生きるのがツラくてなにが悪い!

大田ネクロマンサー

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 椎名君は横に寝転び、僕を抱き寄せて背中を撫でてくれる。嗚咽に加え、トキメキ呼吸困難でライフゲージが底についていた。

「俺が嫉妬してやるから、抱かれた時の話してよ」

 理不尽な要求なのに、嫉妬してくれるのかぁと検討している自分が恨めしい。

「ひっ……抱かれて……ない……」

「え?」

「ううっ……入らなくて……ふっ……ボコボコにされた……んぐっ……だからそれから……」

「ボコボコって……」

 椎名君は一層僕を強く抱きしめて、僕の襟足を撫でた。

「誰も……抱いてくれない方がっ……つらいっ……ひーん」

 椎名君に嫉妬されるような話一つない、つまらない人生だった。出会い系で出会った人にも見向きもされず、ボコボコにされた恐怖から自分を押し殺して普通の生活に戻った。普通に進学し、普通に就職し、希望の部署に入れなくても妥協して楽しいと思い込む。趣味の部屋には何もなくて、楽しいと思うことなんてなにもないのくせに、自分が何者にもなれなかった36歳だという事実に打ちひしがれる、くだらない人間だった。

 椎名君は背中を撫でていた手を腰に回して僕の下半身を抱き寄せた。椎名君の男らしい熱が僕の下半身に伝わって、またパニック状態に陥る。

「おっさんまだ、そいつのこと好きなの? こどもの時から好きだった人……」

 約束通り嫉妬してくれる椎名君が優しすぎてつい大声を出してしまう。

「椎名君の方が! 10倍かっこいいよぉっ!」

 よくわからない呻き声のようなものが聞こえたと思ったら、椎名君が嗚咽の治った僕にキスをしてくれる。今度は唇をつけたら、そこを柔らかい舌が伝ったから、僕は口を少し開いた。

 少しだけ椎名君は体全体を震わせ、それに気を取られているうちに、舌が僕の唾液を求めるように伸びてきた。幸せすぎて震える僕の舌の形を確かめるように、口の中で絡み合う。椎名君は僕の口の中でまた小さな呻き声をあげたと思ったら、僕の股間に椎名君の男らしいそれを押しつけた。僕のそれは無邪気に椎名君だー! と暴れているのが非常に恥ずかしくて、椎名君の胸あたりの服をギュッと掴む。

「俺の誕生日に……おっさんのはじめてを……くれよ。そうしたらおっさんも捕まらないだろ」

 気絶しかかった。イケメンすぎて、ライフというか、一機死んだ。36歳の呪われた処女をそんな大切なもののように言ってくれるなんて……。

「そんなこといわれたら……おじさんは最高の誕生日……演出しちゃうんだから……」

「してよ」

 その色気200パーセントの声に焼かれ残機がなくなった。

「でも、早生まれで誕生日まだ先だから」

「椎名君の誕生日っていつなの?」

「1月24日。おっさんは?」

「3月28日……」

「2人とも遠いな……少しだけさ……」

 そう言って椎名君は少し体を離した。僕の顔を覗き込み、熱い椎名君の手が僕の顔を覆う。意識がぎゅーんと遠のいたけど、その手が僕のシャツのボタンに下った時、トキメキ呼吸困難で復活した。ボタンにかかった手を掴む。

「怖い……?」

「あ……ちがっ……エステ……いきたい……」

「俺のために?」

 椎名君は僕の答えを待たずにキスで口を塞ぐ。口の中を舌で撫でまわされている間にボタンが、一つ、また一つと外され、4個目くらいのが外された時、椎名君が急に前を開けて首筋に食らいついた。その荒々しい熱量に僕は情けない声を上げてしまう。

 椎名君が僕の肌を貪りながら下っていく。寂しい36歳が1人開発をしていることがバレるのを恐れている一方で、椎名君に犯されるのを期待してしまう。椎名君が熱い吐息を吹きかけながら、僕の胸の先端に向かっていく。

「あ……あっ……椎名君……」

 名前を呼んだその瞬間、体中に刺激が駆け巡る。椎名君が呻きながら胸の先端を咥えて、熱い舌でベロっと撫であげる。

「んんっ……!」

 恥ずかしくて声を我慢してたら、下から手が伸びてきて顔の位置を確かめるように弄られる。椎名君の屈強な指が一本僕の口に突っ込まれ、口が半開きになってしまった。

「声、我慢するな」

「あっ……あっ……らめて……」

 じゅるっといやらしい音が響いて、胸の先端に勃ったそれをきつく吸われる。そんなに激しくしたら、もうダメ、椎名君にバレちゃう。パニックと快楽で頭の中大混乱でいる時に、椎名君の熱い手が顔から離され、迷うことなく僕の下着に急行した。

「あ、ああ、ダメ、椎名君……!」

 全然準備とかしてないし、そんなことされたらもうイっちゃうよーーーー!



「おっさん?」

 冷静な椎名君の声で我に返る。え? なに?

「おっさん寝ちゃったから、勝手に食材使わせてもらったよ」

 よく見ると布団がキチンと掛けられ、ビシッと手を腰の横につけて寝転がっていた。

 ガッバァ! と起き上がる。

「え? どこから……? どこから夢?」

 例えようのない不安が襲い、僕はシャツの胸元を握る。シャツはきっちりしまっている。混乱してまた泣き出しそうになる。浅い息をしていたら椎名君がベッドの端まで歩いてきて、僕の頭を撫でながら横に座ってくれた。

「どんな夢見てたの?」

「椎名君の誕生日は1月24日?」

「うん、誕生日におっさんのはじめてもらう」

 僕は涙目になる。

「おっさんの誕生日は3月28日。おっさんはなにがほしい?」

「エステは……?」

「エステ? エステ行きたいの?」

 そうか……。自分の誕生日言った時寝たんだ。

「どんな夢見たのか後で教えてよ。ご飯食べよ」

 なんという夢オチ。僕にまた優しいキスをしてくれるこの瞬間も夢なんじゃないだろうか。そう思うと胸がぎゅーっとなって、でも、椎名君が言ってくれた大事なことは夢じゃなかったんだって思ったらもっと痛くなった。
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