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客層がおかしい件
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14時ぴったりにいつものビルの前で立ち往生している。僕はタバコを嗜まないので喫茶店というものにあまり入らない。喫茶店でコーヒーを飲む場合1時間居座るのは図々しいのだろうか? いやしかし椎名君のウェイター姿を観察するには1時間では足りない。実は13時くらいからこの辺をウロウロしている。ついでに言うと、午前中にスーパーで売っている全種類の水を買ったりしていて、正直もう座りたい。
その時にスマホがブルブルした。
椎名:おっさんマダー?
そのメッセに僕の足がブルブルした。意を決してビルに足先を向けた。
ビルは1、2階のテナントから上はオフィスビルで、最上階付近に飲食店がある構造だった。日曜の今日はガランとしていて、そしてこのビルは駅へ向かうメインストリームでもない立地条件。こんな条件の場所で土日に喫茶店が儲かるのだろうか? と疑問に思った。
しかし、店に入って事態を把握した。喫茶店自体は我々中年サラリーマンが愛する古き良き内装、多分ウィークデイは僕のようなおっさんで賑わっているのだろう。しかし今日は明らかに違う客が店内にひしめき合っていた。
「いらっしゃいませ、おっさん。もう来ないのかと思ったよ」
眩いウェイター姿で目配せをする、椎名君。とてもかっこいい。 この100%女性客の理由は君かい?
「好きな席に座って! サービスするからちょっと待ってて」
眩しい笑顔で椎名君はカウンターの方に引っ込む。その動向を店中の女性が目で追っていた。
漫画かなんかなのかな。
僕は肩身の狭いリーマンらしく端っこの席に座る。本当はカウンター近くが良かったが、若いお姉さまたちが占拠していて、その激戦区に参戦する勇気が出なかった。店内を見渡してもまぁ可愛らしいお嬢様の多いこと。皆さんここに来るためだけにガチ目のフルメイクしてるのだろう。
椎名君がトレンチにお冷やとカップソーサーを乗せて歩いてくる。歩いてくる姿がまたかっこいい。なんなのその制服、椎名君のためにあつらえたの?
椎名君が僕の席にお冷やとコーヒーを置く。
「え……?」
「サービスするって言っただろ? なかなか居づらいだろうからさ。ミルクいる?」
「あ、大丈夫。いつもこんな感じなの?」
「ああ、うん。でも安心しただろ? 女しかいないから」
できねーよ!! なんなのその理論!?
「もうすぐ上がるからちょっと待ってて」
「あ、うん。コーヒーありがとう」
「あ、後でママさんにお礼して」
ママさん!? ねぇここそういう店なの!? こいつら全員男の娘なの!?
僕はヤキモキしながら椎名君を見守る。結構広いフロア内でウェイターも多分中のホールスタッフも1人だった。でもテキパキと接客をするからか、客の流れはスムーズだった。
予定よりも早く椎名君は姿を消して、お嬢様方のどよめきを背に私服で僕の席まで歩いてくる。
「おっさん、そろそろいこ?」
「は、はい。あの、ママさんにお礼したいな」
「うん」
椎名君は嬉しそうに笑って、僕の手を引っ張っていく。お嬢様方の視線が一気に変わる。あれがお父さん? お兄さんにしては歳離れすぎじゃね? みたいな声が嫌でも耳に入ってくる。
店の入り口のレジに立たされて椎名君が腰くらいの高さの戸から誰かを呼んだ。
「あらあら、今日は来てくださってありがとうございました。椎名君にはとてもお世話になっています」
小さな戸から腰を折って出てきたのは、50過ぎの綺麗なママさんだった。不思議なオーラはあるがどう考えても素敵な女性だった。
「この通り椎名君が居ないと土日が成り立たないので、無理言って短いシフトでも来てもらっているんです」
ママさんは僕が椎名君の父親かなんかだと思っているのだろうか。
「今日はご馳走様でした。この辺に勤めているので、平日また来させていただきます」
「あらー、土日もまた迎えに来てくださいね。1日デートしたいでしょうに、本当に申し訳ないわ」
デデデデート!?
