上 下
41 / 46

39 シストラ王国では

しおりを挟む
  王太子リチャードが、リーザロッテに婚約破棄を告げた夜会から、立て続けに毎週のように夜会が開かれていた
  ルルアが煌びやかに着飾り、贅を凝らした夜会を好んで開催したがったからである
  
  当然、王族や貴族達は毎回違う衣装を仕立て、会場である王宮は、豪華に飾り立てられる
  流石に資金難に苦しむ貴族も出てきたが、夜会に参加しないという選択は許されなかった
  
  ルルアの機嫌を損ねるからだ

  王国の全てはルルアのご機嫌を伺い、ルルアのしたい事を中心に進められる
  政治など二の次三の次である
  ルルアは、国民の事など頭にはない、自分が幸せで贅沢して楽しむ事にしか興味がないのだ
  
  乙女ゲームなのである、ヒロインが聖女になり、王太子や気に入った男達を侍らせて、幸せになりました····················の後は、自分の思い通りになった世界で自分だけが幸せに暮らせる、お花畑のような頭でしかない

  その為には、悪役令嬢は不幸にならなければならない、と思っているルルアは、何度もライディン王国にリーザロッテを引き渡すように要求させていた

  悪役令嬢が自分を虐めた罰を受けなければ、不幸のどん底でヒロインが王太子と幸せな姿を見ながら絶望し、処刑されなければいけないのだ

  
  国は物凄いスピードで疲弊していっていた
  下級貴族や、高位でも元々資金が潤沢でない貴族は没落していった
  潤沢な資金を誇る貴族達もどんどん資金が底をついてくる、そこに魔法石の効力が切れるという事態が起こったのだ
  便利な生活に慣れていた者達は、不便な生活を強いられる事に苦労した
  アレに押さえ付けられているが、底の方では不満が渦巻きはじめているのだった

  暑い季節だ、氷の魔石と風の魔石で涼を取る事も出来ずに、汗に塗れベタベタした身体が気持ち悪い、汗を流そうにも水を用意する事も困難なのである

  ルルアが金切り声で叫び不機嫌に周りに当たり散らしている

  「ああああ"っ、やっぱり悪役令嬢が不幸になってないから!!悪役令嬢は不幸にならなきゃいけないのよ!!」

  「ライディン王国が、リーザロッテの引き渡しを拒んでいるんだ。ライディン王国にいるリーザロッテには手出し出来ない」

  リチャードと側近達がルルアを宥める

  「どうしてよ!悪役令嬢が幸せになるなんておかしいのよ!!あいつが不幸にならないから!私がこんな生活しなきゃなんないのよ!!エルバルト様も、私に愛を請わなきゃいけないのに、あいつがいるから上手くいかない!!私は聖女なの!ヒロインなのよ!!」

  ルルアの罵声が響き渡る

  「あっっ!そうだわ。私が行けばいいのよ。私が直接行って、リーザロッテの罪を暴けば、ライディン王国はリーザロッテを見離すはずだわ」

  「そうか、そうだな。聖女であるルルアが話せば、あちらの国の者達も分かるだろう」

  「そうだな、可憐で健気なルルアに会えば、リーザロッテがどんなに悪辣で卑劣な奴か、ライディン王国にも知れ渡るよな」

  ルルアとリチャード、側近達は盛り上がる
  
  国王に話せばすぐに、国王夫妻と宰相、リチャードとルルアと側近達が揃ってライディン王国に行く事に決定した

  そうと決まれば、こんな生活をおくらされたヒロインの私への償いに、悪役令嬢のリーザロッテに拷問でもしてもらってボロボロにしてやるわ、とほくそ笑んだのだった
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

紅蓮の島にて、永久の夢

BL / 連載中 24h.ポイント:255pt お気に入り:75

異世界は流されるままに

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:347pt お気に入り:358

田舎で師匠にボコされ続けた結果、気づいたら世界最強になっていました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:859pt お気に入り:581

離縁するので構いません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:46,188pt お気に入り:529

転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:688pt お気に入り:358

愛してほしかった

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:6,198pt お気に入り:3,716

処理中です...