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不和との邂逅
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ミナリアがここに立ち入ったのは、実に十年ぶりとなる。
共立人真塔学園設立に伴う式典の前後だったか……。
あまり変わらない内装に、ミナリアは安堵した。
「俺、こんなに城の奥に来たことない……この奥って何があるの?」
ユイセルの疑問も当然である。
同じく国からのスパイを担っているユイセルでも平然と立ち入れる場所ではない。
「ムザル先代人国王陛下の私室だな」
「えっ」
転移陣で城門前まで来たのは、国からの通信のすぐ後である。
廊下を警備する衛兵たちに頭を下げて、毅然とした態度で入城するミナリアに反して、ユイセルは顔に出さないまでも挙動不審だ。
もっとも、古参の家臣が出迎えてくれなければ、ここまでスムーズに城の奥まで来ることは出来なかっただろうが。
戸惑うユイセルをよそに、全王の私室の若い警備兵に訪れを告げる。
不審げに眉を寄せた兵は、すぐに確認を取ると、ミナリアとユイセルをその部屋へと招いた。
「ミナリア兄さん!」
「公私混同」
ビシッ。
扉前で唐突に突進してきた男に、ミナリアは最短の挙動で手のひらを叩き込んだ。
「い、痛い……」
兵もあまりの出来事に反応出来ずに硬直している。ユイセルも突然のことにミナリアの背後で口を開けてしまった。
「プライベートであるならその仰々しい王冠を外してから来なさい」
それもそのはず、ミナリアが攻撃を食らわせたのは、先代人国王ムザル=ハイネルその人であった。
「ミナリア様、お久しぶりです。この度は父が勝手に失礼しました」
王冠とマントを乱暴に脱ぎ捨てたムザルを宥め、ミナリアの前にはその息子であるシャザム=ハイネルが対峙していた。
ムザルの息子。当代の人国王である。
「人国王陛下におかれましては……」
「そんな他人行儀な」
未だ王冠を戴く姿に腰を折って、ミナリアがシャザムの前に最敬礼をする。
シャザムはミナリアの礼を受け流すと、自らも王冠を手に抱えて、プライベートを誇示した。
ここの親子はミナリアと対等に付き合いたいのだ。
それを見て顔を上げたミナリアは、呆然とするユイセルの手を引いて、促されるままにソファに座した。
「息災のようで何よりでした」
「前置きはいい。用件を言え」
シャザムの言葉を端的に終わらせ、ミナリアはここへ呼び寄せた用向きを尋ねた。
当然王族を前にしてする口調ではない。
ユイセルはミナリアの隣で泡を食っていた。
しかし、当の王族はミナリアの態度にも慣れたもので、平然と会話を続ける。
「まあまあ、兄さんもきたばかりだし……」
「ムザル、お前はいつから悪知恵を働かせることを覚えた。シャトマーニ宰相をここに呼ぼうか?」
「い、いや、その、シャトマーニ殿は遠慮したい……」
「何を言う、半年前にも会っただろう。俺に黙って、コソコソと」
場を和ませようとしたムザルはミナリアに反撃を食らって小さくなっている。
歳を重ねても変わらぬ、兄弟のようなやり取りに、ミナリアは少しだけ怒りを収めた。
「ミ、ミナリアってもしかして偉い人?」
「国王ほどは偉くない」
「偉いの基準おかしくない?」
その隙を縫ってユイセルがここに来てからの疑問を口にする。
ユイセルはミナリアが真国の騎士であることは承知していたが、未だその立場を正確に把握していなかった。
共立人真塔学園設立に伴う式典の前後だったか……。
あまり変わらない内装に、ミナリアは安堵した。
「俺、こんなに城の奥に来たことない……この奥って何があるの?」
ユイセルの疑問も当然である。
同じく国からのスパイを担っているユイセルでも平然と立ち入れる場所ではない。
「ムザル先代人国王陛下の私室だな」
「えっ」
転移陣で城門前まで来たのは、国からの通信のすぐ後である。
廊下を警備する衛兵たちに頭を下げて、毅然とした態度で入城するミナリアに反して、ユイセルは顔に出さないまでも挙動不審だ。
もっとも、古参の家臣が出迎えてくれなければ、ここまでスムーズに城の奥まで来ることは出来なかっただろうが。
戸惑うユイセルをよそに、全王の私室の若い警備兵に訪れを告げる。
不審げに眉を寄せた兵は、すぐに確認を取ると、ミナリアとユイセルをその部屋へと招いた。
「ミナリア兄さん!」
「公私混同」
ビシッ。
扉前で唐突に突進してきた男に、ミナリアは最短の挙動で手のひらを叩き込んだ。
「い、痛い……」
兵もあまりの出来事に反応出来ずに硬直している。ユイセルも突然のことにミナリアの背後で口を開けてしまった。
「プライベートであるならその仰々しい王冠を外してから来なさい」
それもそのはず、ミナリアが攻撃を食らわせたのは、先代人国王ムザル=ハイネルその人であった。
「ミナリア様、お久しぶりです。この度は父が勝手に失礼しました」
王冠とマントを乱暴に脱ぎ捨てたムザルを宥め、ミナリアの前にはその息子であるシャザム=ハイネルが対峙していた。
ムザルの息子。当代の人国王である。
「人国王陛下におかれましては……」
「そんな他人行儀な」
未だ王冠を戴く姿に腰を折って、ミナリアがシャザムの前に最敬礼をする。
シャザムはミナリアの礼を受け流すと、自らも王冠を手に抱えて、プライベートを誇示した。
ここの親子はミナリアと対等に付き合いたいのだ。
それを見て顔を上げたミナリアは、呆然とするユイセルの手を引いて、促されるままにソファに座した。
「息災のようで何よりでした」
「前置きはいい。用件を言え」
シャザムの言葉を端的に終わらせ、ミナリアはここへ呼び寄せた用向きを尋ねた。
当然王族を前にしてする口調ではない。
ユイセルはミナリアの隣で泡を食っていた。
しかし、当の王族はミナリアの態度にも慣れたもので、平然と会話を続ける。
「まあまあ、兄さんもきたばかりだし……」
「ムザル、お前はいつから悪知恵を働かせることを覚えた。シャトマーニ宰相をここに呼ぼうか?」
「い、いや、その、シャトマーニ殿は遠慮したい……」
「何を言う、半年前にも会っただろう。俺に黙って、コソコソと」
場を和ませようとしたムザルはミナリアに反撃を食らって小さくなっている。
歳を重ねても変わらぬ、兄弟のようなやり取りに、ミナリアは少しだけ怒りを収めた。
「ミ、ミナリアってもしかして偉い人?」
「国王ほどは偉くない」
「偉いの基準おかしくない?」
その隙を縫ってユイセルがここに来てからの疑問を口にする。
ユイセルはミナリアが真国の騎士であることは承知していたが、未だその立場を正確に把握していなかった。
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