乙女ゲームで強悪役な俺が人外攻略達とハーレムになりました

鮎田

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秘密

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「俺、この時間に街に出たの初めてです」

「そりゃあ面白くもない店しかやってないからね」

確かに大人の店に行く用事なんてないけど、先生とかはやっぱりお酒飲んだりするのかな。
クロノ先生はイメージないけど、もしかしたら見た目と違って酒豪なのかもしれない。

俺も酒を飲んで大人の仲間入りしたいな。

そう思っていたら、突然腕を引っ張られて足を止めた。
右側にクロノ先生がいるから、左側には誰もいないはずだ。

クロノ先生の手を掴んで、左側に視線を向けた。

「こんらところで、ガキがなぁにしてるぅ?」と呂律が回らない声が聞こえた。
すぐにクロノ先生が振り払って俺を後ろに連れて行き庇ってくれた。

こんな夜遅く、酔っ払いがいても不思議ではない。

「行こう、リーンくん」

「は、はい」

「まだ話は終わってねぇだろ!」

変な絡み方をする酔っ払いの男は俺に腕を伸ばしてきた。
それをクロノ先生が「やめてください!」と振り払っている。

振り払ってもしつこいぐらい腕を伸ばしてきて、クロノ先生の手も震えていた。

暗がりの中、大声で絡まれたら大人関係なく誰でも怖いのは当然だ。

少し、少しだけならと自分に言い聞かせて糸を操って酔っ払いの両手を縛り付けた。
突然両手が動かなくなって驚いて暴れていて、クロノ先生の手を引っ張って走った。

酔っ払いが見えなくなるぐらい走れば追いかけてくる心配もない。

ホッと一安心して、ゆっくりと深呼吸を繰り返す。

「はぁ、はぁ…大丈夫ですか?クロノ先生」

「俺は平気だけど、リーンくんの方が怖い思いしたんじゃ…」

「俺はクロノ先生がいたから大丈夫です、先生は手が少し冷えちゃいましたね」

冷たい夜にいたから、クロノ先生の手を両手で包み込んで擦り合わせる。
小さく息を吹くと、だんだん体温が戻ってきた。

偶然さっきは操り糸を扱えたから良かったけど、失敗したらと思うと余計に逆上させてしまうだけだ。
ゼスを縛った時とは違う、本物のピンチだった。

俺の手もいつの間にか震えていて、クロノ先生に気付かれないように手を離した。

無我夢中で走ったから家から少し離れた場所に来てしまった。

ここは酒場からも離れていて、街灯もほとんどない。
さっきより雰囲気があって、酔っ払いどころか別の怖い人がいても不思議じゃない。

何処からか悲鳴のような声も聞こえてきて鳥肌が立った。

「せ、せんせ…早く離れましょ…ひっ!」

「大丈夫、俺がいるから…俺から離れないでね」

クロノ先生の言葉に何度も頷いて、しっかりと手を握って歩き出す。
治安が悪い場所なのか、俺の知らない街の顔があった。

酔っ払いなんて可愛いものだ、悲鳴と怒号と笑い声が混じった場所だった。
クロノ先生はいつもこういう場所を通って帰るのか、さっきよりも逞しく見えた。

少しすると、街の賑やかな場所に戻ってきて家の前まで帰ってきた。
思っていたより遠回りしてきてしまった、ゼス…大丈夫かな。

クロノ先生に「もう大丈夫?」と聞かれて、頷いた。
この後クロノ先生はあんな怖いところを通って帰るんだよな。

いくら大人でも、いや…大人だからこそ怖いなんて言えない。

俺が出来る事と言ったら、気休め程度のおまじないをするだけだ。

クロノ先生の手を握って、額にくっつけて加護の魔法を掛ける。
操り師の力ばかり鍛えていたから、加護の魔法は得意ではない。
でも、せめてクロノ先生が無事に家に帰れるまででいいんだ。

「クロノ先生が無事に帰れますように」

「…リーンくん、ありがとう」

手を離して、クロノ先生に手を振って家に帰った。
俺がちゃんと家の中に入るまで、見守ってくれていた。

家の中は静まり返っていて、皆もう寝たのか自分の部屋にいるんだろう。
その中、玄関のすぐ横の壁に寄りかかってうずくまる人物がいた。

その人は俺の姿を見つけてすぐに起き上がった。

皆が寝ているかもしれかいから声は控えめに「リーン様…」と震える声で俺を抱きしめた。
不安で不安でどうしようもなくてここにいたのかな。

「ごめんなさい、ただいま…ゼス」と言って背中に腕を回した。

ゼスの身体も冷えている、まずは温かい飲み物を一緒に飲もう。

今日会った事は余計な心配事を増やすから内緒にした方がいいな。
操り糸の練習で夢中になって時間を忘れてたとゼスに説明した。
嘘は付いていない、帰りにちょっとトラブルがあっただけだ。

ゼスはなにかを考えながら「ご無事で良かったです」と言っていた。








ーークロノ視点ーー

まだ温もりが残っている手のひらを見つめて微笑む。
本当に可愛いなぁ、リーンくんだけだよ…こんな俺に優しくしてくれるのは…

それにしても、身体が震えるほど怖かったのに俺を連れ出して逃げるなんて…勇敢なところもある。

この仕事やって良かったと心から思える瞬間だ。

家に向かって歩いていると、何処からか叫び声が聞こえてきた。
上を見上げると、数少ない街灯がチカチカと切れかかっていた。

誰が直すんだろう、気にした事なかったけどリーンくんが迷子になるならちゃんとしてほしいな。

それにしてももっと安全で人がいない道を選んで行った方が良かったな。
まさか酔っ払いが絡んでくるとは思わなかった。

リーンくんの真っ白な肌に触れるだけでも許せないのに、強く掴んだからか少し赤くなっていた。
手を掴まれた時、治してあげられたら良かったけどそれどころではなかった。

リーンくんの手の感触に気を取られてしまった、頼ってくれていたのに先生失格だ。

もっともっと頼ってもらえるように、頑張らないと…

笑い声と悲鳴が混じった音がだんだん近付いてくる。

クッキーのお返しを口実に家に呼べないだろうか。
リーンくんが俺の家にいたら、最高なんだけどな。

曲がり角からなにかが飛び出してきて、こちらに向かってくる。
追いかけている影は俺の姿を見て「クロノ!ソイツ捕まえろ!」と声を荒げていた。

せっかくいい気分だったのに、一気に夢心地から現実に引き戻される。

俺の横をすれ違う瞬間に足で思いっきり蹴り上げると軽い身体は吹き飛んだ。
壁に激突した身体は力を失ったようにぐったりと倒れていた。

追いかけていた奴は走る速度を緩めて、吹き飛んだ男の顔色を覗いていた。

「何だよ、殺したのか?コイツ、拷問して情報聞き出せって依頼だったのに」

「人の目の前でチョロチョロ歩いていて煩わしい」

「まぁ、いっか…理由なんていくらでも言えるし、面倒になったら依頼主も殺しちゃえばいいか」
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