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22.猫になった婚約者と野良猫
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「ん……」
寝ていたライルが目を覚ましたらしい。少し身動ぎしたあと、瞼が開いた。
「おはようございます、ライル様」
「……うむ……おはよう……」
まだ眠いのか口調が途切れ途切れだ。寝転がった状態から起き上がる。一度、ぐーっと伸びをしてから座った。
そして、手で顔をこすって洗い始めた。
顔を洗い終わると、今度は毛繕いを始めた。ザリザリと念入りに体全体を綺麗にしている。
一通り終わってようやくライルは私に声をかけた。
「すまない、すっかり寝てしまった」
「いえ。お気になさらず」
私は読んでいた本を軽く持ち上げた。
「おお、本を読んでいたのか」
「ええ」
「なんの本を読んでいたんだ?」
「シェイクスピアです」
有名な劇作家だ。昔から何度も読んでいるが、お気に入りで今でも読み返す。内容は頭に入っていても、つい手に取って読んでしまう。
「シェイクスピアか。俺も読んだことがあるぞ」
「有名ですよね」
「うむ。あれの物語は面白い」
話の展開だとか、登場人物の掛け合いだとかの話題になった。ライルとシェイクスピアの話題で盛り上がる。
「にゃーん」
話が白熱してきた時、その声は聞こえた。
「猫ですわ」
「猫だな」
ほぼ同時に声を発す。猫の声が聞こえたのは後ろの方向。振り向くと、茂みの中から白い猫が現れた。
「あら……久しぶりね」
「にゃーん」
「知り合いか?」
「ええ」
この子は子猫の時からこの庭にいた。恐らく、親猫が庭に住み着いていたのだろう。
人に慣れていて人懐っこい。触らせてもくれるし、あちらから膝に乗ってくれることもある。とにかく人を怖がらない。
「カレンに懐いているな」
「この子は人が好きなんですよ」
「にゃーん」
私の元に走り寄ってきて、すりすりと体を擦りつけてくる。ごろごろと喉を鳴らす音がよく聞こえる。
ごろんと寝っ転がってお腹を見せてきた。撫でると気持ちよさそうに目を細める。
「にゃーん?」
「ライルが気になりますか?」
シロと読んでいる白猫がライルを見て首を傾げた。見たことの無い猫が気になっているのかもしれない。
「俺はライル=ブローナーという。今は猫だが、れっきとした人間だぞ」
ライルがシロの目を見て、律儀に自己紹介をした。
「あっ、ライル様……」
「フシャッー!」
シロがライルを威嚇して、攻撃をし始めた。
猫は目を見つめてはいけない。目が合うと敵意があると判断してしまうのだ。だから、目を合わせない方が良い。
そう言おうと思ったのだが、遅かった。
「な、なんだ!? やめろ、やめろって言っている!」
ライルは驚いて毛が逆立つ。シロは攻撃をやめない。ライルが逃げて木の上に登った。
「ごめんなさいね、シロちゃん。敵意はないの。だから、怒らないで」
「……にゃーん」
「ありがとう。いい子ね」
言葉が通じたのか、シロは追いかけるのを止めてこちらへ戻ってきた。
顎の下へ手をやり、撫でる。しばらくごろごろと喉を鳴らし撫でさせてくれたあと、シロはまた茂みの奥へ去っていった。
寝ていたライルが目を覚ましたらしい。少し身動ぎしたあと、瞼が開いた。
「おはようございます、ライル様」
「……うむ……おはよう……」
まだ眠いのか口調が途切れ途切れだ。寝転がった状態から起き上がる。一度、ぐーっと伸びをしてから座った。
そして、手で顔をこすって洗い始めた。
顔を洗い終わると、今度は毛繕いを始めた。ザリザリと念入りに体全体を綺麗にしている。
一通り終わってようやくライルは私に声をかけた。
「すまない、すっかり寝てしまった」
「いえ。お気になさらず」
私は読んでいた本を軽く持ち上げた。
「おお、本を読んでいたのか」
「ええ」
「なんの本を読んでいたんだ?」
「シェイクスピアです」
有名な劇作家だ。昔から何度も読んでいるが、お気に入りで今でも読み返す。内容は頭に入っていても、つい手に取って読んでしまう。
「シェイクスピアか。俺も読んだことがあるぞ」
「有名ですよね」
「うむ。あれの物語は面白い」
話の展開だとか、登場人物の掛け合いだとかの話題になった。ライルとシェイクスピアの話題で盛り上がる。
「にゃーん」
話が白熱してきた時、その声は聞こえた。
「猫ですわ」
「猫だな」
ほぼ同時に声を発す。猫の声が聞こえたのは後ろの方向。振り向くと、茂みの中から白い猫が現れた。
「あら……久しぶりね」
「にゃーん」
「知り合いか?」
「ええ」
この子は子猫の時からこの庭にいた。恐らく、親猫が庭に住み着いていたのだろう。
人に慣れていて人懐っこい。触らせてもくれるし、あちらから膝に乗ってくれることもある。とにかく人を怖がらない。
「カレンに懐いているな」
「この子は人が好きなんですよ」
「にゃーん」
私の元に走り寄ってきて、すりすりと体を擦りつけてくる。ごろごろと喉を鳴らす音がよく聞こえる。
ごろんと寝っ転がってお腹を見せてきた。撫でると気持ちよさそうに目を細める。
「にゃーん?」
「ライルが気になりますか?」
シロと読んでいる白猫がライルを見て首を傾げた。見たことの無い猫が気になっているのかもしれない。
「俺はライル=ブローナーという。今は猫だが、れっきとした人間だぞ」
ライルがシロの目を見て、律儀に自己紹介をした。
「あっ、ライル様……」
「フシャッー!」
シロがライルを威嚇して、攻撃をし始めた。
猫は目を見つめてはいけない。目が合うと敵意があると判断してしまうのだ。だから、目を合わせない方が良い。
そう言おうと思ったのだが、遅かった。
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「ごめんなさいね、シロちゃん。敵意はないの。だから、怒らないで」
「……にゃーん」
「ありがとう。いい子ね」
言葉が通じたのか、シロは追いかけるのを止めてこちらへ戻ってきた。
顎の下へ手をやり、撫でる。しばらくごろごろと喉を鳴らし撫でさせてくれたあと、シロはまた茂みの奥へ去っていった。
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