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  「すまない、リーザロッテと少し話したいんだ」

  駆け寄ったエルバルトがセレスティア達に断りを入れると、リーザロッテを伴って庭園を抜けた先にある四阿に移動した
  薔薇に囲まれた真っ白な四阿のベンチにリーザロッテを座らせると

  「昨夜は、ゆっくり眠れたかな」

  いきなりは切り出せずに他愛もない会話を始める

  「はい。エルバルト殿下の用意してくださったキャンドルのお陰でしょうか、ゆっくりと眠れましたわ」

  「そうか、それなら良かった。うん」

  こんな話しをしたいわけではない、リーザロッテの美しく微笑んだ顔を直視出来ずに不自然に目が泳ぐ
  何かを言いかけて口を開いては閉じる、それを繰り返すエルバルトに、リーザロッテは小首を傾げて見つめる
  中々切り出せずに無言の時間が過ぎる
  風が二人の髪を揺らす、言葉を発しないエルバルトを急かすわけでもなく、静かに待ってくれている、こんな時間ですらも心地よいと感じてしまう

  たっぷり、たっぷりと時間が掛かって漸くエルバルトの口から声が発せられた

  「リーザロッテ、俺は君と話すのがとても楽しい」

  「わたくしもです」

  花が咲いたような笑みを浮かべる

  「あの学園の中庭で、君と話している時間がとても好きだった」

  「わたくしも、あの時間だけが、あの学園で心安らげる時間でしたわ」




「·····リーザロッテ、私と、婚約してほしい」

  リーザロッテの目が驚きで見開かれポカンと口が開いた

  「私は、リーザロッテと共にこの先の未来を、歩みたいと思っている」

  「··········わたくしは、婚約破棄をされた身で·····」

  「あんな婚約破棄は、何の障害にもならない」

  「シストラ王国では、罪人と··········」

  「何の罪を犯した?言い掛かりでしかない」

  「·····わたくしは··········」

  「リーザロッテは、俺と婚約するのは、嫌か?」

  リーザロッテは首を横に振る

  「いいえ、いいえ、決して嫌などと」

  眉が下がり情けなそうな表情で見つめるエルバルトに、さり気ない距離で控えている護衛や従者や侍女達も心の中で声援を送る

  「わたくしは、他国の貴族の娘で、魔法も使えません·····エルバルト殿下は、わたくしなどでよろしいのですか?」

  「他国の貴族の令嬢でも魔法が使えなくても、そんなものはどうでもいい。リーザロッテなどではなく、リーザロッテが、いいんだ」

  リーザロッテの白い手を取って、細い指先に口付けを落とした

  「結婚、しよう。リーザロッテ」

  「はい」

  今度こそ返事を返したリーザロッテをエルバルトが思わず抱き締め、リーザロッテが真っ赤になった

  婚約、すっ飛ばしたけど、まあいいか、と護衛達皆が心の中で歓声を上げた
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