「じゃあお疲れ様です」
椎名君が突然そう言って僕の手を引いて歩き出す。
「はい、お疲れ様~」
ママさんも至って普通で、慌ててもう一度お礼を言っている間に店の外に連れ出された。
「し、椎名君、手っ」
「なに? 嫌なの?」
乱暴にエレベーターのボタンを押しながら椎名君が睨む。その後ろでエレベーターの扉が開いた。
「椎名君、ママさんには僕のことなんて言ってあるの?」
「いいだろ、なんだって。いくぞ」
乱暴に手を引っ張られてエレベーターに乗る。なんだってよくない。そう言いたいけど椎名君がなんか殺気立ってて言い出せなかった。
「おっさんは、すぐ悲しそうな顔するな」
僕の顔を見てどうしたらいいかわからず、またパニック状態になる。オロオロしてたら、椎名君の顔が突然近づいてきた。唇に柔らかい感触があって、そのあと熱い掌が僕の顔を覆う。
「また、来てくれるだろ?」
僕はブンブン頭を縦に振って、また来ることを約束する。
「し、椎名君のウェイター姿の写真も欲しい!」
「ん? ああ、店のホームページに載ってるよ?」
「ええ!?」
なんなの椎名君は肖像権とかないフリー素材なの!? 慌ててスマホでブラウザを立ち上げて検索する。
「おっさん、操作速いじゃん」
「いつも緊張しているだけで、椎名君が思ってるほどおじさんじゃないんだから!」
「必死かよ」
店のホームページに行くとトップページにデカデカと椎名君の写真が載ってた。会いに行けるアイドルかよ。これのロイヤリティちゃんともらってるの!?
「ママさんにはすごくお世話になってるから、なんか雑誌の取材かなんか来たときの写真をもらって載せてもらったんだ」
「雑誌の取材!? っていうか椎名君は顔出し全然オッケーなの?」
「別に減るもんじゃねーしいいだろ。ママさん客が増えたって喜んでたし」
いやいやいや、謎が解けたよ。こりゃあんな客層になるわ。
「おっさんが嫌だったらやめるよ」
「いや、いいんだ。詳しくは家に着いたら話そう!」
椎名君が僕の顔を見て、お? と声を漏らした。優しく笑って扉が開いたエレベーターから僕を連れ出してくれる。
その時にスマホがブルブルした。
椎名:おっさんマダー?
そのメッセに僕の足がブルブルした。意を決してビルに足先を向けた。
ビルは1、2階のテナントから上はオフィスビルで、最上階付近に飲食店がある構造だった。日曜の今日はガランとしていて、そしてこのビルは駅へ向かうメインストリームでもない立地条件。こんな条件の場所で土日に喫茶店が儲かるのだろうか? と疑問に思った。
しかし、店に入って事態を把握した。喫茶店自体は我々中年サラリーマンが愛する古き良き内装、多分ウィークデイは僕のようなおっさんで賑わっているのだろう。しかし今日は明らかに違う客が店内にひしめき合っていた。
「いらっしゃいませ、おっさん。もう来ないのかと思ったよ」
眩いウェイター姿で目配せをする、椎名君。とてもかっこいい。 この100%女性客の理由は君かい?
「好きな席に座って! サービスするからちょっと待ってて」
眩しい笑顔で椎名君はカウンターの方に引っ込む。その動向を店中の女性が目で追っていた。
漫画かなんかなのかな。
僕は肩身の狭いリーマンらしく端っこの席に座る。本当はカウンター近くが良かったが、若いお姉さまたちが占拠していて、その激戦区に参戦する勇気が出なかった。店内を見渡してもまぁ可愛らしいお嬢様の多いこと。皆さんここに来るためだけにガチ目のフルメイクしてるのだろう。
椎名君がトレンチにお冷やとカップソーサーを乗せて歩いてくる。歩いてくる姿がまたかっこいい。なんなのその制服、椎名君のためにあつらえたの?
