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向けられた刃
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しおりを挟むだから、学院でミナリアと邂逅した時、ユイセルの中にあったのは純粋な歓喜だった。
あの時と変わらない怜悧な美貌。
宝石のような目は色のついた眼鏡で隠されてはいたけれど、見間違うこともない憧れの、騎士。
何度も話をして、同じ時を過ごして。
お互いの秘密を共有するまでになった。
頭を撫でると照れるその顔も。
戸惑ったように逸らされる瞳も。
公私を分けようとする態度。
驚くと乱れる口調。
人族も真族も分け隔てなく接する心根。
その全てが、ユイセルの憧れを恋へと昇華させた。
だからユイセルはただ、もっとミナリアの特別になりたいというだけで、鍵を受け取ったのだ。
この世で三本しかない鍵の一つを、自分に預けてくれるなんて。
舞い上がっていたユイセルは、その時気が付かなかったのだ。
その責任の重さや、こんなにも身が引き裂かれるようなもどかしさを感じるなど。
「リア……っ!」
ユイセルの目の前には、魔物に立ち向かう傷だらけのミナリアの姿。
傷の一つひとつは大したものではない。
しかし、避けきれなかった風の刃や、殺しきれなかった攻撃の余波が、ミナリアの肌に傷を作っている。
学生の身を超越した動きであることは確かだ。
故に誰もその邪魔をせぬように気遣って、戦闘には参加していない。
無数の得物を次々と手に取り、ミナリアは魔素を巧みに操っていた。
しかし、その動作の一つひとつに対してミナリアの苛立ちを感じて、ユイセルは焦燥に駆られていた。
ミナリアの言った責任という言葉がのしかかる。
その身が国のために王のためにあると言ったミナリア。
故にこの鍵は、ミナリアの身を案じて使うことは許されない。
目の前で傷ついている大好きな人を、助ける力もなく。
ミナリアの本来の力を存分に発揮させることも出来ない。
無力感に打ちひしがれて、ただその戦闘の終わりを待つ。
首からぶら下げた鍵を握りしめて、ユイセルはミナリアの無事を祈るしかなかった。
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