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番外編:レジーの秘密
赤さび病
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ことの発端は一緒に働いているオークのこどもが、収穫前の小麦の葉がおかしいと騒ぎ立てたことだった。調べてみるとそれは赤さび病。低温で雨が多い時期に発生率が上がる、カビによる病気だった。
この病気を知るまでミオはおろか俺ですら雨量について考えたことがなかった。帝国は一部砂漠地帯もあることから雨は貴重な水源だった。雨など多ければ多いほどいいと思っていた節すらある。
2人で本を開き、この病気にたどり着いた時、黙り込んでしまった。心当たりしかなかったからだ。
「レジー、言いづらいと思うから先に提案なんだけどさ。サニアに言って、時々ダーニャを借りてくるよ」
ミオは俺を慮り、定期的な発情期には我慢をすると提案してくれる。俺はその親切に痛み入りながらも、甘えることにした。ミオに抱かれているという役割と事実から、俺はミオさえ我慢すればやり過ごせると思っていたし、自分自身そのくらいの節度がある人間だと勘違いしていた。
「ミオ、そろそろ寝るぞ」
「うん、ちょっと待って」
ミオはいつものように宝物を棚に並べている。この光景のあと、決まって肌着を脱ぎ捨てて走ってきてくれるのだが、最近はそれがない。なんだかそれが気まずくて2人の間に変な空気が流れてしまう。
「ミオ、今度メアとユキに農場を任せて、旅行にでも行かないか?」
かなり屈折していたが、自分にしてはとても率直な言葉で誘いを切り出せたと思う。しかし帰ってきた返事は斜め上の論法だった。
「レジー、もしかして東の高山に行こうとしてる? 人族やオークはあの宝石で喜ぶかもしれないけどさ、俺たちの石はあんな誰でも喜ぶ石じゃダメなんだ! レジーはちっともわかってないな!」
ミオは独自の価値観を披露しながら乱暴にベッドに入ってきた。そして唇をくすぐるようにキスをして俺の頭を抱いて胸に引き寄せる。
ミオの胸は出会った時から懐かしい匂いがする。今思えば竜神からも同じ匂いがするはずなのに、どうしてミオが正体を明かす時までわからなかったのだろう、と不思議に思う。
すんとミオの匂いを嗅ぐ。するとミオと出会ってから今までの、さまざまな出来事が脳裏をよぎった。そしていつだってミオが求めてくれて、自分から誘ったことがないことに思い当たる。
ーーなんで! なんで!? レジーはさ、自分がしたい時にしかしてくれないの!?
ミオがそうしたいと願う時に、何度も断ってきた事実が重くのしかかる。そうやってモヤモヤと考えているうちに、下半身に血が集まりはじめてしまった。匂いから気を逸らすため、寝返りを打つ。
「レジー?」
「ああ、ちょっと腹が痛くて……」
どうにもならなくなってベッドから抜け出そうと立ち上がる。
「え? じゃあ回復魔法使ってあげるからこっちきて」
「いや……少し経てばすぐ治るから大丈夫だ……」
「え……どこ行くの?」
後ろからミオが抱きついたその時、取り繕うこともできない場所に、ミオの手が当たった。慌てて手を払うが、時はすでに遅し。またあの気まずい空気が背後から覆い被さってきた。
「すぐ戻ってく……」
俺が言っている間に、背後から布が裂ける音がする。慌てて振り返るとミオが竜神になりかかっていた。
「ああ、また肌着を破いちゃった……」
高音が入り混じる不思議な竜神の音が響き、窓から差し込む月明かりで、鱗の緑が眩く部屋を照らす。
「旅行ってそういう意味だったんだ……思いつきもしなかった。レジー、俺のレジー。今から行こう?」
返事も待たずに、竜神は俺の体を片手で掴んで、窓を開け放つ。
「ミオ! ど、どこへ行くんだ!?」
