妹しか見ない家族と全てを諦めた私 ~全てを捨てようとした私が神族の半身だった~

夜野ヒカリ

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4章 始まりの乙女

1 . 4章プロローグ


 4章に突入しました!
 今回は少し短めですm(。_。)m

~~~~~~~~~~



(黒邪(?)視点)


 余は敗れたのか……

 闇の世界を生きてきた余には眩しすぎる、白昼のように明るい空間。存在自体が光の中に掻き消されてしまいそうだというのに、動くことも叶わない。

「……」

 あそこで神が出てくるとは思わなかった。

 この地を捨て去った存在が再びその捨てた地に訪れるなど、誰が思おうか?
 己達が引き起こした多くの悲劇を黙認し、救済を与えようともしなかった奴等が今さら何をしに来たという話ではないか。
 
 神子を救うため?
 だとするならば何故あの時・・・は、現れなかった。

 人の理を外れた力など、人の世においては過ぎたるもの。
 乾いた地で飢えと病に苦しむ人々の元にその羽ばたきで恵みをもたらし、その鱗粉で病を癒すという蝶を一匹だけ放ったらどうなる?
 救いを求めた人は蝶を我が物にせんと群がり、奪い合うだろう。その果てに蝶はどうなるかなど目に見えているではないか。

 羽を千切り取られ、欲にまみれた人間共によって使い潰されることであろう。だというのに、与えられているのは人知を外れた力のみ。

 力のみを与え、身を護る術も守護も与えないというのは、苦境に陥れているのとなんら変わらない。

 そして、力を与えた当人達は蝶が苦境にもがき苦しむ様を傍観するだけであった。……今までは。
 

「何故に、今さらになって余の邪魔をした……」
 

 ……いや、神が出てこなくとも、あの時の余にできることなどなかったか。

 神族─天代宮が人間と手を組むという可能性を考えもしていなかったのだ。

 考えが足りなかったとしか言いようがない。
 今までの天代宮であったならば、守護対象に過ぎない人間と手を組むなどということは考えもしなかったであろうに、今代の天代宮は今までの天代宮とは違ってしまったのだ。
 “半身の獲得”という神族にとってあまりに大きな変革により、奴の考え方が変えられていたのだ。
 まったく、『神子が神族の半身でなかったら』と思わずにはいられない。

 ……いや、そもそも奴の半身が神子でなかったならば余の存在が奴等に露見することもなかったのか。

「……神子でかつ神族、それも天代宮の半身とはなんという運命の悪戯か」

 さらには血筋自体も余の天敵になりえるのだった。
 半身というのは偶然だったにしても出来すぎた存在だ。


「──……」
 

 余……いや、俺は今度こそ滅ぶのか。

 まだ滅ぶわけにはいかない。
 まだ復讐も終わっていない。
 俺が滅んだら、また悲劇が生まれてしまう。
 復讐をしなければ、奴等が自らの愚行に気が付くことはない。

 しかし、こうなった俺に何が出来る?

 復讐をせんとしていた対象によって封じられ、動くことすら出来ない……そんな俺に何が出来ようか。

 純粋な妖でない俺だ。神族が施した封印術ならば突破することが出来たであろうに、今俺を縛っている術には人間の陣と神の陣が加えられている。

 神が何故、俺を消さずに封じるよう仕向けたのかは分からないが、運命は変わるまい。俺の運命は終焉へと動き出したのだ。

「──……叶うならばもう一度、お前・・に会いたかった」

 今日はいつになくお前のことを思い出す。
 今代の神子の元へ飛んだとき、懐かしい気配を感じたためであろうか?
 すぐに再び飛ばされてしまったため、定かではないが……

 ……普通、人の魂は廻り続けると聞く。
 お前の魂も転じてあの近くにいたのかもしれないな。

 お前は──……あぁ、そうか。

 ……千年を越える時を経て、俺はお前・・の声も顔も思い出せなくなってしまっていたのだな……
 その事に今やっと気が付いた。

 とうの昔に失ってしまった俺の名を呼んでいた小鳥のような声も、愛おしいと思っていた笑顔も……遠い過去にあった出来事としてしか残っていない。お前が笑顔で俺の名を呼んでいたという記憶はあるのに、その記憶を映像として思い起こすことができない。
 かつて己の活力としていた思い出も色を失い、ぼやけた姿に成り果ててしまっている。

 ……いつから、俺はお前を失ってしまっていた?

「はっ、これでは俺が何のために存在し続け、復讐を成さんとしていたのか分からぬではないか……」

 俺は何のために復讐をしようと思っていたのだ。
 お前のためと言いながら、お前という存在を見失っていたなど話にならない。

 ……もう存在し続けることも出来ないであろう我が身。

 ──初華いちか……お前は今の生で何を見て何をしているのだろうな……今はただ、お前の今の生に苦難がないことを願おう……──








 










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