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乱反射
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椎名君の思いもよらない告白に僕は久しぶりに緊張した。椎名君の胸に当てていた手を無意識に握ってしまう。それに気がついた椎名君が優しく笑って、頭を撫でてくれる。
「踊ってる時に毎回見てるおじさんがいるなって気がついてたけど、遅刻して学校行った時に駅の前でおっさん見たことあるんだ」
「え、椎名君通学って電車使うの?」
「うん、おっさんの家の駅の先だよ」
「そっかぁ。じゃあ、僕の家ダンス練習するのもってこいだね!」
椎名君は少し笑う。
「おっさんは多分出勤途中だったと思うけど、夜見るおっさんとは別人みたいに目が死んでてさ……」
思い出してか椎名君がクククと笑い出す。朝は概ね死んだ目をしていることは想像がつく。見られていたことに恥ずかしくてそのまま無言を貫いてしまった。
「俺が見た時丁度、横断歩道の前で外国人に道かなんか聞かれて結構時間取られてたんだよ。でもおっさんにお礼して駅に向かう外国人をいつまでも見送ってて。時計見て振り返った時、すごく目がキラキラして……その後もニッコニコして歩いててさ」
理屈なんてないんだけど、そう言って椎名君は僕を一層強く抱きしめる。
「おっさんが俺を見る時、目がキラキラしてるのが嬉しいんだ。だから……」
だから。その後に続くいろんな文脈が、今までの椎名君との時間の分だけプリズムのように拡散していく。
だから僕に声をかけてくれた。だから僕が悲しそうな顔をするのが嫌だった。だから僕のことを好きになってくれた。
だから、だから。椎名君の目が輝いてた。
分岐していく文脈を追うたびに激しい衝撃が襲い、僕はいてもたってもいられなくなる。胸の前で固く握ってた手を椎名君の背に這わせてギュッとしがみつく。
「椎名君と……いると……おかしくなりそうなんだ……嬉しすぎて……心臓が爆発しそうになっちゃう……」
「俺もだよ。でも2人で決めたんだから。心臓が無くなっても旅に出るんだろ?」
「もう残機が無いよ!」
「残機……?」
「好きってして!」
「ん……」
椎名君がゆっくり体を離して、頬に顔をつけたと思ったら、優しく深い勇気をくれた。僕の体を満たすように息を吹き込んで、優しく包み込んでくれる。
「あのスピーカー……」
唇が離れた時に放り投げた僕の言葉に、椎名君が復唱して訝しがる。
「大人になると、欲しいものも無くなっていくんだ。でも……あのスピーカー買う時、すごく楽しかった」
「そ、そっか」
僕が真剣に話しているのに、椎名君は正直ピンときてないようだった。
「椎名君のためじゃない、でも椎名君の踊ってる姿想像したら楽しくて、店員さんも呆れるほど真剣に探すのが、すごく、すごく楽しかった」
「ん……」
「椎名君に色んなものをもらってるのに、僕はなにも……」
僕が言葉に詰まったら、椎名君が恥ずかしそうな独特な顔で笑う。
「おっさんのこと、こうちゃんって呼んでいい?」
「ええ!?」
「俺は嫉妬深いんだ」
その顔と愛の大きさに、情緒が荒ぶって涙腺が崩壊してしまう。
「う、嬉しいよぉ……うぇぇ……」
「すぐ泣く」
「だって……椎名君が……ひっ……かっこいいからぁ……ひーん」
「泣き終わったら、ご飯作るぞ」
「時間の無駄だから……もう……作ろぉ……」
「ほら」
椎名君に促され顔をあげたら、鼻を押し当てながら涙を拭ってくれる。
「おっさん、じゃあご飯作るぞ」
「さっそく……呼んでくれないぃ……」
「好きだよ、こうちゃん」
ひゃあああああ!と変な悲鳴をあげてしまう。
「こうちゃん」
「椎名君! 椎名君! 椎名君!」
「こうちゃんも、アキラって呼んで」
「ダメ! 死んじゃう! 椎名君が大好きすぎて死んじゃう!」
「落ち着けよ、そんなことで死ぬなよ」
「椎名君、大好き大好き大好き!」
「ほら、ご飯作るんだろ」
「まってまって、もう少しだけ! もう少しだけ! 行かないでよぉ!」
「名前呼んでみて」
「アキラ……君……」
「君はいらないだろ」
「ハードルが高いよぉ」
「はいはい、ゆっくりお付き合いするんだもんな」
椎名君は僕をあやすように背中を撫でたら夕飯を作りに立ち上がった。僕は乱れた服を急いで整える。
そして椎名君の背中を追いかける、それがこれからの未来のように思えて、キラキラと眩しかった。
