乙女ゲームで強悪役な俺が人外攻略達とハーレムになりました

鮎田

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夜の時間

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今日の授業が終わり、それぞれが帰り支度をしていた。

俺はもう少し残って操り糸の練習をしようと机の上にぬいぐるみを置いた。
この前は加減を間違えたから、今度はゆっくりバランスよく…

糸がぬいぐるみの両手足に結びつき、軽く動かすと手を振る事は出来た。
このぐらいは出来て当たり前だ、上手く糸を操れるぐらいにはならないといけない。

宙に浮かせて、遠くに飛んでいくように糸を動かす。
伸ばすのも集中力が必要になってくるから、糸が切れてこちらに向かってくる。

顔を庇うと、手が傷だらけになってヒリヒリ痛い。

「大丈夫か?」

「ジークス先生、はい…何とか」

「変わった魔術の練習をしているな、俺で良ければアドバイスが出来るかもしれない」

操り糸は一族に伝わる術式で、簡単に真似出来るものではない。
術式も高魔術のように向き不向きがある。

情報漏洩をすると俺が家族に殺されてしまう、それほどまでに大切なものだ。

術式は全て教える事は出来ないが、ぬいぐるみをどうやって動かそうか重心などをジークスと一緒に考えた。

動かす事が出来ても持続するためにはもっと軽くしないとダメかな。
でも、逆に軽くし過ぎるとペラペラの紙のようになって何も出来ない。

まだ俺には無理って事なのか?

ジークスはぬいぐるみの両手足に触れて軽く浮かせた。

「糸だけで動かすのが難しいなら、他の魔法と合わせればいいんじゃないか?」

「他の魔法ですか?」

「ぬいぐるみぐらいなら重力を操れば動くし、持続させるのもそう難しくはない」

「確かに、それなら練習すれば…」

重力の術式ってどんなのだったっけと教科書を開く。

ジークスは俺を優しく見守っていて、放課後という事も忘れて調べていた。
少し遅くなってしまい、荷物を片付けてジークスにここまで付き合ってもらい申し訳ない気持ちだった。

荷物から茶葉が入った小瓶を取って、ジークスに渡した。

昨日西洋茶をお裾分けしてもらったお礼で美味しい茶葉を持ってきた。

それと、今朝は時間があったからゼスに手伝ってもらい茶葉に合うクッキーも作った。

「昨日のお礼です」と言うと「ありがとう」と受け取ってくれた。

コンコンと教室のドアがノックされて、入り口を見るとトワがいた。

「誰か残ってると思ったら、お前らか」

「自分の仕事が終わったらさっさと帰れ」

「生徒と二人っきりでいかがわしい事して、いだっ!!」

ジークスはトワに向かってノートを投げつけていた。
顔面にヒットして、顔を押さえながら痛みに耐えていた。

トワは不満そうにしていたが、いつの間にかジークスの手からクッキーの袋を奪って食べていた。
先生になっても相変わらずトワは自由な人だな。

ジークスはそれに怒っていたが、俺は楽しい気持ちだった。

今度はトワの分も持ってくる事を約束すると嬉しそうにしていた。

俺は医務室に行ってから帰るから二人とお別れした。

小さな灯りが廊下を照らしていて、明るい時間と雰囲気が違った。
どんよりとしていて、まるでお化け屋敷の中歩いているようだ。

クロノ先生、もう帰っちゃったかな…今日はちょっといつもより遅くなってしまった。

医務室のドアをノックして、中を覗いてみるといつもの後ろ姿が見えた。
白衣の大きな背中が机に向かっていて、声を掛ける。

振り向いて、いつものように優しい笑みを浮かべてクロノ先生は手招きした。

「まだ残ってたんだ、今日はどうしたの?」

「指を怪我しちゃって」

「今日はまた派手にやっちゃったね」

クロノ先生の前の椅子に座り、傷になった手を見せた。
机の上には俺が抱き枕にと渡したぬいぐるみが飾られていた。

大切に飾ってくれて、ぬいぐるみも幸せそうに笑っている気がした。

いつものように指を包帯で巻かれて、手当ては終わった。
包帯を巻いてくれているが、クロノ先生はすぐに外しても大丈夫のように魔法で傷を治してくれている。
バイ菌が入らないために包帯を巻いてくれている。

クロノ先生にもゼスが失礼な事をしてしまったから、カバンからクッキーの袋を取り出した。

袋を受け取る手が小刻みに揺れているが大丈夫だろうか。

「クロノ先生、もしかして甘いもの嫌いだった?」

「そっ、そそそんな事ないよ!!貰えると思ってなくて…ありがとう、リーンくん」

「俺の執事が失礼な事しちゃったお詫びなので、ごめんなさい」

「遅くなったのは俺のせいでもあるから、今日は大丈夫?」

「遅くなっても心配しないでって言っておいたので!」

クロノ先生は一口クッキーを食べて泣きながら「美味しいです」と言っていた。
そんなに気に入ってくれるなら、作った俺も嬉しい。

お茶でも一緒に飲もうと誘われたら、今日はもう遅いから帰る事にした。
窓の外はすっかり暗くなっていて、さすがに心配しないでと言う時間は過ぎていた。

急いで帰らないといけない、家族は誰も心配しないと思うけどゼスはとても心配掛けてしまう。

クロノ先生に「じゃあ俺帰りますね」と言うと、椅子から立ち上がった。
外は暗いからと家の近くまで送ってくれる事になった。

学園を出て、クロノ先生と一緒に並んで歩いていた。
普段白衣だから、普通の私服のクロノ先生は初めて見た。
ゲームのクロノ先生も白衣ばかりでプライベートは見えなかった。

クロノ先生の攻略ルートってどうだったんだっけ。

「付き合わせてごめんなさい」

「気にしなくていいよ、俺ももう少しリーンくんといたかったから」

照れたようなクロノ先生が何だか可愛く思えた。
190cmは軽くあるけど、雰囲気が全てを柔らかくする。

手当て以外でクロノ先生とあまり話した事がなかったな。
医務室の先生、俺はそれしかクロノ先生を知らない。

何処に住んでいるのか、クロノ先生の先生以外の一面を知らない。
ジークス達のように騎士団と兼用しているとは思えないが、クロノ先生ならなにがあっても不思議ではない。

街を歩いていると、この時間に開いているのは酒場ぐらいだ。
酒場の明かりだけが街を照らしていて、賑やかな声が聞こえる。



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