21 / 58
不和との邂逅
6
しおりを挟む「ミナリア様、学園での生活はいかがですか?」
「……まあ、新鮮で、得るものは、あるな」
シャザムの問いに、ミナリアは素直に答えた。
「それは何より。まあ、そのあたりの詳しい話はお茶でも飲んで、その後にしましょうか」
そう言ってお茶を入れているのはシャザムである。
ユイセルは完全に借り物状態になって遠い目をしていた。
「俺はすぐにでも戻りたいのだが」
一応任務中の認識である。
ミナリアは眉を顰めて、ため息を吐いた。
「まあ、そう言わずに。まもなく彼の方も来られることだし」
「は?」
ミナリアは思わず前のめりになった。
ムザルが言う、彼の方。
それが意味するところは。
「よーう、ミナリア」
「何しに来てんですかあんた!」
突然部屋に湧いて出た魔素の塊。
その中から現れた漆黒の見慣れた美丈夫に、ミナリアは思わず立ち上がってティースプーンを投げた。
「あんたここがどこかわかってんですか! 他国の前王のプライベートルームにしれっと転移してきてんじゃないですよ!」
「あぶねーな、おい」
危なげなくミナリアの攻撃を避けたカラザールは、当然のように空いたソファに腰掛けて、シャザムが淹れたばかりのお茶を飲んだ。
瞠目したのはユイセルである。
知識として知っているだけの男が、目の前でミナリアと口論しているのだ。
「え、真国王……様?」
「貴様がミナリアの同族か。俺はカラザール=ファルマダール。ミナリアの世話は大変だろう?」
「それは確かに……」
「ユイセル?! 何を肯定してるんだ!」
ミナリアは悲壮な顔でユイセルを振り向いた。
「でも」
ユイセルはカラザールを真っ直ぐ見返していた。
「ミナリアの世話をしたいのは、俺だから」
すぐにミナリアに向けられた視線は暖かい。
ミナリアは思わず赤面して顔を背けた。
何故ユイセルが自分にそんな目を向けるのか。
何故自分はこんなにも嬉しいのか。
感情を持て余して、ミナリアは取り繕うことを忘れた。
「ほぅ……」
「へぇ……」
「なるほど……」
誰がどの音を発したのかなど問題ではない。
三人にまで暖かい目を向けられて、この場に居続けられるほどミナリアは情緒が育っていなかった。
ゆえに。
「帰る! 報告書は別途お送りします!」
ミナリアはユイセルの手を引いて扉の前へと連れ出した。
「ミナリア」
その背に、カラザールの声がかかった。
義父の、上司の、真国王の言葉に、ミナリアの足がぴたりと止まる。
「鍵は、渡したかよ?」
「…………」
無言で答えてミナリアはその場を後にした。
「まったく、うちの息子は腰が重いねえ……」
ミナリアの沈黙を正確に理解して、カラザールは父の顔で肩をすくめた。
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー
白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿)
金持ち社長・溺愛&執着 α × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω
幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。
ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。
発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう
離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。
すれ違っていく2人は結ばれることができるのか……
思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいαの溺愛、身分差ストーリー
★ハッピーエンド作品です
※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏
※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m
※フィクション作品です
※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる