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私のスローな毎日
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「ミーア、おはようさん。今日は、パンかい?それとも野菜かい?」
「ヤナ、おはよう。今日も暑くなるねぇ。今日は野菜。7種類入りで銀貨1枚。何がどれだけ入ってるかはお楽しみ」
「あたしに2つおくれ。あんたんとこの野菜は坊主もよく食べるから助かってるよ」
ひとり島に来てから半年。ご近所さんにも挨拶して、船で商売するのも板についてきた。私が売ってるのは、余剰野菜の詰め合わせとロールパンや菓子パンの詰め合わせ、それに私がデザインした服や小物。それらにはこっそりと汚れにくいおまじないや匂いのつきにくいおまじないや少しだけ細く見えるおまじないなどを込めてある。どれも好評。
「おはよう、ミーア。今日は野菜の日か。1つちょうだいよ。どうして家のとこんなにも違うんだろう。家のはヒョロヒョロでとても売れないね」
「あんたん家もかい?うちもだよ。ミーアの野菜の半分でも大きくなってくれると家計も助かるんだけどね。ハハハ」
最近、意外とこの手の話を聞くようになった。私を島の島民が受け入れてくれた証のようでうれしい。私の野菜を買ってくれるのは、ご近所さんたちばかり。遠くの島まで売りに行く前になくなってしまう。有り難いことだ。
「ヤナたちは、もう島も長いの?」
「そうだね。あたしの祖父さんの祖父さん代から住んでるさね」
「あたしんとこも似たもんだよ。ここらは親の親のさらに親の代からってのが多いんじゃないか」
先祖代々か。のんびりしていいところだしね。
「明後日はパンかい?」
「うん。食パン、ロールパン、クリームパン、ジャムパン、ミルクパンの詰め合わせ予定」
「美味しそうだ。またよろしくねぇ」
ヤナたちと別れたあとも別のご近所さんが次々と来ては買ってくれる。1時間ほどで、50個あった詰め合わせが完売した。土魔法に適性があって、植物の心なんてスキルを持つ私からしたら、野菜作りは、ボロ儲けの職業だったりする。土の状態と野菜の成長具合が手に取るように分かるから、それに合わせて肥料や水の調整をしてあげればいい。オーガニックが当たり前で、遺伝子組み換えなんてないこの世界だから安心して商売できる。
「ヘルバーに質問があるんだけど」
「僕で分かることなら」
「うん。この島の土壌について。ヤナのところは野菜が育ちにくいって聞いてね。ヘルバーのひとり島はそうでもないでしょ?カイゼスのひとり島もよく育つし」
「それはね、僕たちも困ってるんだ。育つ島と育たない島があって。同じ島でも育ち方に違いがあるし」
「そうなんだ。何でだろうね?1度、育ちにくい島を見てみたい。改善できるにこしたことはないでしょ?」
「ミーアは土壌の違いが分かるんだっけ」
「うん。土魔法とスキルでね」
「土魔法というより、スキルのお蔭かな。理由が分かれば、対策もとれるし。ミーアに依頼って形で協力してもらおうか」
「俺も一緒に行く」
そういえば、ここはカイゼスのひとり島だった。たまたま遊びに来ていたヘルバーを捕まえて聞いていたのだ。別にカイゼスは来なくてもいいんだけど?
「仕方ないね。邪魔はしないでよ?」
ヘルバーのその一言で、私は、ヘルバーの案内の元カイゼスと一緒に野菜の育ちにくい島を巡り始めた。そして、分かったことは、野菜の育ちやすい島は、水遣りを魔石や水魔法で行っていた。雨水を溜めていたところは、土の魔力が枯渇して野菜を育てるどころではないということ。
「そう言えば、私も雨水を使ってるんだけど、肥料に屑魔石を砕いたものを混ぜてたわ」
「僕は水魔法の水だね」
「俺んとこは、魔石に陣を組んで時間になると自動で撒いてる」
「そういうことか。長年の疑問と問題が解決したよ。ありがとう、ミーア」
「これで、どの島もある程度自給自足出来るようになるね」
ヘルバーは早速この結果を持って、屑魔石を肥料に混ぜることを始めた。私はそのアイディアを商業ギルドに登録して、チマチマと小銭を稼いでいる。半年もするとどの島も豊作とまではいかなくても、ひょろひょろの野菜しか育たないということはなくなった。それでも、私の野菜は人気で、いつも完売御礼の小金持ちである。ありがたや。
「ミーアのお蔭で家の畑でも普通に野菜が育つようになったよ。ありがとうね」
「まさか、土の魔力が足りないなんて考えたこともなかったねぇ。でも、確かに祖父さんの代は水属性を持ってた祖母さんが魔法で水を撒いてた。その時は、野菜もよく育ってた記憶があるよ」
「うちもだ。旦那の祖父さんが水を撒いてた記憶があるよ。そんときは小さかったから、そんなこと考えもしなかったさね」
わいわいと畑談義に花が咲いた。この島の人たちはあまり外に嫁に行かない。だいたい島の幼馴染みと結婚するから、ご近所さんが親戚なことが多いのだ。
「そうそう。これ、ミーアに」
ヤナが私に手渡してきたのは、チケットだった。それも2枚ある。
「あたしらからのお礼だよ」
「え~。貰えないよ。だいたい私、何もしてない。畑だって、肥料を撒いてお世話してるのはヤナたちでしょ?」
「まあまあ。ミーアのお蔭で今まで以上に畑仕事が楽しくなったんだ。みんなの気持ちだ。貰っておくれよ」
私は困惑しながらも、みんなの心遣いを無碍にも出来ず、チケットを貰った。
「で、誰と行くんだい?」
「そんなの決まってるよ。聞かなくても分かるでしょ!」
「そうだよねぇ。あたしとしたことが。つい、ね」
チケットは2枚。場所は隣町の劇場。みんなの期待は分かる。誰かそういういい人と行けってことだ。えっと?みんな、誰を想定してるんだろうか?私にそう言う意味で親しい相手は、残念ながらいない。ヘルバーあたりを誘う?というか、ヘルバーくらいしか思いあたらない。う~ん。どうしたものか。どっちにしろ、みんなの期待には応えられそうにない。私は、曖昧に微笑んでその場をやり過ごした。
「ヤナ、おはよう。今日も暑くなるねぇ。今日は野菜。7種類入りで銀貨1枚。何がどれだけ入ってるかはお楽しみ」
「あたしに2つおくれ。あんたんとこの野菜は坊主もよく食べるから助かってるよ」
ひとり島に来てから半年。ご近所さんにも挨拶して、船で商売するのも板についてきた。私が売ってるのは、余剰野菜の詰め合わせとロールパンや菓子パンの詰め合わせ、それに私がデザインした服や小物。それらにはこっそりと汚れにくいおまじないや匂いのつきにくいおまじないや少しだけ細く見えるおまじないなどを込めてある。どれも好評。
「おはよう、ミーア。今日は野菜の日か。1つちょうだいよ。どうして家のとこんなにも違うんだろう。家のはヒョロヒョロでとても売れないね」
「あんたん家もかい?うちもだよ。ミーアの野菜の半分でも大きくなってくれると家計も助かるんだけどね。ハハハ」
最近、意外とこの手の話を聞くようになった。私を島の島民が受け入れてくれた証のようでうれしい。私の野菜を買ってくれるのは、ご近所さんたちばかり。遠くの島まで売りに行く前になくなってしまう。有り難いことだ。
「ヤナたちは、もう島も長いの?」
「そうだね。あたしの祖父さんの祖父さん代から住んでるさね」
「あたしんとこも似たもんだよ。ここらは親の親のさらに親の代からってのが多いんじゃないか」
先祖代々か。のんびりしていいところだしね。
「明後日はパンかい?」
「うん。食パン、ロールパン、クリームパン、ジャムパン、ミルクパンの詰め合わせ予定」
「美味しそうだ。またよろしくねぇ」
ヤナたちと別れたあとも別のご近所さんが次々と来ては買ってくれる。1時間ほどで、50個あった詰め合わせが完売した。土魔法に適性があって、植物の心なんてスキルを持つ私からしたら、野菜作りは、ボロ儲けの職業だったりする。土の状態と野菜の成長具合が手に取るように分かるから、それに合わせて肥料や水の調整をしてあげればいい。オーガニックが当たり前で、遺伝子組み換えなんてないこの世界だから安心して商売できる。
「ヘルバーに質問があるんだけど」
「僕で分かることなら」
「うん。この島の土壌について。ヤナのところは野菜が育ちにくいって聞いてね。ヘルバーのひとり島はそうでもないでしょ?カイゼスのひとり島もよく育つし」
「それはね、僕たちも困ってるんだ。育つ島と育たない島があって。同じ島でも育ち方に違いがあるし」
「そうなんだ。何でだろうね?1度、育ちにくい島を見てみたい。改善できるにこしたことはないでしょ?」
「ミーアは土壌の違いが分かるんだっけ」
「うん。土魔法とスキルでね」
「土魔法というより、スキルのお蔭かな。理由が分かれば、対策もとれるし。ミーアに依頼って形で協力してもらおうか」
「俺も一緒に行く」
そういえば、ここはカイゼスのひとり島だった。たまたま遊びに来ていたヘルバーを捕まえて聞いていたのだ。別にカイゼスは来なくてもいいんだけど?
