摩訶☗大大大☖異世界 ダイ×ショウ×ギ=レインジャー

gaction9969

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☖3四大将(あるいは、綺羅めくは/棋理滅裂なる/燦然路ジック)

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【対局開始】

 ここ大一番だろうこの最大級対局も、割とすっと始まった。轟、と時ならぬ鬨の声が手前と奥面、双方でうぉんうぉんと巻くように響き渡る。思ってた通りの彼我共にの大渋滞なので九十六かける二のそこそこ大軍勢がほぐれるまでにはあと数十手はかかりそう。

 ……とか思ってくれてるのなら。

「イデガー、お願い」
「いよぉ~、了解ぃぃ~」

 ここ数日で、十年来の付き合いが如くに、もはや阿吽以上の呼吸の合い方になってきたあたしの相方たちとの。

「……ッ!!」

 「鬼手」を軽視しないでいて欲しいわけなのよねぇぇ……達観以上の全能感。それは図らずもあの猫神さま譲りと、今や言えるのかも知れないけれど。「香車」の推進力を「与えて」もらう……そのこと自体が「将棋」としては既に荒唐無稽なんだけれど、まあ今更だよね。そしてやってみたら出来た。であればそれはもう「ここ」における「自然法則」と言い切ってしまっても良い、くらいのことであることを。

「……10八白駒、からの16八白駒」

 理解して、把握しておく。それがこの「対局」と向き合うことにおいて大事だということが分かってきていた。遥か上空に「打ち上げられた」白駒あたしは、上昇が収まった中空の一点で姿勢を一転させると、自陣の前線渋滞を軽々と飛び越えて、いきなり敵陣の最前線に自分の利きが通っていることを確認する。そのまま盤面中央に正に「天元まで突破」したあたしは、そこにいた相手方の「歩」を蹴散らすついでに華麗に方向転換をかまして殺到してくる烏合の群れたちから瞬時に間合いを取っている。跳ねたその頂点で距離を稼ぐためにくるりと前転したりしながら。

 三次元的な指し手。相当に規格外だけれど、それは「禁じ手」では無かった。まあ想定外過ぎて「縛る」という感覚も無かっただろうから、それは「法則」の隙を突くというよりは、遥か高みへと超越するというかって感じかな。そして、

「体が真っ二つ」は確かに怖ろしいけれど、それにすくんで縮こまるってのは最大の悪手だ。リスクは承知。その上で動く。そして常に動いていかなきゃあダメ。普通の将棋にだって、

「16四歩、16三歩、16二歩」

 「一手パス」なんてものは存在しないし、ってね。「現実」だって多分そうだ。そうだったんだ。たかだか四つや五つ負けが込んだからって。それだけで将棋は、人生は終わらない。変わり続けている自分の周りの世界に呑み込まれながら、ただただ流されるままうつろっているだけじゃ、きっとそれは誰かの養分。喰らうんだリスクを。歯が立たないくらいに硬そうに見えても、少しかじってみたらとんでもない苦みとかを与えてきたとしても。

 咀嚼しててめえの内のうちまで呑み込む。とんでもない毒まんじゅうを供されたとしても、それすらを養分にしていって、耐性を得ていって。生き残ればそれは勝ちなんじゃないの? なんて、独りよがりの考えかも。でも、もみくちゃひしめく盤面の、ほんの少し上空うえにはこんなにも清浄な風が吹き流れているよ?

 そしてあたしが今度は「与える」番だ。右手に「入駒エントラ」させていた「歩三兵」……を一度大きく後ろに振りかぶってから連続で撃ちだしていく。「白駒」の推進力を付与させながら。そして……禁じ手も禁じ手すぎて意識の外も外だろう、「相手駒がいるマス」向けて、歩兵三連弾を叩きつけるように上から高高度にて振り下ろし、蹴散らしていく。

「何なのコイツッ!? こんな『法則』あったっけ!?」
「いやねぇだろッ!! え、もしかして『法則』創れるのってウチだけじゃない?」

 相手方、サダネとワカリが驚愕の声を上げるのを、そしてそれらが非常に的確に説明的に紡ぎ出されていくのも、そしてそれすら精密に聞き分けられているのを自覚して、盤上にふわり降り立ったあたしはでもまだ足りないと思うから、それ以上、もっと盤面の隅々にまで意識を張り巡らせられるように集中していく。

「……」

 右腕を勢いよく横に払いながら、指で「一」、そして手首を返しつつ「三」と示す。それだけであたしの後方でひしめく軍勢たちの展開するベクトルは変化していき。

「!!」

 一糸乱れぬ一気呵成さで、戦線を一気に左右全土に広げ、そのまま包む込むように寄せていく。このブロックサインまがいの合図はジェスが考案してくれた。自分が行動するには「指し手」の詠唱が基本必要、だから仲間たちへの指示はそれとは別の方法で出す。それも各々がどう動くかを事細やかに定めておいた通りに。それによってロスなく全軍で動くことが出来るから。狙い通り、整然と、歩一兵漏らさぬ、硬いながらもしなやかさも持ちえた変幻自在の戦線を展開し、盤面の優位性を築き上げていく。