椎名君が僕の席にお冷やとコーヒーを置く。
「え……?」
「サービスするって言っただろ? なかなか居づらいだろうからさ。ミルクいる?」
「あ、大丈夫。いつもこんな感じなの?」
「ああ、うん。でも安心しただろ? 女しかいないから」
できねーよ!! なんなのその理論!?
「もうすぐ上がるからちょっと待ってて」
「あ、うん。コーヒーありがとう」
「あ、後でママさんにお礼して」
ママさん!? ねぇここそういう店なの!? こいつら全員男の娘なの!?
僕はヤキモキしながら椎名君を見守る。結構広いフロア内でウェイターも多分中のホールスタッフも1人だった。でもテキパキと接客をするからか、客の流れはスムーズだった。
予定よりも早く椎名君は姿を消して、お嬢様方のどよめきを背に私服で僕の席まで歩いてくる。
「おっさん、そろそろいこ?」
「は、はい。あの、ママさんにお礼したいな」
「うん」
椎名君は嬉しそうに笑って、僕の手を引っ張っていく。お嬢様方の視線が一気に変わる。あれがお父さん? お兄さんにしては歳離れすぎじゃね? みたいな声が嫌でも耳に入ってくる。
店の入り口のレジに立たされて椎名君が腰くらいの高さの戸から誰かを呼んだ。
「あらあら、今日は来てくださってありがとうございました。椎名君にはとてもお世話になっています」
小さな戸から腰を折って出てきたのは、50過ぎの綺麗なママさんだった。不思議なオーラはあるがどう考えても素敵な女性だった。
「この通り椎名君が居ないと土日が成り立たないので、無理言って短いシフトでも来てもらっているんです」
ママさんは僕が椎名君の父親かなんかだと思っているのだろうか。
「今日はご馳走様でした。この辺に勤めているので、平日また来させていただきます」
「あらー、土日もまた迎えに来てくださいね。1日デートしたいでしょうに、本当に申し訳ないわ」
デデデデート!?
「じゃあお疲れ様です」
椎名君が突然そう言って僕の手を引いて歩き出す。
「はい、お疲れ様~」
ママさんも至って普通で、慌ててもう一度お礼を言っている間に店の外に連れ出された。
「し、椎名君、手っ」
「なに? 嫌なの?」
乱暴にエレベーターのボタンを押しながら椎名君が睨む。その後ろでエレベーターの扉が開いた。
「椎名君、ママさんには僕のことなんて言ってあるの?」
「いいだろ、なんだって。いくぞ」
乱暴に手を引っ張られてエレベーターに乗る。なんだってよくない。そう言いたいけど椎名君がなんか殺気立ってて言い出せなかった。
「おっさんは、すぐ悲しそうな顔するな」
僕の顔を見てどうしたらいいかわからず、またパニック状態になる。オロオロしてたら、椎名君の顔が突然近づいてきた。唇に柔らかい感触があって、そのあと熱い掌が僕の顔を覆う。
「また、来てくれるだろ?」
僕はブンブン頭を縦に振って、また来ることを約束する。
「し、椎名君のウェイター姿の写真も欲しい!」
「ん? ああ、店のホームページに載ってるよ?」
「ええ!?」
なんなの椎名君は肖像権とかないフリー素材なの!? 慌ててスマホでブラウザを立ち上げて検索する。
「おっさん、操作速いじゃん」
「いつも緊張しているだけで、椎名君が思ってるほどおじさんじゃないんだから!」
「必死かよ」
店のホームページに行くとトップページにデカデカと椎名君の写真が載ってた。会いに行けるアイドルかよ。これのロイヤリティちゃんともらってるの!?
「ママさんにはすごくお世話になってるから、なんか雑誌の取材かなんか来たときの写真をもらって載せてもらったんだ」
「雑誌の取材!? っていうか椎名君は顔出し全然オッケーなの?」
「別に減るもんじゃねーしいいだろ。ママさん客が増えたって喜んでたし」
いやいやいや、謎が解けたよ。こりゃあんな客層になるわ。
「おっさんが嫌だったらやめるよ」
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