巻き込まれ召喚になった私はまったりのんびりスローライフを目指します!

紅子

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祠の真実

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何故だ?何故、このようなことになってしまったのだ?!

事の起こりは、我らが召喚した聖女が、祠を廻り終えた時から・・・・いや、我らが・・・聖女を召喚したことから始まっていたのだろう。精霊王様方から唆されたのだと気付いたときには既に手遅れだった。






「トルティノは何処へ行ったのだ?!」

「聖女様も見当たりません!」

「他にも、クーイル様、ベネトス様、オスカー様ら3人も行方不明です!」

ある日、忽然と姿を消した5人。その後、各国の王子とその側近が次々と行方知れずになっていることが秘密裏に伝えられた。その全てが、聖女と一緒に祠を巡った者たちなのだから、聖女の召喚と無関係とは誰も思えないだろう。



「何故このようなことに・・・・」

国内に祠を祀る国の関係者が、我が国に極秘裏に集まった。中には優秀な王太子を失った国もある。我が国も第2王子とはいえ、将来、王太子である兄を支えるに相応しい能力を持つトルティノを失った穴は大きい。

「息子たちは何処に行ったんだ?」

「どうにか連れ戻せぬのか」

「聖女など召喚せずに、決まり通り龍の国に頼めばよかったのだ」

「今更、そのようなことを言っても始まらんだろうが!」

「精霊王様方は、我々の聖女召喚に力添えをしてくれるとは言ったが、祠を巡ることには触れていなかった。もっと早くそれに気付いていれば・・・・」

何を言っても後の祭りだ。

「そうだ!龍の国の皇帝陛下にお願いしてみてはどうか」

「何と言って?我々が独自に呼び出した聖女と祠を巡った者たちが行方不明だと?そう言うのか?」

「それは・・・・。だが!本当のことを告げて、助力を請うしかなかろう」

本来なら、祠を巡るのは、龍の国の皇帝陛下とその番様なのだ。何をするのかなど知るよしもないが、各国の言い伝えによれば、ただ祠で祈りを捧げているだけだと。それくらいならば、我らにも出来る。龍の国に頼って莫大な謝礼金を払うより、精霊王様方が聖女召喚に力添えくださるなら、自分たちの召喚した聖女様に祠を巡ってもらおうと画策したのが間違いだった。何故、精霊王様方は我々の聖女召喚に力添えくださったのか?

「やはり、ことの次第を龍の国の皇帝陛下に伝えてご助力願うべきだ。精霊王様方が関わっているのであれば、我々人族ではどうにもならん」

「その通りだな」

溜め息と共に自分たちが犯した罪の深さを実感した。そして、後日、龍の国に連絡を取り、皇帝陛下に来ていただいたのだが、ここでも我ら人族の愚かな蛮行が明らかとなった。

「我ら亜人に魔法を封じる首輪を付けて、奴隷としている者たちがいる。それもお主ら貴族の中にな」

「そのようなこと致す者などおりません」

「何かの間違いでは?」

「ほお。この私を奴隷として扱った貴族がおったのになぁ。兄上の番様の不思議な呪文のお蔭で助かったが、知らぬと申すのか」

「なっ!」

誰も何も言えない。他の誰かならともかく、皇帝陛下本人が奴隷として扱われたというなら、それを否定はできない。

「私がまだ皇帝として立つ前の話だからなぁ。ちょうどその方らが勝手に聖女を召喚した年だったか」

我らが独自に聖女を召喚したことを知られていたことに、ぶわりと冷や汗が流れてくる。幼くても龍の国の皇帝陛下だ。向けられる威圧で正気を保つのが精一杯だ。

「陛下。魔力を収めてください」

「ああ。済まないな。当時の辛さが滲み出てしまったようだ」

「あの時の貴族とそれに加担した者たちの処分は済んでいますよ」

「そうだったな。だが、他にもおるのではないか?」

幼いながらに鋭く刺すような視線を投げかけられる。どこの馬鹿な貴族が亜人を奴隷扱いしているのか。亜人の恐ろしさを知らぬのか!

