生きるのがツラくてなにが悪い!

大田ネクロマンサー

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眠れないなら仕方がない(※)

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「昨日また寝なかっただろ」

 ギックゥ! と効果音が可視化されるほど体を縮こまらせてしまう。

「だ、だって」

「だってもクソもねーよ」

 椎名君はガッバァと僕の膝をすくってまたお姫様抱っこをする。屈強な体躯に抱え上げられるのはすごくロマンがあったけど、実際やられてみると心臓に悪い。

 ベッドに放り込まれたあとも、既視感があった。椎名君は僕の唇を奪って、シャツのボタンを外し始めた。

「椎名君!」

「昨日言ったよな?」

「違う……」

「あの資料どんだけ時間かかったんだよ」

「だって! どうせ椎名君のこと考えてたら、眠れないんだから!」

 椎名君は口をへの字にして顔を少し離した。

「僕も……楽しみにしてたんだから……」

「なにを?」

「椎名君と……エッチなこと……」

 それは最後まで言わせてもらえなかった。ボタン吹き飛ぶ勢いで椎名君が僕の前を開ける。

「し、椎名君!」

「なんだよ!」

「お、お風呂入らせてぇ……お願いぃ……」

 椎名君は虚を衝かれたような顔をして、そしてあの独特な顔をした。

「よく洗ってこいよ。全部触るからな」

 手を引いて、僕を起き上がらせる。そのまま勢い余って椎名君の胸に飛び込んだ。椎名君が僕を優しく抱きしめてくれるから、ドキドキで頭がおかしくなったんだと思う。ビクビクしながら椎名君の背中に手を這わせたら、もっときつく抱きしめてくれた。椎名君の体は表面はすごく柔らかいのに、思った以上に中身が詰まってて逞しく太かった。

「あ……あ……」

 なにか言わなければと思うのに、頭が真っ白で断片的な発声しかできない。

「風呂入ってる間、晩飯用意しとくから。そうしたらもっとおっさんといられるだろ」

 耐えきれなくなって、椎名君を抱きしめる。お? と椎名君の声が胸から聞こえた。頭を撫でられ腰を引き寄せられる。椎名君が早く風呂に入ってこいと下半身を熱くさせているのが、すごく嬉しかった。永遠にこうしてたいと思うのに、椎名君は立ち上がり、キッチンに引っ込んでしまった。

 風呂の中で思う。

 本番のないエッチとはどの程度のことを指すのか。おじさんは経験がないので全くわからないぞ。髪の毛をガシガシ洗い、体をゴリゴリ洗うときにふと自分の尻に手を伸ばす。そこで疑問が浮かんだ。椎名君は経験があるのだろうか。

 顔をブンブン横に振って変な疑問を吹き飛ばす。自分だって誰でもいいと行為に挑んだことがあるのだ。それを棚に上げてどうこう言う筋合いはない! その割り切りが全ての決断に至り、本番さながらの準備を完了して風呂を出た。

 キッチンの椎名君のところに行ったら僕を見るなり椎名君は爆笑した。何事かとオロオロしてたら、椎名君は僕をそっと抱く。

「なんでさっきと同じ格好なの? もっと脱がしやすい方が初心者に優しいと思わない?」

「な!」

 椎名君がほっぺたにかじりつく。ほっぺたを吸ったらそのまま耳にキスをしてくれた。

「夕飯は……?」

「まだ米炊けてないよ」

 そう言いながら僕のボタンに手をかける。恥ずかしさから自分の襟元を両手で掴んで抵抗したら、椎名君は僕の腰に手を回してベッドまで連れ去ってくれた。

 ベッドのある部屋についたら椎名君は後ろから抱きついて僕のボタンを外し始める。

「は、恥ずかしいよ……」

「ん……」

 椎名君は僕の首筋にキスを落とす。いつのまにか前は全て開けられて、任務が完了した手は僕の下半身に触れていた。ゆっくりそっと添えられる手が服の上からでも熱いのがわかる。やわやわと形を確かめるように揉みしだかれ、僕は内股になり、そして前屈みになったところで椎名君は僕をそっとベッドに寝かせた。

 寝そべった僕に覆いかぶさったら、僕の手をとり椎名君の顔に誘導する。僕の手はブルッブル震えていた。

「おっさんも触って」

 そう言われて椎名君の頬に僕の手が置き去りにされた。綺麗な顔を触ることは罪悪感が大きいのに、少し撫でると嬉しそうに笑うから、僕は夢中で椎名君の顔を触ってしまう。

 片手では足りなくてもう片方を上げた時、椎名君はゆっくり頭を下げた。椎名君の頭を包んで僕たちは長いキスをする。僕は椎名君の舌が待ち遠しかった。それがバレるのが恥ずかしいのに口を少し開けて催促する。椎名君はまたよくわからない唸り声を上げて僕の口の中を緩やかに犯してくれる。椎名君が僕の顔を包んだら急に顔を上げた。

「おっさん、また泣いてる」

 椎名君は僕が泣き虫なのをカッコ悪いと思うのだろうか。

「し……幸せで……」

 そっか。そう言って椎名君は鼻を僕の鼻にこすり合わせる。ひとつ軽いキスをしたら僕の顎に唇を引っ掛けながら、下に移動していった。
 椎名君の熱い舌でどこにいるのかすぐにわかる。僕の胸の先端に舌が触れる。夢で感じたそれよりももっと焼かれるように熱くて、戸惑って声が出ない。

「おっさんの肌、柔らかいな」

「んんっ」

 椎名君の手がゆっくり下に伸びる。待ちわびてた僕の昂りが椎名君の手に伝わるのが恥ずかしくて、掴んでいた肩あたりのシャツをギュッと掴んだ。椎名君はそれを勘違いして起き上がる。

 椎名君はダボダボのシャツの裾を掴んで一気に服を脱ぐ。飛び込んできた光景に、僕は息を飲んだ。あのダンスを支えていたバランスの良い筋肉を目の当たりにして、つい言葉が溢れる。

「か……かっこいい……」

「ん……触る?」

 僕がガクガク頷くと、椎名君は再び僕に覆い被さり、僕を優しく抱きしめてくれる。椎名君の胸が熱い。人肌ってこんなに幸せになるんだ。

「あったかい……」

 自然と背中に手が伸びる。椎名君の背中に手がついたら、肌が震えた気がした。

「すぐ泣く……」

 椎名君が顔を覗き込んで困った顔をする。おじさんが涙脆いのは許してほしい。

「ごめん……」

「泣いても今日は全部触るぞ」

「うん……うん……」

 椎名君はここから遠慮がなくなった。
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