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9.猫になった婚約者と魔女3
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「カレン! 俺が誰だか分かっているのか!」
「分かっていますわ。ライル様でしょう?」
「そういうことじゃない! いいか、俺を敵に回したらどうなるか考えてみろ!」
「それは人間姿の貴方の話でしょう。猫の姿では何も出来ない」
ライルは押し黙った。こうやって、すぐに権力を振りかざすところが嫌い。何かあればすぐに、家の話。地位や賢さで自分に劣っている相手を馬鹿にする。
だから、恨まれる。嫌われる。
猫になって話してみて、本当は良い人なのかもしれないとも思った。だが、やはり根っこは変わらない。
散々いびって、散々嫌味を言って、そんな相手に無償で助けて貰えるだなんて、思わないでほしい。
「大体……そうやって何かあれば権力で脅すから、恨まれて今の姿になったのではないですか?」
「む……それは……」
「一応婚約者の私にだって、扱い酷かったじゃありませんか」
「……そんなことは」
「使用人の方々には、もっと雑でぞんざいな扱いをしていたのでしょう?」
言葉が次々溢れてくる。本来、立場が上のライルには言ってはならないことだ。差し出がましく、厚かましい。
でも、この際だから全部言ってしまおう。どうせ、今は猫だから暴力も振られないし。せいぜい引っ掻くか、猫パンチしかできないだろう。
「……俺の元で働けるんだぞ。給料だってどこよりも高くしている」
「自分たちを人間扱いしない主に尽くしたいと思いますか? そして、使用人の方々は給料に見合った仕事をしていると思いますが。むしろ感謝すべきですよ」
「……カレンにも酷い対応したつもりはない」
「あら、自覚がなかったんですね。私は酷い殿方だと思っていましたよ」
ライルは今まで入っていたハウスから這い出てきた。のそのそと外に出たかと思うと、居住まいを正して床に座った。
身長差から、ライルは私に上目遣いをする形になった。緑の瞳が私を見つめる。
「……すまなかった」
「はい?」
「俺は、本当に使用人達にもカレンにも普通に接しているつもりだった」
話しているうちにライルは俯いてしまった。尻尾の先がゆらゆらと行き場なく揺れている。
「お前に指摘されて……初めて気がついた。俺は、傲慢だったのかもしれないと。だから、恨まれて呪いをかけられたのかもしれないと」
大帝国の王子ゆえ、丁重に扱われたせいで誰も指摘する人がいなかったのだろうか。しょんぼりしているその姿と素直な言葉に、少し罪悪感が芽生えた。
「俺の言葉に、従って当然だと思っていた……。俺の望むものを用意して当然だと思っていた。感謝なんてしていなかった……」
ライルはただ嫌味な男ではなかったのかもしれない。無知だっただけ。そうでなかったら、私の言葉に素直に謝罪などしない。反省などしない。
本当は、そこまで嫌な人ではないのかもしれない。
「……ライル様。気がついたのなら、そこから正せば良いのです。今日、たったこの瞬間から」
「そうだな。……そうしよう」
「ライル様」
「なんだ?」
「色々言ってしまい申し訳ありませんでした」
「いい、いい。気にするな」
二、三回首を横に振った。随分偉そうな口を聞いてしまったが、言いたいことを言え、すっきりした。
同時に、元の姿に戻すための手伝いをしても良いか、という気持ちになった。今まで嫌な奴と決めつけていたが、そうでもないと思ったのが要因だろう。
「……魔女探し、頑張りましょうか」
「え、やってくれるのか?」
「……ええ。思ったより、悪い人じゃないと思いまして」
ライルはにっこり笑った。そして、礼儀正しく、猫の姿でもそれらしいお辞儀をして、感謝の言葉を述べた。
やはり、こういうところはきちんとしている。ライルを見て微笑ましくなった。
「分かっていますわ。ライル様でしょう?」
「そういうことじゃない! いいか、俺を敵に回したらどうなるか考えてみろ!」
「それは人間姿の貴方の話でしょう。猫の姿では何も出来ない」
ライルは押し黙った。こうやって、すぐに権力を振りかざすところが嫌い。何かあればすぐに、家の話。地位や賢さで自分に劣っている相手を馬鹿にする。
だから、恨まれる。嫌われる。
猫になって話してみて、本当は良い人なのかもしれないとも思った。だが、やはり根っこは変わらない。
散々いびって、散々嫌味を言って、そんな相手に無償で助けて貰えるだなんて、思わないでほしい。
「大体……そうやって何かあれば権力で脅すから、恨まれて今の姿になったのではないですか?」
「む……それは……」
「一応婚約者の私にだって、扱い酷かったじゃありませんか」
「……そんなことは」
「使用人の方々には、もっと雑でぞんざいな扱いをしていたのでしょう?」
言葉が次々溢れてくる。本来、立場が上のライルには言ってはならないことだ。差し出がましく、厚かましい。
でも、この際だから全部言ってしまおう。どうせ、今は猫だから暴力も振られないし。せいぜい引っ掻くか、猫パンチしかできないだろう。
「……俺の元で働けるんだぞ。給料だってどこよりも高くしている」
「自分たちを人間扱いしない主に尽くしたいと思いますか? そして、使用人の方々は給料に見合った仕事をしていると思いますが。むしろ感謝すべきですよ」
「……カレンにも酷い対応したつもりはない」
「あら、自覚がなかったんですね。私は酷い殿方だと思っていましたよ」
ライルは今まで入っていたハウスから這い出てきた。のそのそと外に出たかと思うと、居住まいを正して床に座った。
身長差から、ライルは私に上目遣いをする形になった。緑の瞳が私を見つめる。
「……すまなかった」
「はい?」
「俺は、本当に使用人達にもカレンにも普通に接しているつもりだった」
話しているうちにライルは俯いてしまった。尻尾の先がゆらゆらと行き場なく揺れている。
「お前に指摘されて……初めて気がついた。俺は、傲慢だったのかもしれないと。だから、恨まれて呪いをかけられたのかもしれないと」
大帝国の王子ゆえ、丁重に扱われたせいで誰も指摘する人がいなかったのだろうか。しょんぼりしているその姿と素直な言葉に、少し罪悪感が芽生えた。
「俺の言葉に、従って当然だと思っていた……。俺の望むものを用意して当然だと思っていた。感謝なんてしていなかった……」
ライルはただ嫌味な男ではなかったのかもしれない。無知だっただけ。そうでなかったら、私の言葉に素直に謝罪などしない。反省などしない。
本当は、そこまで嫌な人ではないのかもしれない。
「……ライル様。気がついたのなら、そこから正せば良いのです。今日、たったこの瞬間から」
「そうだな。……そうしよう」
「ライル様」
「なんだ?」
「色々言ってしまい申し訳ありませんでした」
「いい、いい。気にするな」
二、三回首を横に振った。随分偉そうな口を聞いてしまったが、言いたいことを言え、すっきりした。
同時に、元の姿に戻すための手伝いをしても良いか、という気持ちになった。今まで嫌な奴と決めつけていたが、そうでもないと思ったのが要因だろう。
「……魔女探し、頑張りましょうか」
「え、やってくれるのか?」
「……ええ。思ったより、悪い人じゃないと思いまして」
ライルはにっこり笑った。そして、礼儀正しく、猫の姿でもそれらしいお辞儀をして、感謝の言葉を述べた。
やはり、こういうところはきちんとしている。ライルを見て微笑ましくなった。
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