俺の疑問などミオにはもう聞こえていなかった。バルコニーに出たと思ったら、急降下して去年の藁をもう片方の手で掴む。そうかと思えば今度は急上昇した。ミオの胸で藁にまみれながら、夜空に舞い上がった。
この病気を知るまでミオはおろか俺ですら雨量について考えたことがなかった。帝国は一部砂漠地帯もあることから雨は貴重な水源だった。雨など多ければ多いほどいいと思っていた節すらある。
2人で本を開き、この病気にたどり着いた時、黙り込んでしまった。心当たりしかなかったからだ。
「レジー、言いづらいと思うから先に提案なんだけどさ。サニアに言って、時々ダーニャを借りてくるよ」
ミオは俺を慮り、定期的な発情期には我慢をすると提案してくれる。俺はその親切に痛み入りながらも、甘えることにした。ミオに抱かれているという役割と事実から、俺はミオさえ我慢すればやり過ごせると思っていたし、自分自身そのくらいの節度がある人間だと勘違いしていた。
「ミオ、そろそろ寝るぞ」
「うん、ちょっと待って」
ミオはいつものように宝物を棚に並べている。この光景のあと、決まって肌着を脱ぎ捨てて走ってきてくれるのだが、最近はそれがない。なんだかそれが気まずくて2人の間に変な空気が流れてしまう。
「ミオ、今度メアとユキに農場を任せて、旅行にでも行かないか?」
かなり屈折していたが、自分にしてはとても率直な言葉で誘いを切り出せたと思う。しかし帰ってきた返事は斜め上の論法だった。
「レジー、もしかして東の高山に行こうとしてる? 人族やオークはあの宝石で喜ぶかもしれないけどさ、俺たちの石はあんな誰でも喜ぶ石じゃダメなんだ! レジーはちっともわかってないな!」
ミオは独自の価値観を披露しながら乱暴にベッドに入ってきた。そして唇をくすぐるようにキスをして俺の頭を抱いて胸に引き寄せる。
ミオの胸は出会った時から懐かしい匂いがする。今思えば竜神からも同じ匂いがするはずなのに、どうしてミオが正体を明かす時までわからなかったのだろう、と不思議に思う。
すんとミオの匂いを嗅ぐ。するとミオと出会ってから今までの、さまざまな出来事が脳裏をよぎった。そしていつだってミオが求めてくれて、自分から誘ったことがないことに思い当たる。
ーーなんで! なんで!? レジーはさ、自分がしたい時にしかしてくれないの!?
ミオがそうしたいと願う時に、何度も断ってきた事実が重くのしかかる。そうやってモヤモヤと考えているうちに、下半身に血が集まりはじめてしまった。匂いから気を逸らすため、寝返りを打つ。
「レジー?」
「ああ、ちょっと腹が痛くて……」
どうにもならなくなってベッドから抜け出そうと立ち上がる。
「え? じゃあ回復魔法使ってあげるからこっちきて」
「いや……少し経てばすぐ治るから大丈夫だ……」
「え……どこ行くの?」
後ろからミオが抱きついたその時、取り繕うこともできない場所に、ミオの手が当たった。慌てて手を払うが、時はすでに遅し。またあの気まずい空気が背後から覆い被さってきた。
「すぐ戻ってく……」
俺が言っている間に、背後から布が裂ける音がする。慌てて振り返るとミオが竜神になりかかっていた。
「ああ、また肌着を破いちゃった……」
高音が入り混じる不思議な竜神の音が響き、窓から差し込む月明かりで、鱗の緑が眩く部屋を照らす。
「旅行ってそういう意味だったんだ……思いつきもしなかった。レジー、俺のレジー。今から行こう?」
返事も待たずに、竜神は俺の体を片手で掴んで、窓を開け放つ。
「ミオ! ど、どこへ行くんだ!?」
俺の疑問などミオにはもう聞こえていなかった。バルコニーに出たと思ったら、急降下して去年の藁をもう片方の手で掴む。そうかと思えば今度は急上昇した。ミオの胸で藁にまみれながら、夜空に舞い上がった。
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