優れず、またミオの回復魔法の世話になる。

 ミオは甲斐甲斐しく俺に付き添い、そしてポツリと言ったのだ。

「レジー、腕を取り返しに行こう」
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