 でもそれだけで終わるわけない。あくまでこれは前段階。「五人」の配置は既に頭に入っているし、その動きもある程度は予測できるくらいには、相手の自由に動ける場所を束縛もしてある。だから、

「……ッ!!」

 ここからはあたしの手番だ。右手を軽く握り込んで、意識をそこに纏いつかせるように。金色の光と共に溢れ出てきた体温よりもずっと熱い奔流を右耳の産毛あたりで感じている。「五人」のうちのひとり、向かって左方向にいるサダネに視線を滑らせる。びくつきながらもそれを上書きするかのような相手の怒りの波動すらも感じ取れるようになったあたしは、盤上に感覚器が直結したかのような心持ちだ。

 間六間あいだろっけん。まだまだ距離はあるサダネとあたしとの間には歩と銀が立ちはだかってもいるけれど。それで「必死がかってない」って決めつけちゃうのは早計、そして緩手だよ。からの……

「なん……ッ!?」

 悪手かもね。あたしは体を張って突進してくる歩に「神撃」をぶちかまして斜め右後方へと吹っ飛ばさせながら、同じく迫ってきていた銀へと当てて双方を自分の持ち駒へと変えることに成功している。「二枚抜き」、なんて、自在感が全身を痺れに似た感覚で包んでいくけど、それを味わっている暇なんてもちろん無く、そのまま一息吸った空気を等価交換するように矢継ぎ早に「召喚」の「詠唱」へと変えていく。「13五歩」に「12四銀」。先の先まで見通していれば。見切りを入れていれば。

 相手に何もさせずに封殺することだって可能なんだから。

 サダネに同時に向かっていく歩と銀。一直線の攻めだけど、二方向から同時っていうのはなかなか慣れないよね。何とか振り払って一歩下がって体勢を立て直したようだけれど、その何秒かが欲しかった。

 意識の開放感に、身を委ねる。それによって、「再充填」の時間は飛躍的に短縮される。何なら本当に秒で「連発」出来るくらいに。そんなことが? って自分でもそう思ったんだけれど、実際そうなんだ。

 真実とか、重要なこととか、全部が全部、盤面に供されているわけでは無くて。時には盤駒をひっくり返してでも、そこに潜む何かを感じ取らなくてはならないわけで。

 それが世界の「法則」? 「摂理」? 分からないけど。分からないことは分かろうとすることが、何でも試そうとすることが大事。それはこの世界に来てから何度も思い知らされたことだけれど、案外どんな「世界」にだって当てはまることなんじゃないかって、思い始めてもいる。

 その場のマス目であたしはくるりとローブをはためかせながら旋回をかまして。真後ろへと、敵陣の真っ只中へと、バク宙をキメながらまたも上空から舞い降りたって。

「!!」

 瞬速の裏拳を、その場で硬直してしまっていたサダネの驚愕の顔面向けて撃ち放ち終えている。「五人」の一角が崩れたことで、今の今まで自分たちが「無双」「無敵」と思って気楽に構えていただろう、残り四人の顔つきとか醸す雰囲気が明らかに変わったのを肌で感じている。

 想定外のことなんて、軽く起こる。だから考える。想定の、幅を、範囲を、いつもいつだって一ミリでもいいから広げるように心がけていなくちゃあ、

「……ッ!!」

 そこで止まっちゃうよ。思考も、身体も。あたしは相手らのその反応も想定内に入れていて、そこから展開する場の状況も、既に頭の中でシミュレートは終えているから。

 早急な呼吸を繰り返しながら、盤上を滑るように駆けて行っている。当然のように包囲網を狭めてくれていた仲間たちの援護もありがたく受けながら。必死の局面と判断した。それならば。

「うわあああああああああぁぁぁぁっ!!」

 おなかからの声は、叫びは。気持ちをすっぱりと切り替えてもくれるけど、自分自身に喝を入れてくれるようでもあって。思えば最初に鉄火場に放り込まれて絶体絶命の窮地に立たされた時も、あたしはこんな声を上げていたっけ。その時とは真逆の感情かもだけれど、その時その時で、一手一手で局面はがらりと変貌を遂げていくものだから。だから。

 外界からの情報の奔流と、内面からの思考の奔流に翻弄されながらも。自分の立ち位置は見失わないように、自分の棋譜は刻み付けながらも。

 未知の領域へ、恐れずに踏み出していく。打ち出していく。

 わああぁ凄い超越感。でも、それが凄く心地よくて。

「……」

 思わず笑顔になってしまいながらも、目だけは真っ直ぐに目標を見据えながら、振りかぶった金色の拳を。何かをつかみ取ろうとするかのようにがぱと五指を開きながら、揺蕩う奔流に向けて思い切り突き込んでいくのであって。
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