「仕方ないね。邪魔はしないでよ?」
ヘルバーのその一言で、私は、ヘルバーの案内の元カイゼスと一緒に野菜の育ちにくい島を巡り始めた。そして、分かったことは、野菜の育ちやすい島は、水遣りを魔石や水魔法で行っていた。雨水を溜めていたところは、土の魔力が枯渇して野菜を育てるどころではないということ。
「そう言えば、私も雨水を使ってるんだけど、肥料に屑魔石を砕いたものを混ぜてたわ」
「僕は水魔法の水だね」
「俺んとこは、魔石に陣を組んで時間になると自動で撒いてる」
「そういうことか。長年の疑問と問題が解決したよ。ありがとう、ミーア」
「これで、どの島もある程度自給自足出来るようになるね」
ヘルバーは早速この結果を持って、屑魔石を肥料に混ぜることを始めた。私はそのアイディアを商業ギルドに登録して、チマチマと小銭を稼いでいる。半年もするとどの島も豊作とまではいかなくても、ひょろひょろの野菜しか育たないということはなくなった。それでも、私の野菜は人気で、いつも完売御礼の小金持ちである。ありがたや。
「ミーアのお蔭で家の畑でも普通に野菜が育つようになったよ。ありがとうね」
「まさか、土の魔力が足りないなんて考えたこともなかったねぇ。でも、確かに祖父さんの代は水属性を持ってた祖母さんが魔法で水を撒いてた。その時は、野菜もよく育ってた記憶があるよ」
「うちもだ。旦那の祖父さんが水を撒いてた記憶があるよ。そんときは小さかったから、そんなこと考えもしなかったさね」
わいわいと畑談義に花が咲いた。この島の人たちはあまり外に嫁に行かない。だいたい島の幼馴染みと結婚するから、ご近所さんが親戚なことが多いのだ。
「そうそう。これ、ミーアに」
ヤナが私に手渡してきたのは、チケットだった。それも2枚ある。
「あたしらからのお礼だよ」
「え~。貰えないよ。だいたい私、何もしてない。畑だって、肥料を撒いてお世話してるのはヤナたちでしょ?」
「まあまあ。ミーアのお蔭で今まで以上に畑仕事が楽しくなったんだ。みんなの気持ちだ。貰っておくれよ」
私は困惑しながらも、みんなの心遣いを無碍にも出来ず、チケットを貰った。
「で、誰と行くんだい?」
「そんなの決まってるよ。聞かなくても分かるでしょ!」
「そうだよねぇ。あたしとしたことが。つい、ね」
チケットは2枚。場所は隣町の劇場。みんなの期待は分かる。誰かそういういい人と行けってことだ。えっと?みんな、誰を想定してるんだろうか?私にそう言う意味で親しい相手は、残念ながらいない。ヘルバーあたりを誘う?というか、ヘルバーくらいしか思いあたらない。う~ん。どうしたものか。どっちにしろ、みんなの期待には応えられそうにない。私は、曖昧に微笑んでその場をやり過ごした。
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