「踊ってる時に毎回見てるおじさんがいるなって気がついてたけど、遅刻して学校行った時に駅の前でおっさん見たことあるんだ」
「え、椎名君通学って電車使うの?」
「うん、おっさんの家の駅の先だよ」
「そっかぁ。じゃあ、僕の家ダンス練習するのもってこいだね!」
椎名君は少し笑う。
「おっさんは多分出勤途中だったと思うけど、夜見るおっさんとは別人みたいに目が死んでてさ……」
思い出してか椎名君がクククと笑い出す。朝は概ね死んだ目をしていることは想像がつく。見られていたことに恥ずかしくてそのまま無言を貫いてしまった。
「俺が見た時丁度、横断歩道の前で外国人に道かなんか聞かれて結構時間取られてたんだよ。でもおっさんにお礼して駅に向かう外国人をいつまでも見送ってて。時計見て振り返った時、すごく目がキラキラして……その後もニッコニコして歩いててさ」
理屈なんてないんだけど、そう言って椎名君は僕を一層強く抱きしめる。
「おっさんが俺を見る時、目がキラキラしてるのが嬉しいんだ。だから……」
だから。その後に続くいろんな文脈が、今までの椎名君との時間の分だけプリズムのように拡散していく。
だから僕に声をかけてくれた。だから僕が悲しそうな顔をするのが嫌だった。だから僕のことを好きになってくれた。
だから、だから。椎名君の目が輝いてた。
分岐していく文脈を追うたびに激しい衝撃が襲い、僕はいてもたってもいられなくなる。胸の前で固く握ってた手を椎名君の背に這わせてギュッとしがみつく。
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「俺もだよ。でも2人で決めたんだから。心臓が無くなっても旅に出るんだろ?」
「もう残機が無いよ!」
「残機……?」
「好きってして!」
「ん……」
椎名君がゆっくり体を離して、頬に顔をつけたと思ったら、優しく深い勇気をくれた。僕の体を満たすように息を吹き込んで、優しく包み込んでくれる。
「あのスピーカー……」
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「大人になると、欲しいものも無くなっていくんだ。でも……あのスピーカー買う時、すごく楽しかった」
「そ、そっか」
僕が真剣に話しているのに、椎名君は正直ピンときてないようだった。
「椎名君のためじゃない、でも椎名君の踊ってる姿想像したら楽しくて、店員さんも呆れるほど真剣に探すのが、すごく、すごく楽しかった」
「ん……」
「椎名君に色んなものをもらってるのに、僕はなにも……」
僕が言葉に詰まったら、椎名君が恥ずかしそうな独特な顔で笑う。
「おっさんのこと、こうちゃんって呼んでいい?」
「ええ!?」
「俺は嫉妬深いんだ」
その顔と愛の大きさに、情緒が荒ぶって涙腺が崩壊してしまう。
「う、嬉しいよぉ……うぇぇ……」
「すぐ泣く」
「だって……椎名君が……ひっ……かっこいいからぁ……ひーん」
「泣き終わったら、ご飯作るぞ」
「時間の無駄だから……もう……作ろぉ……」
「ほら」
椎名君に促され顔をあげたら、鼻を押し当てながら涙を拭ってくれる。
「おっさん、じゃあご飯作るぞ」
「さっそく……呼んでくれないぃ……」
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「こうちゃん」
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「こうちゃんも、アキラって呼んで」
「ダメ! 死んじゃう! 椎名君が大好きすぎて死んじゃう!」
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「ほら、ご飯作るんだろ」
「まってまって、もう少しだけ! もう少しだけ! 行かないでよぉ!」
「名前呼んでみて」
「アキラ……君……」
「君はいらないだろ」
「ハードルが高いよぉ」
「はいはい、ゆっくりお付き合いするんだもんな」
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そして椎名君の背中を追いかける、それがこれからの未来のように思えて、キラキラと眩しかった。
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