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第弐章:ムロトー/ナイトフィーバー/レリGO

#086:激似な(あるいは、我が流法は、ダメ)

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「6組決勝、第二試合ぃぃぃぃ、やぁっちゅうねんっ!!」

 デジャブ感を残しながら、いよいよマルオVSアオナギの対局が始まる。相変わらずおどおどと後ろのお仲間を振り返ったり、周りをきょろきょろ見回したりと落ち着かない汗だくのマルオだが、この精神状態が「平常」であるのならば、いかなる攻撃もその平常を揺さぶることは出来ないだろう。いや、受け止め包み込んでしまうといった感じか。

 「超防御型」……アオナギが先ほど言っていたその表現が何となく僕にもわかってきた。でもわかったからと言ってどうする? 手の内を晒されたところで、打つ手なしでは埒が明かないのでは。

「あ、アオナギ……さん。策は……策はあるんでしょうか?」

 不安に感じ、思わずその背中に聞いてしまう僕。蒼いメイド服に身を包んだ隈取りの怪人は、対局シートにあぐらを掻いた姿勢で横目で僕を振り返ってくる。

「……ヤツがあらゆるDEPに対応……対話してくるっつーんなら!! こっちも対話姿勢で臨むまでよ。別アプローチ……揺さぶるっていうのは、何も驚かせたり、恐怖を与えたりするだけじゃねえ。魂を……根源から揺さぶる。それこそが我が流法……」

 言いつつ何やら奇妙な呼吸を始めるアオナギだが、いや大丈夫か? 魂を根源からって、そんなことが可能なのだろうか。僕は見守るしかないのだけれど。

「それではー? 用意はー? いいのかなー? ……んんんんんっ、とわいきょく、くわいしぃっ!!」

 妙にしゃくれた顔でそう告げたダイバルちゃんの掛け声に合わせ、ゴング音が鳴らされる。は、始まった……!!

「こっ、こここここんにちはっ!!」

 おっと、今度はマルオから来た!! 予想外。ただの挨拶ってとこも予想外だけど。

「おう。どうよ少年、調子はよぉ」

 対するアオナギも普通の返し!! 時たま見せる自然体な感じで、普通に会話に持っていこうとしている。これが……これが策なのか?

「あ、はあ、結構調子はいいです。ここまで勝ち残って来れましたしね」

 いや普通だな!! 固唾を飲んで対局の行方を見守っている僕&観客のみなさんだけど、この塩対局をどう思っているのか不安だ。だ、大丈夫? これで。

「……だな。大したもんだ。お前さんには素質を感じるぜぇ」

 ええーと、僕にも似たようなこと言ってなかったっけぇ? 超初期に。この場で勧誘とか始め出すんじゃないだろうな。気絶した丸男の代わりにマルオをコンバートと。それは流石に人でなし過ぎるぅぅぅぅ。

「いや素質なんて。僕は何をやってもダメなだけで。でもここでならそれが武器になったんです。そして輝くことが出来たんです……!!」

 マルオのこっぴどく湾曲したレンズの奥から、キラキラした目が覗いた。そうか、僕と似ているんだ、この人も。

 ……そしてみんなにも似ている。ダメに救われたという、カワミナミさんや、ハルナカアノ、アオナギや丸男、他の対局者たちにも。みんな……みんなそうなんだ。その瞬間、僕はこの豆巻マルオという人をひどく身近に感じていた。いや、この球場にいる全体が、わけわからないほどの一体感に包まれたような、そんな感覚が沸いたのだけれど。

 対局は続く。

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