君に捧げる歌

河野彰

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 教会での拒絶は、ギルバートの魂を粉々に砕いた。 王城へと戻った彼は、誰一人近づけぬ自室で、獣のような慟哭を上げた。あの日、聖堂で分かち合った熱、互いの名を呼び合った震え、命を賭した誓い。それら全てが、エミリオの冷淡な眼差しによって汚らわしいものへと貶められた事実に、彼は耐えられなかった。 
「なぜだ!? エミリオ……俺を愛していると言ったではないか!」 
 拳を床に叩きつけ、血を流しながら泣き崩れる王子の背後に、音もなくジャスパーが忍び寄る。
「おいたわしい。……ですが、王子よ。あの方は貴公を愛しているからこそ、理想を押し付け、今の貴公を否定するのです。それは傲慢な『正義』。あの方を真に貴公のものにするには、その翼を折り、貴公の影の中に繋ぎ止めるしかありません」 
 ジャスパーの理性的な囁きと、鼻を突く禁忌の香煙がギルバートの思考を混濁させる。失意の涙は、いつしかどろりとした執着の熱へと変質した。悲しみは憎悪へ、慈しみは支配欲へと形を変え、ギルバートの瞳に宿る光は完全に淀んだ。
 ギルバートのもとへたどり着いたエミリオを待っていたのは、再会の抱擁ではなく、鉄鎖の冷たさだった。
 「逃がさぬと言ったはずだ。神の元へも、理想の元へもな」
  狂気に歪んだ笑みを浮かべるギルバートは、狼狽えるエミリオを組み伏せ、手荒にその衣を裂いた。かつての慈しみは微塵もなく、ただ恐怖に震える愛する者を蹂躙し、己の所有物であることを刻みつけるだけの暴挙。そのまま、エミリオは光の届かぬ城の地下深く、冷たい石壁の牢へと幽閉された。
 地下牢に立ち込めるのは、鉄錆の臭気と、命を削るような寒気だけだった。  
 ギルバートは、もはや言葉を介することを放棄していた。彼は壁に繋がれたエミリオの髪を鷲掴みにし、その額を冷たい石壁に何度も打ち付けた。視界が赤く染まり、意識が混濁するエミリオの耳元で、彼は獣のような低い声で囁く。 
「お前の神は、この痛みさえ分け合ってはくれまい。お前の血を啜り、肉を食らっているのは、神ではなくこの俺だ」
 ギルバートは、エミリオの痩せ細った指を一本ずつ執拗に締め上げ、その爪が剥がれんばかりの激痛を与えた。神に祈りを捧げるためのその指を、二度と組まれぬよう破壊し尽くす。  
 そして、抵抗する力さえ奪われたエミリオの体を床に転がすと、軍靴を履いた足で、その気高い胸板を無慈悲に踏み抜いた。 
「……ぁ、ぐぅっ……、ギル……バート様……っ」  
 尊厳を象徴する喉仏が、苦しげに上下する。かつて愛を語ったその喉を、ギルバートは自らの指で強く圧迫し、エミリオが酸素を求めて無様に口を喘がせる姿を、悦楽に満ちた瞳で眺めた。
 真の蹂躙は、そこから始まった。  ギルバートは準備も、慰めも、一切の慈悲もなく、エミリオの乾燥しきった内側へ、己の猛り狂う欲望を無理やり突き立てた。 「ぎゃぁあ、あああぁああ゛ああッ!」  
 裂けるような音と共に、エミリオの体は激痛に跳ねた。薬による昂りなど微塵もない。そこにあるのは、生身の肉が引き裂かれ、強引に抉り広げられる、耐え難い暴力の感覚だけだった。  
 ギルバートは、エミリオが痛みに悶え、痙攣する腰をさらに強く掴み、自らの欲望が満足するまで、容赦のない律動を繰り返した。一突きごとに、エミリオの体内には熱い痛みが走り、かつて聖なる供物と誓ったその場所は、ただの排泄と陵辱の穴へと貶められていった。
 「見ろ、エミリオ。お前は今、獣のように俺を求めて喘いでいる。聖者などという皮を剥げば、ただの肉の塊だ」 
 ギルバートは、エミリオの顔を泥の浮いた床に押し付け、その無様な姿を自覚させるように、背後から執拗に突き上げた。  
 エミリオは、床の冷たさと内側の熱い痛みの間で、自らの尊厳が砂のように崩れ落ちていくのを感じた。神への信仰も、人間としての誇りも、ギルバートが与える圧倒的な痛みの前では、何の役にも立たなかった。  
 彼はただ、涙と唾液に塗れ、汚物の中に沈みながら、己を壊し続ける男の重みを全身で受け入れるしかなかった。
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