「そのような不逞の輩はそうはおりません!こちらでも各国に協力を仰ぎ、全力で潰しますので、この度の件、どうぞお許しください」

阿呆な奴らのせいで、私たちが頭を下げねばならないとは。これでは、息子たちの行方を捜す協力など取り付けられぬではないか!

「まあ、よかろう。それで、わざわざ皇帝である私を呼び出した用件を聞こうか」

「あっと、それは、ですね・・・・」

針の筵と言っていいだろう。どうやって切り出せば、穏便に機嫌を損ねることなく協力してもらえるのか。頭を付き合わせて散々考え抜いた計画が馬鹿どものせいでもろくも崩れ去った今、言葉が出てこない。

「まあ。祠の件だろう?フン!あの祠の意味すら知らぬ人族のやりそうなことよな」

我々を馬鹿にするような言葉だが、甘んじて受けるしかない。祠に祈りを捧げることしか知らないのだから。

「そこまで知っておいででしたら、どうか我らに力を貸してはもらえませぬか」

将来有望な25人もの若者が消えてしまったのだ。どこに居るのかだけでも知ることは出来ないだろうか?

「その件は、前皇帝陛下である兄上より、言伝を預かっておる」



『人族では既に伝承すら喪っているようだが、あの祠は精霊たちの住まう領域とこの世界を結ぶ起点だ。精霊たちはあの祠からやって来て、あの祠から自らの世界に帰っていく。

そして、精霊たちも精霊王たちも自らの世界を豊かにするために魔力の高いこの世界の者を我ら亜人も含めて常に欲しているのだ。あの祠に入れるのは精霊と精霊王、それに精霊王よりも上位である我ら龍族のみ。それ以外の者が祠に入れば、精霊や精霊王に魅入られ出ることは叶わなくなる。

龍族とその番があの祠を巡るのは、この世界の、いや、この大陸の者が攫われないよう、女神様との盟約により、精霊たちの国に魔力を与えるためだ。この世界から精霊を排除することは出来ない。精霊たちが居なくなれば、あっという間にこの大陸・・・・は滅びるだろう。

今回、お前たちの召喚した聖女と同行者が祠に入れたのは、それぞれの精霊王に招かれたからだ。あの聖女の真の称号は《簒奪の聖女》。精霊王たちが私の番召喚に合わせて、召喚した偽りの聖女だ。精霊王たちは、魔力欲しさにお前たちを唆したんだよ。だが、それが精霊というものだ。この世界を豊にもするが、悪戯好きで己の欲望に忠実だ。

さて、どうやらこの大陸の者たちは、我ら龍族の助力を必要としていないらしい。そこで、女神様との盟約を解消することになった』

「そんな!」

「私は聞いておらぬぞ!兄上!」

『新たな契約として、人族のことは人族で。女神様は、精霊王たちが魔力を望む200年毎に各国より魔力量に応じた数人を精霊の住む世界に連れて行くことを許可された。誰を連れて行くかは精霊王たちに委ねるそうだ。

ところで、先日訪れた精霊の国でお前たちの同族は、楽しそうにしていたぞ?誰も帰りたいとは言わなかったな。脳内までお花畑と化す、精霊の国とはそういう所だ。

最後に、この大陸にいる亜人は、女神様のお力により全て亜人の大陸に連れ戻してもらった。2度と我らがこの大陸に足を踏み入れることはないだろう。これからこの大陸に産まれる亜人はいない。よかったな?』

何ということだ。我々は無知すぎたのだ。王家に口伝で伝わる伝承は確かにある。長い歴史の中で失伝し、残った伝承は改変されていて信憑性が低いと蔑ろにされている。だが、平民にも伝えられている伝承があるではないか。悪いことをしたら、祠に放り込んで精霊に連れて行ってもらうよ、と。

後悔するにはもう何もかも遅すぎたのだ。精霊王様方に翻弄され、いいように使われた。前皇帝陛下は、それを知った上で黙認した。私たちは取り返しのつかないことをしてしまったのだ。それが全てだ。
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